ヒモ男だけど働きたいんです
いまいまい
シェアハウス編
第1話 宿主が働かせてくれない
俺の名前は
1週間前、働いていたホストクラブをクビになり、借りていたアパートの家賃を払えず、宿無しになってしまった。そんな俺を助けてくれたのは意外にも店の常連客だった。
一回も指名はしてくれなかったがな。
俺を養ってくれている宿主の名前は
金髪ロングの美人で、ここら辺の一番大きな病院で医者をやっているらしい。
そりゃ男1人くらい養う余裕もあるってもんだ。
俺用の部屋も与えられ、ふかふかのベッドで好きなだけゴロゴロでき、スマホも使い放題と、ここはこの世の天国である。
ただひとつ不満があるとすれば……。
「どうしたの風流くん。不満そうな顔して、何かあった?」
「いやいや、そりゃ不満だろ」
「えっ!? 衣食住に娯楽まで全て用意したのにまだ不満があるの!? 」
「ある!」
「性欲?」
「違う」
「ここがシェアハウスだって事だよ!」
そう。この家はシェアハウスであった。
桐嶋嶺は同性の友達3人とひとつ屋根の下で暮らしていた。
「だぁれが好き好んで友達が連れてきた知らない男と家をシェアしたいんだよ! 友達3人に迷惑だろうが!」
「えー……でも3人ともokしてくれたし」
「渋々に決まってんだろうがぁ! 3人と会うたび俺めっちゃ気まずいんだからな! 明らかに俺のこと避けてる子もいるし!」
「まさか、それは被害妄想でしょ」
「被害を受けてるのは俺もだけど友達もなんだよ! はぁ……嶺はさ、仲のいい友達だけで暮らしたいからシェアハウスにしたんだろ? その気持ちは他の3人も同じのはずだ。俺みたいな部外者を連れてくるべきじゃない」
そう言って俺はあらかじめ用意しておいた独り立ちセットを持って玄関へと向かう。
「あっ……待って風流くん。どこに行くの」
「どこって、仕事を探しに行くんだよ。まだしばらくはこの家の厄介になるつもりだが、金が入ったら部屋を借りる」
「そんな……やめて……仕事しないで……死んじゃうよ」
「なんで仕事しただけで死ぬんだよ。そんな危険な仕事はやらないって」
「違う! 私が死んじゃうの! 私に君を養わせてよう!」
「ええぇぇぇぇ……」
嶺はリビングの床でごろごろごろごろと転がり出した。
「うわあぁぁぁぁん!」
おまけに泣き出した。
泣き声を聞きつけてそれぞれの自室から嶺の友達3人がやってくる。
「殺される! 風流くんに殺されるぅ!」
「いやいや殺さないよ!? 誤解だから、これは誤解だからな!」
「働いちゃダメェ!」
「わかった、やめる! 働くのやめる!」
じたばたと暴れ回る嶺だったが、やめるの一言ですとんと泣き止んだ。
本当にコイツが医者なのかよ。
「ほんと?」
「ああ。本当だ」
こうして俺の独立作戦は食い止められたのだ。
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