禁呪を使う覚悟

「後衛はもう少し後ろに下がれ!」


 ガラット達、前衛陣は穴の空いた壁から湧き出る虫系の魔物に押され始めてしまい、後ろで魔法攻撃している後衛陣に声を掛ける。

 すると、後ろで様子を見ていたマーズがガラットに駆け寄り声を掛ける。


「ねえ、あの穴の空いた壁をどうにかしないとダメじゃない?」


「わかってるが穴の防ぎ方がわからないんだよ」


「仕方ないわね。皆んな!土魔法で穴を塞ぐわよ!」


 マーズは後衛陣に声を掛けると一斉に穴が空いてる壁に向かって魔法を唱えた。


「「「「「第五神層領域より我に土の力を与えたまえ……ストーン・ウォール!」」」」」


 後衛陣が放った土魔法が穴の空いた壁を塞いでいく。

 おかげで虫系の魔物が出てこれなくなり、前衛陣は一気に巻き返す。


「よし、このまま押しきってここから離れるぞ!」


 ガラットがそう叫ぶと、ヘカントケイルと戦っていたミナスティリアがいったんガラットの側に移動する。


「ガラット、私達がヘカントケイルを誘導するから先に進んで安全な場所で休んで!」


「わかった!」


 ガラットがそう答えるとミナスティリアはすぐにヘカントケイルに向かっていき、ミランダ達に声を掛ける。


「進軍メンバーを先に進ませるからあいつを誘導しながら戦うわよ」


「なら、少し行くと左に大部屋があるからそこに引っ張るよ」


「わかったわ、ブリジット」


 ミナスティリアはヘカントケイルの攻撃をかいくぐり、なんとか腕一本に浅い傷を付ける。


「グオオォッ‼︎」


 ヘカントケイルは怒りの形相でミナスティリアを狙い出したので、ゆっくりとミナスティリアは大部屋の方に移動する。

 そして、先への道が開いた瞬間、ガラット達進軍メンバーは走り出した。


「ふう、行ったみたいね。でも、どうやってヘカントケイルを倒せばいいのよ……」


 ファルネリアは呆然としながら暴るヘカントケイルを見つめる。

 既に魔力は使い切ってしまい、ファルネリアは現在、見ている事しかできないのだ。


「強さも持ってるものもオリハルコン級……」


 撃った魔法を全て武器で弾かれてしまったリリアナが悔しそうに呟く。


「ヘカントケイルの持っている武器や盾は魔導具みたいね……。誰よ、腕十本全部に魔導具を持たせたバカは……。あれじゃあ魔王と戦う方が楽じゃないの……」


「動きを止めないと皆んな死ぬ。全滅は避けたい」


「けど、どうすれば……」


 ファルネリアは頭をフル回転させながら、ヘカントケイルを倒す策を考える。


 既に進軍メンバーの宝具解放は全て使ってしまったし、ヘカントケイルと近接で戦えるのはここにいない冒険者では体力的にいっておそらくガラットしかいない。

 けど、ガラットは後衛陣を守ってもらいたいからダメよね。


 考えたすえにファルネリアは溜め息を吐く。


「禁呪を使うしかないかもね……」


「えっ……」


 ファルネリアの言葉にリリアナはギョッとした顔をする。

 何故なら禁呪を使うことは命を捨てると言ってるようなものだからだ。

 そんな驚いた顔をするリリアナにファルネリアが微笑む。


「いつでも死ぬ覚悟はできてるわよ」


 ファルネリアはそう言うと、ミナスティリア達に向かって叫んだ。


「時間を稼いで!私が特大のを一発出すから‼︎」


「ファルネリア、あなたはもう魔力はないでしょう?まさか……」


「そのまさかよ」


「やめなさい!まだ私達は戦えるわよ‼︎」


 ミナスティリアがそう叫んだ時、ブリジットとフランチェスカが吹き飛ばされて壁にぶつかった後、倒れて動かなくなる。

 それを見たファルネリアはミナスティリアに向かってニヤッと笑う。


「やるしかないのよ」


 ミナスティリアはそう言った後、残った魔力を自分の生命力に繋げていく。


 後は神層に繋げて無理やり引っ張ればメギドぐらいはいけそうかな。

 はあ、死ぬ前にあの人と無理にでも一線を越えるべきだったわね。

 まあ、しようとしたら叩かれて終わるだけだろうけど……。


 ファルネリアは想像して心の中で笑うが、すぐに視界が歪みだす。


 くっ、きついわね……。

 しかも、あの人が見えるし……。


 ファルネリアは歪む視界の中に一番会いたい人物がいるのを見てしまう。


 ああ、これ禁呪を使う前に死ぬのかしら……。


 ファルネリアがそう思っていると、その人物に肩を叩かれた。


「おい、それは使わなくていいぞ」


「えっ、もう私って死んでるの?」


「何を言ってるんだ……。しっかりしろファルネリア」


「あれ、キリクが何でここにいるの?裏道は?」


「色々あって進軍メンバーと合流しに来たんだよ。それより少し休んでろ」


「で、でもヘカントケイルが……」


「オルトスと火竜の伊吹がいるから大丈夫だ」

 

 俺に言われてファルネリアはヘカントケイルの方を見ると、すぐにほっとした顔をして座り込んでしまった。

 

「……良かったあ」


「後は任せろ」


 俺はそう言うとヘカントケイルにデボットに使った魔導具、水晶蔦を投げる。

 すると水晶蔦が足元に落ちた瞬間、魔法陣が展開し、中からクリスタル状の蔦が現れてヘカントケイルの身体中に絡みつく。


「オオォッ⁉︎」


「どうやらヘカントケイルにも効くようだな」


 俺は目の前で見事にクリスタルの蔦に絡まって動けないヘカントケイルを見た後に、ミナスティリアとミランダを見ると二人は好機と見たのか一緒に動き出した。


「いける!ミランダ‼︎」


「はいよお!」


 ミナスティリアとミランダはヘカントケイルの左右から回り込み、タイミングを合わせて武器を振り下ろし、首を斬り落としたのだった。


________________

◆ 次の話が気になるという方は


是非、フォローと広告の下の方にある【★】星マークで評価をお願いします


よろしくお願いします

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る