もう一人の仲間
あれから、私達は第二障壁を通り抜け、第三障壁に向かっていた。
その間、アリシアは連合軍の皆んなと自己紹介しあっていたのだが、私はそんなアリシアの姿を見てあの人を思い出していた。
まさか、王族だったとはね。
しかも妹までいたなんて……。
勇者時代に何を聞いても教えてくれなかった理由がアリシアとブレドの会話でわかってしまった。
……誰にも言えないわよね。
全く、何も知らないで無理矢理聞こうとしたあの頃の私を殴りたいわ……。
私は走りながら自分の頭を叩いていると、メリダが声をかけてきた。
「ミナスティリア、あんた何やってんの?」
「過去の自分を殴れないから今の自分を代わりに叩いているのよ」
「そ、そうなの……。まあ、過去よりも先を見なきゃ駄目だよ」
「わかってるわよ。……ねえ、あなたは過去の自分を責めたくなった事ってある?」
「最近まではずっと思ってたよ……」
「どんな事?」
「アレス様の役に立つ為に強くなったのに、役立てなかったことかな。何でもっと早く行かなかったんだって。そうすればアレス様は死ななかったのにってさ」
「……そっか。でも、今は役に立ってる最中でしょ」
「できれば直接、本人の背中を守りたかったのよ」
「……横に立ちたいとは思わないの?」
「背中は一番攻撃を防げないでしょ。だから、私は一番アレス様の役に立てる位置にいたかったのよ」
「なるほど……。そういう考え方もあるのね」
「あんたらはそう言う意味だけじゃないんでしょ?」
メリダはそう言ってニヤッと笑ってくる為、私は遂、気になっていた事を聞いてしまう。
「あなたはそうはなりたくないの?」
「私は憧れに近いからそういう感じは今のところはないわよ。だから、今はあんたらを応援するわよ」
メリダはそう言って私にウィンクしてくるので、思わず肩を掴んで力強く頷く。
「私、あなたと仲良くなれそうよ」
「現金ねえ……」
「当たり前よ。なんせ、ライバルがこれ以上増えるのは危険だもの……」
「ああ、片方の席は完全に埋まってるものねえ……」
「いいえ、私は一番を諦めてないわよ」
「ふふふ、なら、あたしはあんたの肩を持ってあげるわよ」
「ありがとう。でも、その前にあれをどうにかしなきゃね」
「ええ、そうね」
私とメリダは前の方を睨む。
そこには鉄鋼騎士団と戦うカーミラ達がいたのだ。
しかも、メリダ達、火竜の伊吹が狙っている巨人の右腕もいた。
「ミナスティリア、私達は巨人の右腕をやるわよ」
メリダはそう言うと火竜の伊吹に声をかけ、巨人の右腕の方に向かっていく。
すると、私の側にサジが駆け寄り言ってきた。
「巨人の右腕ですが、もしかしたら狂化薬を使ってるかもしれないです」
「狂化薬ですって⁉︎」
私はそう言われて巨人の右腕のメンバーを見て冷や汗が出てきた。
「ダマスカス級の連中がそんなの使ったらどうなるのよ……」
「場合によってはオリハルコン級まで力は跳ね上がるかもしれません。ローグ王国の鉄鋼騎士団がいるとはいえ火竜の伊吹だけだと危ないかもしれません」
「なら、蒼狼の耳とブレドにサジが行ってくれる?」
「わかりました。ミナスティリアさんも気をつけて下さいね」
「私はあくまで足止めだから無茶はしないわ」
私はそう言うと魔王といるカーミラの方に向かっていく。
するとカーミラがこちらに気づき面倒臭そうな顔を向けてきた。
「あらあら、もう追いついちゃったぁ?全く、面倒ねぇ」
「それはこっちの台詞よ。あなたもいい加減捕まったらどうかしら」
「えーー、嫌よぉ。私、ここからが良いところなんだからぁ」
「あなたがやろうとしている事は私が阻止してあげるわ」
「ふふふっ、無理矢理。ちなみにこの壁の向こうって何があるか知ってるかしらぁ?」
「異界の門でしょ」
「正解!じゃあ、その異界の門って少し開いているのは知ってたぁ?」
「……知らなかったわ。それで?他には何を知ってるのかしら」
「ふふふ、どうしようかなぁ。教えちゃおうかなあ。うーーん」
カーミラは魔王にしなだれかかりながら私を見つめる。
正直、時間稼ぎも兼ねてる私にとってはありがたかったが、何か引っかかる気がして周りを見回す。
するとカーミラがニヤッと笑った。
「誰か探してるのぉ?私の騎士もヨトスも巨人の右腕も全員いるわよぉ」
「……誰かいるのね。誰かしら?」
「教えてあげる前にさっきの続きよぉ。異界の門って完全に閉じる事はできないみたいなのよ。でもね、開けるのは簡単で誰でもできるの」
カーミラはそう言うと狂気じみた笑みを浮かべる。
それを見た私はトーラスに叫んだ。
「異界の門に誰か向かってるわ‼︎」
「な、何だと⁉︎今、こっちの対処で向こうは手薄だぞ‼︎」
トーラスは急いで通信できる魔導具を取り出す。
「こちら鉄鋼騎士団第二部隊副隊長、トーラスだ。そっちはどうなってる?」
「道化師の格好をした奴と魔族が穴から出て来やがった。まずい、誰か応援……うわぁぁーー」
「おい!聞こえるか!どうなってる⁉︎」
「……あれれれえぇ、声が聞こえますよおぉ?僕、ダイヤのクラウン、ステフともうしままあああすうぅ」
「なっ……」
トーラスは驚いた顔で魔導具を見つめていると、カーミラはいたずらが成功したような顔をして私を見てきたのだった。
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