プロローグ003
「きて……おきて……」
「んん~……もう少し寝させてくれ……」
「もう、ダメだよ。今日は朝から修行でしょう。早くしないとお母さんに怒られちゃうよ」
「ああ!!そうだった!!」
「きゃっ!?」
ドンッ!!
言われ、俺はベットから飛び起き上に乗っかていたユリカがその勢いでベットから墜落してコルクの床に尻餅をつく。
そうして、痛そうに赤いツインテールの8歳の妹。ユリア・ルシランデは立ち上がると、紅い瞳で睨みふて腐れたようにふくれっ面を向けてくる。
「ああ、ごめんごめん」
「ゴメンじゃないわよ。もう。早くしないとまた怒られちゃうよ」
「ああ分かった。それじゃあ仕度するから下で待ってて」
「ええ~。タクミの着替えは妹として私が手伝うの」
「そういうのはいいから」
「ええ~」
「いいからいいから」
そう言って強引に部屋から追い出して、ベットに再び座りと落ち着くと俺は一つため息をついた。
見渡せば、窓から朝日が入る木でできた自然豊かな清潔感感じられる部屋。木の天井に壁、床。タンスやベットなどあらゆる物が木で作られた部屋で、キャンプ場のペンションのような感じさえ感じせる見慣れた風景だ。
「もう8年か……」
そう。あれから。あの転生から8年。
赤ん坊だったころからそれほどの歳月がたち、俺は8歳となった。
体もあの頃とはうって変わってこうして自由に動かせ、今では五体満足で不自由なく山の中で静かな生活を送っている。正直、自称女神様にはある程度の感謝をしている。
ただまあ。
さらに一息つき、ベットから降りた俺は壁に立てかけている姿鏡を見てヤレヤレと肩を降ろす。
鏡に映るのは今の自分。
転生する前の自分とは比べ物にならないぐらいのイケメンで、顔だけでアイドルグループに入れそうなものだが……。
黒の短髪に金眼、ただ問題としては……長い耳。
エルフの耳だ。
どうやら、俺は人間ではなくエルフという種族に転生してしまったらしい。
ただ、それにどうして不満を持っているかなのだが……。
どうもエルフは基本的に筋力は人間に比べて強くないらしい。というより、身体能力的に人間など他の種族と比べて劣り、そもそも俺がなりたかった剣士には生物的にも文化的にも程遠いということだった。
ただ、その代わり魔法適性は十分にありエルフは基本魔法使いになるというのがこの世界の当たり前らしい。
あの自称神。またしてもここでやらかしてくれた。
おかげで今俺は、魔法の修行真っ最中だ。
どうもあの雨の中、赤ん坊の俺を拾った俺を拾ったのは賢者とも呼ばれる偉大な魔法使いで、俺はその子供として育てられ魔法を教えられている。
それと。
先ほど俺を起こしにきた女の子、ユリカは俺と同じくその賢者の同じエルフの拾い子らしいが、今では兄弟として生活を送っている。
世話焼き過ぎるところが少し傷だが、可愛らしい妹には不満はない。
「タクミー!!はやくぅ」
扉の向こう、更にここは二階であるからその下の階だろう。そこから俺を呼ぶ声が聞こえる。
「ああ」
返事を返し、素早く着替えて部屋を出る。
そうして、廊下から階段を下りて一階に。
一階は二階の俺とユリカの部屋に分かれている構造とは異なり吹き抜け。
その吹き抜けた大きな空間にキッチンというなの、まあなんというかファンタジックな中世感のあるレンガ造りの炉や流し台。階段を下りてすぐの場所には長机、そこに野菜や卵焼きなどヘルシーな朝食を並べたユリアが先に座って待っていた。
俺もユリアの対面へと着く。
そうしていただきますの挨拶をして食べ始めた。
「そう言えば、母さんは?」
「先に行ってるって。ご飯作っていっちゃった」
ということは、何かしら事前に用意しているということか……。
こりゃ、今日の魔法の修行はきつめになりそうだ。
「ねえねえ。それより、この間町にいってきたんだよね」
「そうだが?」
「なんか面白いことなかった?」
「なんかとは」
「なんかよ」
そうやって念を押されて言われるも、そんな面白がるようなことなどなかった。
まあ、ずっと人里離れて山の中で町を珍しく思うのもの仕方ないが。
そういう点では賢者として山の中で暮らしている母さんが悪いといえば悪い。
元は世界を魔王から勇者と共に救った魔法使いらしいが、その後からの周りの風当たりが嫌で山に隠れ住んでいるらしい。そのせいもあり俺たちはこうして山育ち。
まれに買い出しなどで田舎町に出かけることもあるが、それも月1っ回ぐらいだ。そしてついこの間俺はついて行って、たまたまその時ユリアは留守番をしていたのだが……。
どうもそれが不満のようだ。
「そういえば、宿屋のカリンさんが牧場のガドウさんと結婚したんだって」
仕方なく適当な話題を出す。
「ホント!?」
「ああ。らしい」
「やっぱりかー、私はそうなるんじゃないかなーって思ってたんだ!!ああ、私もタクミと結婚したい!!」
結婚の意味を分かっているのだろうか?
とはいえ、こんな適当に出してもこの食いつきぷり。
心の底から嬉しそうに微笑む彼女は相当暇だったんだろう。
「ねえ!ほかはほかは?」
「はあ……」
こうなってしまえば止まらない。
山の中で娯楽も少ないため、外の話は新鮮なのか。ここは妹の為に少し軽く話してあげることにして、いくつか話す。
そうして、気づけば僕もその話に夢中になっていて、時間は刻々と過ぎてしまい……。
「時間!!」
「あっ!!」
師匠。もとい母さんとの約束の時間は丁度過ぎていたことに気づき二人して大慌てする。
「早くしないと師匠にぶち殺されるぞ!!」
「分かってるって、おかあさん怒ると怖いんだから!!」
大慌てで朝食の食器をテーブルから流しへ入れて、二人して家を飛び出して山道へと入って行った。
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