尋問

 全く反応できなかった……。


 俺はその後、手足を縛られ目隠しと猿轡をされると、俺を縛り上げた人物が顔を近づけて小声て質問してきた。


「あんたは穢れた血縁者なの?」


 俺は首を振ると時間置いてまた質問をされる。


「あんたは東側から来た冒険者?」


 俺は相手に殺意を感じなかったので首を縦に振ると、しばらくして目隠しと猿轡をゆっくりと外された。

 すると目の前には五人組の冒険者が立っており、中には穢れた血縁者を討伐する日に見た燃えるような赤い髪を腰まで垂らした赤い目の美女もいたのだ。


 南側の冒険者達か……。

 何故ここに来たんだ?


 俺はそんな事を考えていると女はニヤッと笑って俺を見つめてきた。


「あたしは南側の冒険者をやってるメリダだよ」


「そうか。なら手足も自由にして欲しいね。ついでに仲間もな」


 俺は隣りで同じ様に手足を縛られ目隠しと猿轡をされたサリエラを見る。

 ちなみにグラドラスは俺の見える範囲にはいなかった。

 するとメリダは俺の近くに顔を寄せると首を振った。


「悪いがそこまではできないよ。なんせあんたらは東側の冒険者だからね。それに一人、逃げられたから場合によっては人質にもなる」


「……なるほど。で、どうする気だ?」


「これからゆっくり事情を聞かせてもらうよ」


「聞くのは良いが周りにいる冒険者は信用できるのか?」


「ええ、ここにいるのはあたしの信頼するクランの仲間……なるほど、あんた達もこっちの冒険者ギルドを疑ってるのね」


「実際、南側の冒険者が穢れた血縁者のアジトに案内してくれたしな。まあ、蜥蜴の尻尾切りをされたが……」


「ああ、ここの連中を斬ったのはダマスカス級冒険者のノッカーよ。今捕まえて尋問中」


「という事はあんたらに見張られていたのか?」


「ええ、冒険者ギルド内で穢れた血縁者の中に東側の冒険者が紛れてるって噂が流れてね。それで前から目をつけてたこの村にすぐに向かって遠くから張ってたら当たりを引いたってわけ。それであんたらはその東側の冒険者で合ってるのよね?」


「東側の冒険者だが、残念だがあんたらが求めてるいるのとは違う」


「……どういう事?情報をこっちに渡したくないなら多少手荒なマネはするわよ」


「いや、そもそもその嘘情報を流したのは俺達だ」


「はっ?何それ……」


「罠を張ったんだよ。南側の冒険者が穢れた血縁者と通じてるか、そしてアジトまで案内してくれるかってな」


「……そういうことなのね。まあ、おかげで裏切り者とダークエルフを捕まえる事ができたけど……なんか私達ができなかった事をあっさりやられたから腹立つわね」


「成功したんだから良いだろう」


 俺がそう言うとメリダは苦笑した後、仲間達の方に向き直り指示を出す。


「というわけであたし達がこれからやる事はノッカーから裏切り者達を聞き出す事と、ダークエルフから穢れた血縁者の幹部連中の情報を聞き出す事の二つね」


「「「「了解」」」」


 冒険者達はそう返事すると動き出したのだが、皆んなの腕輪の色を見て俺は驚く。

 何故なら全員ダマスカス級だったからだ。

 すると俺の視線に気づいたメリダが俺の目の前に腕を見せてきた。


「オリハルコン級か……」


「そう、剣聖と武道家の加護を持つオリハルコン級冒険者のメリダよ。覚えておいてねキリク」


 剣聖に武道家か……。

 全く俺が反応できないわけだ。

 それより……。


「何故、俺の名前を?まだ名乗ってないんだが……」


「さてどうしてかしらね。それよりあなたも尋問に参加する?」


 メリダはそう聞いてきながら俺の手足の縄を解いてく。


「できればダークエルフの尋問は聞きたい。穢れた血縁者は南側だけの問題じゃないからな」


「確かにそうね。じゃあ、その子を自由にしてあげたらあの丸太小屋に来て」


 メリダはそう言うと仲間達の元にさっさと行ってしまったので、俺はサリエラに声をかけてやる。


「サリエラ、もう大丈夫だ。今、とってやる」


「うーうーうー」


「礼はいらん」


 俺はそう言いながら目隠しに猿轡、そして縄を解いていく。


「キリクさんありがとうございます……」


「大丈夫か?」


「大丈夫ですが……あっという間にあの状態にされてしまいました」


「まあ、相手はダマスカス級にオリハルコン級だからしょうがないだろ」


「でも、強くなれたと思ったのに……やっとキリクさんを守れると思ったのに悔しいです……」


 サリエラは涙目になりながらそう言って俯いてしまった。


 正直、そう思ってくれるだけで十分なのだがな……。


 俺は仕方なく頭を撫でてやると、すぐにサリエラは抱きついてきた。


「キリクさん……」


「少しだけだぞ」


「……はい」


 サリエラはそれからしばらく啜り泣くようにして俺の胸の中で泣きだしたので、俺はサリエラが泣き止むまで背中を軽くさすり続けてやるのだった。


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