ダンジョンの様な町

 数日後、俺とサリエラは待ち合わせをしていた鉄獅子と合流する為、迷宮都市の外に向かった。

 ちなみに今日は穢れた血縁者を討伐しにいき日である。

 外に出ると入り口付近にいた鉄獅子パーティーがすぐに俺達に気づき手を振ってきた。


「キリク、今回も組んでもらって悪いな」


「いや、こちらこそ助かる。ところで内通者は見つかったか?」


「ああ、無事捕らえたよ。まあ、自決されてしまったがな」


「そうか。なかなか胴体まで辿り着けないな」


「正直、今回全部潰しても頭は見つからないんじゃないかと自分は思っている」


「だろうな。それで俺達が行く場所は決まったのか?」


「自分達が行く場所は一番離れた場所のガーレイの町だ。そこで今回、冒険者ギルドが用意した魔導具を使用して目的地に移動する事になった」


 ランドはそう言うと近くに設置してある、転移魔法陣が浮き出ている魔導具を指差す。

 この魔導具は魔力か魔石のどちらかを大量に消費することで飛びたい地点に設置した同じ種類の魔導具まで飛ぶことができるのだ。

 ただし、飛べる距離は短距離転移魔法より、少し上程度の性能である。


「なるほど、転移を何回か繰り返して目的地に行くのか。しかし、こんなバカ高いものをよく用意できたな」


「どうやら、南側の高ランク冒険者達もかなりお金を出したらしい。それくらい今回は力を入れてるんだろう」


「確かに穢れた血縁者は危険だからな……」


 俺はダークエルフ達を思いだしながら横にいるサリエラを見る。


 奴らとはまた出会う可能性がある。

 その時、サリエラは大丈夫だろうか?


 俺がそう思っていると、視線に気づいたサリエラは力強く頷いてきた。


「私は大丈夫です。あれから鍛錬は怠ってませんから」


「……そうか、無理はするなよ」


「それは私のセリフですよ!」


 サリエラはそう言ってジト目で見てくる為、俺は思わず目をそらすと、視界に誰かが入って来るのが見えた。

 その為、俺はその方向を見ると、そこには軽装に背中に大剣を携え、燃えるような赤い髪を腰まで垂らした赤い目の美女がいたのだ。

 だが、その美女は俺を一瞥するとさっさと、魔導具が置いてある方に去ってしまった。


 なんだったんだ、今のは?


 俺はそう思い、その美女を見ようとした瞬間、サリエラに顔を鷲掴みにされ強制的にサリエラの方を向かされてしまう。


「何をするんだ?」


「目を逸らしたので向いてもらっただけです」


「……痛いから離せ」


「嫌です……」


「俺の頭を潰す気か?」


 ミシミシ言っている俺の頭は既に限界に来ている。

 そんな事を思っていると、ルイがサリエラの肩を軽く叩く。


「サリエラ、平常心よ。それにあなただって負けてないわよ」


「でも……」


「大丈夫、自分を信じなさい」


「……はい」


 何の話をしてるのか俺にはわからなかったが、納得したサリエラは俺から手を離してくれた。


「助かったぞルイ」


「助けたつもりはないわよ。キリク、あなたサリエラをちゃんと見てあげなさいよ」


「俺が見なくてもサリエラはもう一人前だぞ。なんせダマスカス級だからな」


「はあ……。全く何もしてないのに疲れが出たわよ。これ以上ここにいるともっと疲れそうだからもう行きましょう」


 ルイは盛大な溜め息をした後、サリエラの手を引いてランド達の方に行ってしまう。

 その為、残された俺は首を傾げながらルイ達を追うのだった。



◇◇◇◇



 あれから、俺達は魔導具を使って短距離転移を何度も繰り返しながら、砂漠地帯を抜けた先にあるガーレイへと飛んだ。


「なんだかダンジョンにいるみたいですね」


 ガーレイに着き、中を見たサリエラが辺りを見回しながら呟く。

 するとルイが咳払いした後に喋りだした。


「ガーレイは強い日照りを避ける為に大きな岩山を横からくり抜いて作った町だから、中に入ると石造りのダンジョン内にいるような錯覚を感じるのよ」


 そうルイが説明するとサリエラが感嘆の声を上げる。


「へー、ルイさんもの知りですね!」


「事前に調べておいたのよ。こういう情報も大事になる事もあるのよ」


「なるほど、勉強になります」


 サリエラはそう言って頷き、それからもルイと何か喋っている。

 そんな二人だが、最近ルイが魔法をサリエラに教えている様で仲が良い感じなのだ。

 その為、俺としてはサリエラに鉄獅子パーティーに入ったらどうかと思っている。


 鉄獅子は冒険者の鑑みたいなパーティーだから、サリエラを安心して任せれるしな。

 これは、おりをみて話してみるのも有りか。


 俺はそう考えながら前を歩く二人を見ていると、先の方に岩をくり抜き、精巧に作った巨大な聖霊神イシュタリアの像が見えてきた。


 細かい装飾をしているが、どうやらここには熱心な信者がいるらしいな。

 

 俺はそう思いながら像を見ていると、サラが目を輝かせながら俺に話しかけてきた。


「キリクさん、もしかして聖霊神イシュタリア様を信仰してるんですか?」


「いや、違う。ここには熱心な信者がいるんだろうと思いながら見ていたんだ」

 

「確かにここまで立派な像は中々ないですよ。こんな素晴らしい像がある町に犯罪行為をするなんて許せません。必ずこのガーレイに平和を取り戻しますよ」


 サラはそう言って杖を強く握りしめる。

 俺はそんなサラを横目に今回の依頼を思いだす。


 今回、俺達の任務は穢れた血縁者で殺しを専門に担っていた黒蠍の毒針というクランを、捕縛か討伐する事である。

 既にクランがいる建物は人払いも終わり現在、冒険者達が囲っている状態である。


 せめて蜥蜴の尻尾だけじゃなく、頭まで辿り着ければいいがな……。

 

 俺がそう思っていると通路の奥から一人の冒険者が慌てた様子で駆け寄ってきた。


「おい逃げろ!やばい魔物が出てきやがったぞ‼︎」


 冒険者がそう叫ぶとすぐに上を向いて悲鳴を上げる。

 何故なら冒険者の真上に巨大な蛇が鎌首を持ち上げていたからだ。

 そして凄い勢いで冒険者に迫るとあっという間に頭から飲み込んでしまい、またゆっくりと鎌首をもたげると細長い舌を動かしながら次の獲物を見つけたとばかりに俺達を見てくるのだった。


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