『小さなお話し』 その117

やましん(テンパー)

『なにも聞こえない』


 知人のお葬式に行って、帰りがけに、道にまよってしまいした。


 なにしろ、かなり、深い山間部で、土地勘もないし、ナビも細かいところが分からない状態でしたから。


 で、迷い込んだ山の頂上あたりで、えんこしてしまっていた、小型宇宙挺に、出くわしました。


 大変な美少女が乗っていましたが、本当の姿かどうかは、わかりません。



 『ちょっと、電力をください。』


 と、いうので、例のごとく、バッテリーからケーブルを繋ぎ、ぼくは、言いました。


 『こんなので、良ければ。』


 彼女は、うれしそうに言います。


 『オーケー。ハイパードライブユニットが動くためには、十分。』


 で、赤と黒のケーブルを、小さな宇宙挺に繋ぎ、  


 『回してください‼️』


 と、おっしゃいます。


 『よっしゃ‼️』


 と、アクセルを踏み込みました。


 二~三回繰り返したところ、宇宙挺に灯が灯りました。


 『サンキュー。助かりました。これ、お礼です。五年後の惑星内の電波を受信できるラジオです。じゃ、お元気で。』


 宇宙挺は、あり得ないスピードで、お空に消えました。


 『はあ。五年後の電波が聞こえるラジオ?

そらゃ、五光年先の放送の事かいな?』


 ま、とにかく、おうちに帰らないと、どにもなりません。


 お腹はペコペコだしね。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 で、そのラジオは、そもそも、電池を入れる場所がないし、充電さする端子もないときましたが、確かに、空電は聞こえます。


 つまり、稼働はしている。


 でも、どうやっても、放送らしきものは、まったく、きこえませんでした。


 夜間になると、海外の中波も聞こえるはずですが、色々やったけど、放送の受信はできません。


 表示される数字らしき文字は、意味がわかりませんが、周波数らしいことは、間違いないようでした。


 『取説も、貰えばよかたな。あ、読めないから同じかな。壊れてるのかな?』

 

 そのラジオは、我が家の、ラジオ陳列棚に並びました。

   


 しかし、それは、べつに、壊れてる訳ではなかったのです。


 


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



              おしまい


 


 

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『小さなお話し』 その117 やましん(テンパー) @yamashin-2

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