第70話 こたつ

うーさむ。


今日も今日とて寒い。


さやは今日友達と遊ぶらしく。

結局お昼過ぎまで布団の中に入っていた。


「さーてとこたつを出そう」


寒くなってきたしそろそろ出そう。

こたつを出すとだらけちゃうから今まで我慢してたけどもう我慢できない。


こたつをだそう。


そんな大仕事ではない。


もともとソファの前に置いてあった低いテーブルをしまってこたつを出す。


「結構おも」


引き摺らないように持ち上げて持っていく。


「ふー終わった」


こたつようの布団をかけて準備おっけい。


ふー待ちきれねえ


最近母さんからみかんが大量に箱で送られてきた。


「こたつといえばこれだよなー」


カゴにみかんを入れてこたつに置いておく。


電源オン!


「まずは待つ」


早く入りたいが中があったまるまで俺は待つ。


「ふーあとちょっと。もう少し待とう」


ウズウズ


「もーそろそろいいかな」


こたつの中に手を突っ込む。


「お、いい感じ。それではいただきます」


こたつの中に体を入れる。


「おおおーーーこれなんだよなー」


冬はずっとここにいたい。


「あったけー」


至福だー


さて、みかんみかん。


うむうむ。甘くてうまい。


「やっぱ冬はこれだよなー」


なんならノーパソ持ってきてここで仕事もできる。


なんてことだ!


ずっと冬でいい。


しばらく温まりながらTVを見てるとさやが震えながら帰ってきた。


「た、ただいま」


「おかえりー」


いつもは、玄関まで迎えにいくのだが生憎とこたつがそれを許さない。


「むーきてくれない」


「わりー。早くこっちこい」


手をはーはーと温めながらきた。


「何それ?」


「こたつ。知らない?」


「ん」


まじか!


「とりあえず入ってみ」


恐る恐るこたつの中に足を入れる。


「ん!あったかーい」


「だろ?」


さっきまでガチガチだったのがふにゃふにゃと溶けて顔を机におく。


「これはダメになる」


「それが欠点だな」


「あと、背中寒い」


んーそれは


「こーすればいいんじゃない?」


さやの後ろに回ってさやを足の間に挟むように座る。


「ん。あったかい」


あ。思ったよりこたつに入れない。


「うー思ったより寒いなこれ」


さやを抱きしめて暖をとる。


「あったかい」


それは君だけ。


しばらくさやを温めてからさっきのポジションへと戻った。


「んーやっぱこっちの方がいい」


「むーこたつに負けた」


これに勝てるのは残念ながらなかなかいないな。


そんなこんなでこたつでぼーっとしてるとチャイムがなった。


「えーでたくねー」


「ん、無理」


ですよねー


体に鞭打ってなんとかこたつから抜け出して玄関にいくとチャイムを鳴らした犯人は優と花音だった。


これは別にでなくてもよかったか。


「ちょっとーいつまでこんな寒いそとで待たせるの!」


「悪かったって」


「うーさみさみ」


2人を家にあげるとそそくさとこたつに戻る。


「もーでたくねー」


「お疲れ様ー」


ウハーあったけぇ!あったけぇよ!


「なるほどね。どこ行くかと思ったらこたつ出したんだ」


「俺もはーいろ」


「あ、ずるい」


優と花音もコタツの中に入ってきた。

「これだよこれー。うちないからなー」


「花音の家ないの?」


「そーそーおばあちゃんの家にはあるんだけどねー」


俺ももともとなかったけどどーしても欲しくて去年これ買った。


「俺は部屋にあるぜ」


「いっつもコタツでぐーたらしてるもんねー」


「それは仕方ない」


うんうん。わかるぞ


「こたつ入ると優構ってくれなくなるからこたつは花音的には敵だなー」


「むぅ」


さやさん。ジト目でこっち見ないで?


この前のタコパで余ってたお菓子を4人で消費しながら時間を潰す。


「あ、これ誰の足ー?」


「俺だ」


当たってたのは花音の足だったか。

そんなにデカくないコタツだから4人で入ると足が当たる。


「あ、じゃあ、こっちはさやちゃんの足?」


「ん」


「く、くすぐったいっての」


「あれ、これ優の足か」


何やってんだよ。


あ、俺の足にも誰かの足が当たってる。


「これは?」


「ん」


さやか


「く、くすぐったい」


面白い反応だな。


「うわーコタツでイチャイチャしてるよー」


「全く、なんなんだこのバカップルは」


…お前らにだけは言われたくねええ


「って、うわ!もうこんな時間じゃん!」


「まじか、帰るか」


結局こいつらうちでお菓子食べにきただけだな。

まあいいんだけども、量が量だから。買ったの2人だし。


「じゃ、俺ら帰るわ」


「じゃーねー」


「おー」


「んー」


こたつの中に手を突っ込んでぬくぬくする。


「玄関まで送りに来いよ」


「こたつがあるから無理」


「ん。同意」


「全く、客への対応がなっとらん」


仕方なしじゃない。こたつだもん。


玄関のドアが開く音が聞こえ、聞こえそうな声で挨拶しとく。


「んーやっぱこたつあると出れないな」


「ん。これは危険」


間違えない。どうしたものか。夕飯を作る気力が出てこない。



こんな時は…出前とったろ。


たまにはいいだろ、ご褒美的なあれ。


弁当をたのむことに。


出前楽だな。


「出前きたらどっちが出るかジャンケンしよーぜ」


「ん、いいよ」



…負けた。だと?


「んーぬくぬく〜」


あー出前の人こなくていいよー

俺出たくなーい。


ピンポーン。


優秀だこと、こんなすぐくるんかい。


出前を受け取りこたつで食べる。


「お腹いっぱーい」


ウトウトし始めたさやを起こす。


「寝るなら自分の家戻れな」


「こたつで寝たい」


「だーめ」


こたつで寝ると風邪ひくからな


「むーじゃあ帰る」


目を擦りながらそう呟いた。


「送るよ」


決死の覚悟でこたつから体を出して玄関までさやを送る。


優と花音の時は送らなかったって?

さやだからね。


うっわさっむ


「じゃ、おやすみ」


「ああ、風邪ひかないようにな」


「ん。お風呂できてる」


それはいい。


俺もお風呂入ろ。


冬のお風呂は湯船につかる時の指先と足先がビリビリする。

これなると冬を余計に実感する気がする。


しばらく温まってからお風呂を出ると携帯が鳴っていた。


誰だろ?


…マネージャーさん


ヤッベ、そういえばここ最近全く仕事してない。

一応契約上は出来高制だからやらなくてもいいんだけどそうもいかない。


まずいな…


「も、もしもし?」


『あらあら、随分と余裕な感じね?』


「い、いえそんなことは…」


怒ってるのが伝わってくる。


『それで?なんで仕事しないの?』


さやと遊んでました。なんていえない。


「えっとー学校が忙しいかなーなんて」


『高坂くんは学生だから勉強一番だとは思うけど才能かってあげてんだからちゃんと仕事もしてー』


いや、ほんとすいません。


『ちなみに仕事はできそう』


「ええ、明日にでも」


ガチャ


扉が開いてお風呂上がりのさやが出てきた。


何やってんだー!


何?スマホを?忘れたから?取りにきた。

なるほど。なるはやで!


手で指示する。


「んーないなー」


どこ置いたかくらい覚えとよ!


『じゃあ、明日ちょっと面談しよっか』


…え?怖すぎるんですけど


「な、なんでですか?」


『さっきから聞こえてくる女の子のことでも聞こうかなって』


バレてーら


『場所は送っとくから』


「あ、はい」


どうやら拒否権はないらしい。


『じゃ、明日楽しみにしてるわ。じゃーね』


「失礼します。おやすみなさい」


マネージャーさん。いい人なんだけどめっちゃキャリアウーマンだから苦手。

周りに仕事してる女の人いないのも原因。


雫さんはちょっと別枠。


はぁ。気が重いぜ…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る