リモート

勝利だギューちゃん

第1話


カチカチ


PCの中には、1人の女の子がいる。

2次元ではない。

実在する3次元の女の子だ。


彼女?


違う。

遠くに住んでいる妹だ。


名前は、香里という。


今は、単身上京して、東京で独り暮らしをしている。


コロナのせいで、帰郷や上京は出来ない。

でも、生死は互いに心配。


そこで、PCを使いリモートで、生存報告をかねて、近況を話すことにした。


『お兄ちゃん、久しぶりだね』

「ああ。最後に会ったのは、まだ僕が5歳のころだったな」

『私まだ、生まれてないよ。寒いギャグはやめてよね』

「猛暑だから、涼しくなったろ?」

『全然』


他愛のない会話が続く。

元気そうだと、安心した。


『お兄ちゃん、ご飯食べてる?うがいはしてる?手は洗ってる?』

「全部、やってるよ。香里はどうだ?」

『私は大丈夫だよ』


昔から、女子力だけは、高かったからな。


『お兄ちゃん、パパとママがいないからって、だらしなくしたらだめよ』

「わかってます」


両親は、海外で暮らしている。

なるべく早く、仕事を引退して、海外で生活するのが、夢だったようだ。


『お兄ちゃん、彼女元気?』

「いねーよ。知ってて訊くな」

『まさか。シスコン?』

「違う!」


他愛のないやり取りが続き、お開きとなる。


『じゃあ、お兄ちゃん。またね』

「ああ。夢に向かってがんばれよ」

『お兄ちゃんもね』


こうして、電源を切る。


「ふぅ」


ため息がもれた。


空は、もう真っ暗になっている。

今日は満月だ。


香里も見ているだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リモート 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る