怪物
私達は、驚愕しながら魔導具を見ていた。
すると第三障壁の方から腹に響き渡る音が聞こえてきた。
グゴゴゴゴゴゴゴッ……。
「これは何の音なの?」
私がそう呟くと、カーミラが腹を抱えて笑い出した。
「ははははっ!何の音ですって?わかってるでしょう!これは破滅の始まりの音よ!」
「破滅の始まり……まさか異界の門が開いたということ?」
「正解よぉ。多分、全開に開いたんじゃない」
カーミラがそう言うと共に、沢山の何かが地面を踏みならしてこちらに向かってくる音が聞こえてきた。
そして第三障壁の巨大な金属扉を激しく叩きだす。
その音を聞いた瞬間、トーラスが焦った顔で全体に聞こえるように叫んだ。
「皆んな第二障壁まで撤退しろ!体制を立て直すぞ!」
トーラスがそう叫ぶと、カーミラがニヤニヤしながら聞いてくる。
「そんな事してていいのぉ?私達は先に行っちゃうわよぉ?」
「馬鹿か⁉︎お前らだってやられるぞ!奴らは生きているなら何でも襲うんだよ‼︎」
「ふふふ、それはそうよ。だってそういう風に命令されてるんだからね」
「なっ……まさかお前は欠片なのか?」
トーラスは驚愕した表情でカーミラを見つめると、カーミラは手を叩いて笑い出した。
「あはははっ!そうよ!私はアステリアの欠片、そして終わらせる者よ。だからねえ、私や私の騎士達は襲われないの」
カーミラはそう言って魔王達を連れて第三障壁の方に歩いていく。
それを私達は止める事ができなかった。
何故なら目の前の巨大な金属扉に亀裂が入り始めていたからだ。
私達はカーミラとは逆にゆっくりと後退していく。
そんな時、メリダがベネット達、巨人の右腕に向かって叫んだ。
「あんた達の事を調べたわよ!それでもあたしは止めてみせるからね‼︎」
メリダがそう叫ぶと、ベネットだけ振り返り言ってきた。
「……無理だな。俺達はお前達以上に覚悟がある。仲間だった連中も町も国も世界も神も全てを敵にする覚悟がな……」
「ベネット……あんたそれ程なの……」
「全てが平等は無理だってわかっている。だがな、たかが加護がないからって死にたくなるまで追い込むか?だからな……加護無しを虐げてる奴らに教えてやるんだ。死ぬってのはどういう気持ちかな」
「だからって関係ない人達はどうするのよ⁉」
「関係ない?加護を持ってれば当事者だ。メリダ、やめて欲しかったら俺達を止めてみろ。不条理なこの世界を残したいならな」
ベネットはそう吐き捨てるように言うと背を向けて歩き出し、メリダはそれを見ていることしかできなかった。
私は立ち尽くしているメリダのところに行き声をかける。
「私達はそれでも止めなきゃならないのよ。さあ、扉が壊れる前にいったん離れましょう」
「ええ……」
それから、私達は第二障壁の手前まで撤退したのだが、その間も第三障壁の巨大な金属扉に亀裂が入っていき、遂には全体に亀裂が走り破壊されてしまったのだ。
すると、そこからゆっくりこちらに歩いてくるものがいたのだが、私達はそれを見て固まってしまう。
それは身の丈三メートル以上あり、シャツにズボンという人の姿をしていたのだ。
だが、それを私達連合軍は人とは呼べなかった。
何故なら、それらの皮膚は弛んでいて明らかに人の皮を被った何かだったからだ。
そんな何かの横を動物の皮を被った同じような存在が歩いてくる。
私はそれから目を逸らさずにトーラスに聞いた。
「トーラス、あれは何?」
「奇怪な生き物、俺達の間では怪物って言ってる」
「怪物……」
私はトーラスの言葉を聞いてからもう一度怪物を見て納得する。
間違いなく奇怪な生き物だったからだ。
「あの皮膚の下にはどんな奴がいるの?」
「肉の塊みたいなものがある以外わからない。倒すと文字通り溶けちまうからな。ちなみに動きは個人差があり、中には魔法を使うやばい奴もいる」
「強さは?」
「今出てきてる人型はダマスカス級で、動物型はアダマンタイト級だ」
「それなら私達でもやれるけど、結界やら障壁やらがあるという事は何かあるんでしょう?」
「ああ、あいつら放っておくと二十四時間、異界の門から出続けてくるんだ……」
「はっ?」
私は思わずトーラスを見てしまうが、トーラスは冷や汗を大量に流しながら怪物を睨み言ってくる。
「言葉の意味の通りだ。奴らは無限に出てきやがる。だから、結界で異界の扉を封じて、結界師がきつくなったら魔導兵団と鉄鋼騎士団が殲滅していくんだ。それをこのローグ王国は何千年休まずにやっている。まあ、本来は門の隙間から一体ずつしか出てこれないからそこまでは大変じゃないんだが……」
「カーミラは全開に開いたって言ってたわよね……。いっぺんに何体出てくるのよ?」
「十体は確実に出る。そしてもう既に数百体は出てるだろうな……」
「ダマスカス級とアダマンタイト級が数百体……」
私が絶句しているとファルネリアが声をかけてきた。
「ミナスティリアの宝具を使ってあの怪物っていうのを消せないの?」
「確かにいけるかもしれないわね」
私がレバンテインを見ながらそう答えると、トーラスが首を振る。
「悪いけど宝具の力はこの地ではかなり落ちる。多分、外周の皆んなが崇めてる神々の力が届かないのだろうな」
「ああ、確か中央はダンジョンもできないって言ってたものね……。じゃあ、どうするつもりなの?」
「国王が守り人を呼んでる。彼なら怪物を弱体化できる力がある。それをしたら、第三障壁へ突入しよう。異界の門は完全には閉まらないが元の位置には戻せるはずだ」
トーラスがそう言った時、上空から何かがこちらに向かって来るのが見えた。
それは白い翼を生やした白馬に乗った、白髪の老人だった。
すると、トーラスが両手を振りながら合図する。
「おーい!こっちだ!」
トーラスが叫ぶと老人は気づいたらしく、持っていた杖を軽く振りトーラスの前に降り立った。
するとトーラスは私達に向かって老人達を紹介しだす。
「連合軍の皆んな、彼が聖霊神イシュタリアが使わした聖人と聖獣だ」
トーラスがそう言うと老人は私達を見て慈愛に満ちた微笑みを浮かべるのだった。
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