元勇者対魔王
メリダは巨人の右腕の連中に向かって言った。
「止めに来たよ、あんた達」
「短時間で良い面構えになったじゃないかメリダ」
ベネットはそう言って両手に持っていたデモン・セルを投げると、額に二本の角と、背中に翼が生えた巨人、グレーターデーモンという魔物が現れた。
その瞬間、白鷲の翼と蒼狼の耳が火竜の伊吹の横に駆け寄り武器を構える。
「こいつは私達が受け持つわ。火竜の伊吹は巨人の右腕と思う存分やりなさい」
「助かるわ」
「気にしないでよ。それと、キリク達は先に行って」
ミナスティリアがそう言うと、ベネットが俺の方を見つめながら声をかけてくる。
「勇者アレス、お前は俺達の気持ちは理解できるのか?」
「少しはな。だから、魔王達とは違うやり方で俺は終わらせてやるよ」
俺がそう言うと、ベネットはしばらく俺を見つめた後、親指で後ろを刺して呟く。
「行け……」
俺はベネットに頷くとサリエラ、グラドラス、オルトス、ブレドを連れて先へ進む。
すると、すぐに後ろの方で戦う音が聞こえてくる。
そんな音を聞き、ブレドは悲しげに言った。
「誰も虐げられない、平等な世の中を作らないといけないな……」
「……そうだな」
だから、終わらせないといけない。
そう思いながら前に進んでいると、先の方の開けた場所でカーミラと魔王の姿が見えてきた。
追いついたか。
魔王……。
俺達は二人の近くまで来ると、魔王が振り向き言ってきた。
「来たか……」
「ああ、終わらせにきた」
「それは、奇遇だ。俺も終わらせに来てるんだ。邪魔はするなよ」
「魔王、お前と俺の終わりは意味が違う」
「ほお、じゃあ交渉はできなさそうだな」
「する気もないくせに何を言ってる」
「これはバレてしまったらしい。カーミラどうする?」
魔王は手をすくめてカーミラを見ると、妖艶な笑みを浮かべ俺達を見回し言った。
「残念ねぇ……。アステリアは殺せなくなっちゃうかもだけど……」
カーミラは心底残念そうに言うと指を鳴らした。
すると、周りに大量の怪物が集まって来た。
更にカーミラはデモン・セルを投げ、グレーターデーモンを出すと俺達を睨みながら言った。
「こいつらと一緒に時間稼ぎをお願いねぇ、私の騎士様ぁ」
「承知した」
魔王はその去っていくカーミラにそう答えると俺を見てきたので、魔王の正面に立ち皆んなに言った。
「こいつは俺がやる」
「なら、私はグレーターデーモンをやります」
「俺達は嬢ちゃんのサポートしながら怪物退治としゃれこむぜ」
サリエラとオルトスがそう言ってくる為、俺は頷くとゆっくり魔王の方に歩いていく。
……お前の考えを否定する気はない。
だが、それでも俺はやらなければならない。
「決着をつけよう。どちらが正しいか……」
俺はそう言って槍を構えると、魔王は無言で大剣を抜き向かってきた。
俺は魔王が間合いに入らないよう槍を振り回して攻撃すると、魔王は身体を器用に曲げ大剣を振るってくる。
俺はその攻撃を後ろに飛んで避けると再び魔王にむかいく。
そして俺達はしばらく戦い続けていたが、鍔迫り合いみたいになった時、俺は魔王に言った。
「お前は本当は迷ってるんじゃないか?」
「何の事だ……」
魔王はそう言って、それ以上は言うなと威圧してくるが俺は構わずに言ってやる。
「四体の魔王はお前の迷いが生み出したんだろう。自分の領域を破壊され、怒り狂った結果、生み出されたのが魔王イシュカ、破壊したアステリアを呪いたいと思った結果、生まれたのが魔王カーズト、どうやってアステリアを倒すかを考えた結果、生まれたのがバーランド、そして、四体に別れた原因……お前の理性が働き迷ってしまった結果、生まれたのがラビリンスだ」
俺はそう言い終わると同時に魔王に向かって槍で攻撃する。
「くっ……」
魔王はなんとか横に避けるが闇の鎧で作られた肩付近を貫かれフラつきながら後ろに下がった。
すると、魔王は俺に向かって叫んだ。
「……心を読むな!」
「お互い様だろう。魔王……いや、魔神グレモス」
「ぐぐっ……」
「お前も不死の住人のようになってこの世界に顕現していたんだな。だが、迷いの所為で魔王の中で眠り続けてしまった。だが、その身体に入ることによってお前は目覚めたんだろう」
「……うるさい!」
「どうした?自分がやられた事と同じ事をした気分は?」
俺がそう聞いた瞬間、グレモスはフラフラしながら後ろに下がる。
それを見た俺は確信した。
「お前だって本当はこんな事は望んでいないのだろう?」
「……違う」
「確かに自分の領域を壊された時は怒り狂い、呪い、どう報復するか考えた。だが、冷静になりお前は迷ってしまった」
「違う!私はあの魔族や魔物を生み出した卑劣で傲慢な神だぞ!」
「そう作ったのだろう。悪に徹する為にな」
俺がそう言うと、グレモスは俯き、しばらくすると顔を上げた。
「……恨んでいないのか?」
「……恨んでるさ。だが、お前の事情も知ってしまった。だから、お前に恨みを晴らしたいとは思わない」
「だから、私にも恨むのをやめろと?」
「ああ、どこかで断ち切らなきゃいけないんだ。今がその時じゃないのか?」
「……無理だ、私はもう止まる事はできない!」
グレモスはそう叫ぶと大剣を構えて突っ込んできた。
その動きを見て俺は溜め息を吐くと、槍を構える。
そしてグレモスの大振りの攻撃を避けると槍で胸を貫いたのだった。
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