第32話 後悔
なんで逃げなかったんだろう……。
さっきからずっと、そればかりが頭の中を渦巻いている。
今思えば、いくらでも逃げられたよね……。別に、何十人もに取り囲まれたわけじゃないし、人っ子一人いない真夜中ってわけでもない。ましてや、ナイフや銃を突きつけられたわけでもない。相手はたったの三人だし、まだ明るい夕方だ。
通行人に助けを求めるなり、どこかのコンビニにでも駆け込むなり、どうとでもできたよね……。半ば引きずられるように雑居ビルの外階段を登ってる最中だって、少なくとも今よりは逃げるチャンスがあったはずなのに……。
なんで逃げられないって思っちゃったんだろう……。
逃げられないってのは、今みたいな状況のことを言うのにね。
雑居ビルの屋上で見知らぬ男に犯されながら、あたしはそんなことばかり考える。さっきあたしの処女を強引に散らした男に喉元を踏みつけられているせいで、上半身はびくともしない。下半身も、二人目の男に太腿をがっちりとホールドされてるから膝から下しか動かせない。そして、三人目の男がスマホで撮影しながら退路を塞いでるから、どう考えても逃げるのは不可能だ。
なんで逃げられるときに逃げなかったんだろう……。
もう、全身が痛すぎてどこが痛いのか分からなくなってきた。踏みつけられている喉元も痛いし、コンクリートに押し付けられている背中や後頭部も痛いし、強引に脚を開かれたせいで股関節も痛いし、最後の最後になって抵抗した際に何の躊躇も容赦もなく蹴られたお腹も痛い。あそこは言うまでもなく現在進行形で激痛だ。
二人目の男のモノで、粘膜がゴリゴリと削り取られていく。なんかもう、木の棒で擦られてるみたいだ。これ、絶対出血してるだろうな……。っていうか、よりによってなんでこんなキモい連中が初めての相手なわけ?
一人目は絵に描いたような金髪ゴリラで、こんな奴があたしの処女を奪ったなんて考えただけで吐き気がする。なんか、親が偉い人だから警察に言っても無駄みたいなことを言ってたけど、このアホ面を見る限り絶対嘘だと思う。
今やっている二人目も二人目で、汚らしいロン毛だし、なんか片目だけやたら充血してるしで生理的に全然受け付けない。時折、ブラウス越しに胸を乱暴に揉んでくるけど、ゴキブリかムカデに這われたみたいにぞわぞわする。
そうこうしている内に、ロン毛があたしの中に汚いものを放出して、ずっとスマホで撮影していた三人目と交代した。この三人目は超絶デブな上に、終始ニヤニヤしていて顔もキモい。
ずっと撮影させられてたから、もしかしてパシリ的な立ち位置なのかな、とも思ってたけど、最後はちゃんと挿れるんだね……。なんかもう、どうでもよくなってきた。別に同意したわけじゃないし、する気もないけど、どうせどう足掻いても力づくでやるんだろうから、さっさと終わらせてほしい。
動画をネットにアップロードしたとかするとか言ってた気がするけど、それももうどうでもいいや。どこかの知らない誰かに見られることなんて、今さら気にする気にもなれない。今はもう、一刻も早くこの地獄が終わって解放されることを願うだけだ。
徐々に赤みがかかっていく空を見上げながら、ひたすら激痛に耐え続ける。
ほんと、なんで逃げなかったんだろう……。
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