第9話 好き透け問題2
現在、俺は
嶺がホストクラブでさえ好き透け警戒をするという、超好き透け警戒女だということが判明した。
「仕方ないじゃない! 指名とか、あなたが好きですって言ってるのと同じで、すっごい恥ずかしいんだから! 2人きりなら告白できるけど、知らない人も見てる中で告白できないタイプなの!」
「嶺は思春期か! ホストクラブっていうのはそういうとこなんだよ! 金払って好きな男とモブ共と話をする場所なんだよ!」
「私はお金を払って
「それだけでいいのかよ!」
「それだけで良かったの!」
俺はそっぽを向く。
嶺もそっぽを向いた。
本当にそれでいいのか。
嶺がそれで満足というのなら、もうこれ以上言うことはないのだが。
ホストクラブは初回はサービス価格で安く済むシステムがある。誰でもいいから男と話をしたい、そこで終わりなら大金を払う必要はないのだ。
しかし、常連になるとそうはいかない。
普通に暮らしている人では想像できないほどの大金で、好きな男との会話時間を買う場所に豹変する。
嶺はもちろん、この家に済む嶺の友達も大金を店に落としてくれる客だったのだ。
なのに大金を払って好きでもない男と話をし、俺を遠目で見ていただと!
ちょっと嬉しいじゃないか!
いや、すごく嬉しい!
遠目で見て満足するなんて、学生の片思いじゃないか。甘酸っぱ過ぎる!
「……ありがとう。それはすごく嬉しい」
「そうでしょ?」
「だとしても俺を指名してくれなかった事実は残るんだからな!」
「あ、やっぱり残っちゃうんだ」
「当たり前だ」
ホストにとって自分の常連客ができるというのは嬉しいどころの話ではない。それはもう言葉にできないほどだ。
常連客の人数は自分の収入にも直結するため、どれだけ太い客が自分の常連になってくれるか、それがホストの勝負である。
嶺が隠れ蓑に使っていたホストは瞬く間に店上位にランクインし、月給は俺の50倍にもなっていた。
そして、嶺の本命の俺は店から捨てられたわけだが。
「そういえば、嶺がいつも指名していたアイツ、あれから連絡あるのか?」
嶺を常連にして天狗になっていた後輩の顔が思い浮かぶ。
「うん。会いたいって毎日のように言ってきたから、君には飽きたって言っておいたよ」
「嶺も鬼だな」
「そうかな? だって風流くんが居ないあの店にもう用はないし、むしろ手放してくれてありがとうって感じだよ。こうして私は格安で本命をモノに出来たんだ、落とすのはまだっぽいけどね」
「おい、本音漏れてるぞ」
「でもさ、私たち以外に常連客を作れなかった、君の実力不足もあると思うよ?」
「……おっしゃる通りです」
「そうでしょ? 風流くんはホストに向いてないんだって。諦めてうちに永久就職してほしいな」
「それは断る」
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