ムーン・ヘル
浮谷真之
第1章 未来
第1話 貞操の危機
えっと……なにこれ?
いつもと同じように目を覚ましたあたしは、いつもと違って一瞬で覚醒した。これ絶対やばいでしょ。大ピンチってやつじゃん。
とりあえず、状況を整理してみよう——
まず、あたしはベッドで横になってヨダレを垂らしてる。これはまあいい。いつものことだ。
次に、あたしはどうやら全裸らしい。これはまずい。全裸で寝るというファンシーな趣味があたしにない以上、誰かに脱がされたってことになる。
そして、誰かが現在進行形であたしの背中を触ってる。これは致命的にまずい。家族っていうわずかな可能性に賭けたいけど——それはそれでキモいけど——こんなことをする家族はいない。つまり、あたしの部屋に不審者がいるってことだ。
その目的は……考えたくないし、考えるまでもない。女子高生の部屋に無断侵入するやつの目的なんて、ひとつしかないじゃん!
うぅー。こんな初めてなんて嫌だよぉー。あれ? そうだっけ? ……そうだよ! 初めてだよ! っていうか、初めてじゃなくても嫌だよ!
そんなことを考えているうちに、肩甲骨付近を撫で回していた手が少しずつ下の方へ移動し始めた。
ひぃー、どうしよう。心臓がバクバク鳴っている。
——手が下の方へ下りていく。
助けを呼ぶ? 抵抗する? 逃げる? でも、下手したら殺されちゃう?
——手が下の方へ下りていく。
うぅ、しょうがない。終わるまで我慢しよう。命の方が大事だし。
——手が敏感な部分へ近づいていく。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!」
いや、足の裏とか無理だから! むしろ、太ももとかよく我慢したよ! いや、そんなことより、起きてることがばれちゃった! どうしよう!
「お? 起きたか?」
パニックになりかけたところで、耳にハスキーな声が飛び込んできた。ん? さりげなく枕でヨダレを拭ってから、恐る恐る振り返ってみる。
——よかった! 相手は男じゃなくて、髪を短く刈り込んだボーイッシュなお姉さんだった。それに、よく見たらここはあたしの部屋じゃなかった。
……あれ? 状況、あんまり好転してなくない?
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