第112話 お花見

久しぶりの早起き。

今日のお花見のご飯を作るためだ。


結構コルことにしたのだ。


はぁ…寝む。寝よかな。


「はーダメダメ」


眠気を払って台所に立つ。


下拵えは昨日の夜にやっておいた。


料理は重箱にいれることにした。


量が量だから大変だな。


「おはよ」


あれ?起こしちゃった。


「まだ、寝てていいよ?」


「んーん。目覚めちゃった。いい匂いするし」


それはすまん。


「なんか手伝う」


「じゃあ、味見と盛り付けお願い」


「ん!」


これならさやでもできるだろう。


「一品目、おにぎらず」


なんか流行ってるらしい。

いろんな食べ物をご飯で挟む。


「お次はおにぎり棒」


ご飯をお肉で巻いたもの。普通にうまい。


「キッシュ」


野菜やら何やらとパイ生地で焼いた。

いい香りがする。


「サンドウィッチ」


王道な奴。いろんな奴を挟む。


「チャーシュー」


冷めても美味しい。ネギを添えて。


大まかにはこんな感じ、他にもちょこちょこ入ってる。

ミニトマトとか、そーゆーの。


「どうだった?」


「お腹いっぱい」


味見だけで結構な量になってしまった。

それにしても、結構盛り付けがうまい。

料理ごとに固めながら箱が一色にならないようにいろんな色が盛り付けられて、見てて美味しそう。


「いいね」


盛り付けが終わったら重箱の蓋をする。


思ったより時間がかかった。


「さてと、準備して行きますか」


「ん」


さやも一度家に帰り着替えてから戻ってきた。


「いいね」


春っぽい。薄手でのカーディガンに白いロングプリーツスカート。薄いヒラヒラしたスカートだ。


「いこっか」


お弁当箱を持って家を出る。

ちなみに、飲み物とかお菓子とかは花音たちが買ってきてくれる。


マンションの前に出ると一台の車が止まっている。


「おはようございます」


「おはよ、なんか久しぶりじゃない?」


「そーですね」


車の持ち主ことしずくさん。今日も大人の魅力を放っている。


ちなみにだが、お花見には参加しない。

今日もお仕事だそうで。


「乗って乗って、花音ちゃんたちも拾うんだよね」


「はい」


今日は前乗った4人乗りではなく、最大8人乗りの大型車。


「それじゃあしゅっぱーつ」


力強いエンジンの音ともに動き出す。



「いたいた」


花音は家ではなくてスーパーに迎えに行く。


スーパーの前で、サングラスをかけてクーラーボックスを持った花音が立っていた。


「何だあのカッコ」


「大人っぽい」


服とクーラーボックスの組み合わせが似合わなすぎて笑える。


車を歩道に寄せて止める。


俺は車から降りてクーラーボックスを車に乗せる。


「おはよ。優は?寝坊?」


「先言ってる。買い物めんどいって言ったから朝から場所取り」


なかなか鬼畜。


花音を乗せて車が走り出す。


「ちなみに何時から?」


「家でたのは8時くらいじゃない?」


すでに3時間は経過してる。


「着いたよー」


「「「ありがとうございまーす」」」


荷物を車から下ろす。


「うー私も行きたかったー!」


あなた、きたら絶対お酒飲むでしょ。

車どーすんの。


「はいこれ」


雫さんように作っておいたお弁当を渡す。


「あまりものですけど」


「おおお!さすが周くん気が聞くねぇ!飛行機の中で食べるよー」


この後飛行機か…大変だな


雫さんを見送ってから優の元へ向かう。


「あれか?」


「だね」


レジャーシートの上で死んだ目をしている。男が1人。


「よ」


「…あ、ついに幻覚が見えてきやがった」


重症じゃねーか。


「遅れてごめんね」


花音が優の頭をポンポンと撫でる。


おぉ。目に正気が戻ってきた。


「おーせーーよーー」


お前が早いんだ。


俺らは時間通りに来てますから。


「早く食べよーぜー」


早めに場所をとってくれたおかげで満開の桜の木のした。

なかなかいい場所をとってくれる。


「飲み物何がいい?」


花音がクーラーボックスを開けてみんなに聞いてる。


「任せる」


「ん」


「お!任せときなさい!」


なんか楽しそう。

何でも魔法瓶のコップを持ってきたらしく。缶のジュースをコップに入れてる。


花音からコップを受け取る。


「乾杯ー!」


コップの中身を流し込む。


美味しい。桃系のサイダーかな。


「おー!重箱に入ってんのか!すげー!」


さっきとは打って変わって優のテンションが高い。


「ん。盛り付けと味付け頑張った」


さやも少し頬が上気してる。


なんかポカポカする。


お花見ってのも意外といいもんだ。


「どう?」


ご飯の感想を聞いてみる。


「うめー!このチャーシューめっちゃうめえ!」


喜んでもらって幸い。


さっきから花音はみんなのコップに飲み物と注いでる。

なんか珍しい。


「花音食べないの?」


「えへえ?食べう食べう」


あ?


「食べさせてー」


迫ってくる花音を優に押し付けクーラーボックスを確認する。


ほろ⚪︎い…


「何でお酒買ってんだよ」


「えへへ、この格好ならお酒買えるかなーって」


だから妙に大人っぽい格好に化粧してたのか。


んで弱すぎだろ。


「さやは大丈夫?」


「ん」


あれ、意外と大丈夫だった。


「ヒック」


やっぱ大丈夫じゃない。


「優は?」


「これうめーなー」


相変わらずご飯に夢中。

お酒片手に。


ちなみに、花音は優に食べさせてもらってる。


これは優も酔ってるな。

人前でこんなことしないだろうし。


ほら


「あーん」


「んー美味しい!」


「これも食べるか?」


「うん!」


何だこのカオスは。


「んー食べたい」


さやが後ろから抱きついてきて肩に顔を乗せる。


赤く染まった顔から確かにアルコールの匂いがしなくもない。


「食べてていいよ」


「やーだ。食べさせて」


お前もか。


「はい」


お箸で料理をとってさやの口元に持っていく。


「スゥー」


寝るんかい!!


まだほとんど食べてねーけど!


「ゆ…ぅ」


お前もか。

優はお箸を片手に眠りカノンは起きてるものの、優のほっぺた舐めてる。正気ではない。


「あ、寝た」



しばらくすれば起きるかな。


寝てる奴らを見守りながら料理をつつきちゃっかり花音が買ってきたお酒を飲む。


全部お酒だったから仕方ないね。


強くても5%もないから大丈夫大丈夫。


「それにしても結構美味しいなー」


いいできだ。


桜をつまみにってのはわからないけど、寝てる3人。もとい、さやの寝顔はつまみになる。


「いいねー」


ほっこり暖かい気温にお酒が回って体もポカポカフワフワする。


飲み終わった缶を置いて新しいのを取り出す。


「はぁ、ねむ」


今日いつもより早起きだったしなぁ。


そう思ったら一気に眠気が回ってきた。


「ちょっとだけ寝ようかな」


後ろから体重をかけてくるさやにこっちからも体重をかける。


おやすみ…


めを閉じればすぐに睡魔さんに連れて行かれた。



ーsideさやー


お花見に来た。


花音の持ってきたぽかぽかするジュースを飲んでいるうちに寝てしまったらしい。


「ふぁぁあ」


気がつくともたれかかっていたはずの周が私のお腹に頭を預けて寝ていた。


「あ、さやちゃんおはよー」


花音は先に起きたらしく膝枕している優の顔をいじっている。


「ねーねなんかお酒飲んでからの記憶ないんだけどー花音なにかしてたー?」


「…特に何も」


イチャイチャしてたくらい。ていうか覚えてないんだ。


「そー?ならいいかなー」


傍に置いてあるお酒を勢いよく飲んだ。


「まだ飲むの?」


「余ってるしー」


さっきの酔いも抜けてないから顔も赤いし語尾も伸びてる。


「さやちゃんも飲むー?」


「ん」


「はーい」


嬉しそうに缶を渡してくる。


「んぁ?」


「あ、おはよぉにゃー」


花音が猫なで声で起きた優に声をかける。


「にゃぁ?」


「花音酔ってる」


「なるほど、まだ酔ってんのか。成瀬も酔ってそうだけど」


こっちをジト目で見てくる。


何のことだろうか。


「飲む?」


「俺はいい。普通の水とかないの?」


「んーない」


特に探しもせずに答える。


「いや、探そうよ」


「んーんない」


そんな気がする。


「えー」


「はい」


まだ開けてない缶を渡す。


「ちょっと優聞いてるのー?カチカチじゃーん。公共の場だよー」


「ちょいちょい、花音さんや。俺はこっちだよ」


桜の木に話しけながら撫でてる花音に優が声をかける。


「あー優ぅだぁー」


抱きついてくる花音をあしらいながら重箱に手をつける。


「お、まだ残ってんじゃん」


食べよ。


「ん、おいし」


「さすがだな。冷えててもおいしい」


「もーさやちゃんとばっか話してー」


「だからそれ木。俺こっち」


「あー優ぅだぁー」


また、言ってる。


「この人は起きないしー」


周のほっぺたをグリグリする。


「んー」


あ…


「んぅ」


寝た。


「むぅ」


「っと」


唐突に周の目が覚めた。


「おはよ」


「ん」


「みんな起きたか」


「お前が一番最後だけどな」


優が的確なツッコミを入れる。


「って、俺の分残ってねーじゃん」


「んーちょっとあるよ。ほら」


お弁当の中にほんの少し残ったのを指差して言った。


「いや、これは残ってないっての」


「んー優ぅー」


完全に酔ってる花音は定期的に優に甘える。


「周」


私も甘えよ。


「ん?さやも酔ってんの?」


「んー」


がぷ


「ちょいちょい、人前だよ?ねえ」


少し焦ったように放っていた上着を隠すために頭にかぶせてくる。


「えへへ」


ちゅー


「あ、そういや今俺の血の中結構アルコール入ってるよ?」


ふぇ?


「だいじょびー」


フワフワ〜


「大丈夫じゃねーだろ」


周が3人になったーわーい。


「周がいっぴゃーい」


「重症だな」


ジュース?


「飲むー」


「もうだめ」


ダメって言われひゃー


ーside周ー


「…帰ろう」


だいぶ日も落ちてきたし。そろそろ頃合いだろう。


「だな」


「えへ、えへへへへ」


なんかさっきから花音が変な状態なってるし。

さやも完全に回ってるし。


「ちゅっちゅ」


「やめい」


止めようとするとさやが涙目になるので頭を撫でるとにへらと笑った。


「はぁ」


唯一の救いはこれ。


雫さんがくれた帰りの駄賃。

タクシーで帰れます。


ありがたいことに優達の分も。


「ちゃんと帰れる?」


優もそこそこ飲んでたと思うんだが。


「住所伝えれば何とかなる。それよりもおばさんに花音のことなんて説明しようか…」


…がんば



ちょうどタクシーが二台きたので優達とは別れる。


「じゃ」


「おう」


別れの挨拶にしては質素な気がするけどそんなもん。


「やーねー」


さやは花音に手を振る。

多分『じゃーねー』って言いたかったんだと思う。


「にゃにゃにゃににゃ」


それに返すように謎言語とともに手を振り返してきた。

…多分。多分だけど『また、明日』だと思う。


はぁ…なんか疲れたよ。







※※※未成年の飲酒は法律で禁止されています!!!※※※







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