第44話 文化祭①

9時から始まる文化祭に備えて、お店の制服に着替え料理の用意をする。

食べ物のお店だから最初は人はあんまりこないだろうけど

緊張してくる。


「よし!みんな文化祭がんば流ぞ!」


「「「おー!」」」


放送が流れ文化祭のスタートを宣言した。

優と花音は客引きに見た目も良いので効果はあるはずだ。

とは言っても、まだ9時。朝ごはん食べた後の人が多く全然人はこない。


「人、こないな」


「ん。こない」


無駄に緊張したな。

しばらくすると他校のJKの2人組がやってきた。


「わたし行く」


「りょーかい」


さやが対応してくれるらしい


「いらっしゃいませ」


「え、まって店員さん。めっちゃかわいいんだけど」


「ほんとだ!人いないから来たけど当たりだったね」


人いないとか言うなよー


「お二人様ですか?」


「うん!そーだよー」


「こちらへどーぞー」


さやがテーブルへと案内する

その後ろを2人組がキャッキャしながら付いていく。


2人組は、単品料理と飲み物。一番利益率の高い注文をした来た。


ありがたやーありがたやー


頼まれた料理を俺が運んでいく。


「あーさっきのかわいい店員さんじゃないのかー」


「まじかー」


すみませんねぇ?さやじゃなくてよぉお!


「すごくないこの料理。めっちゃインスタ映えじゃん!」


「店員さーん。インスタ載せても良いですかー?」


気軽に聞いてくるなぁ


「大丈夫ですよ」


「さっきのかわいい店員さんと一緒に撮りたいんだけどー」


注文が多いな!


「本人に確認してきます」


丁寧に応対する。


一旦厨房に戻り今あったことをさやに説明する。


「どする?」


「やる。宣伝になるし」


大丈夫かな


さやは、2人のもとに向かうとパシャパシャと写真を撮られている。

最近のJK怖いな。めっちゃ写真撮ってんな。


ぐったりと疲れて帰ってきた。


「大丈夫?」


「ん。疲れただけ」


さやに飲み物を渡して店員は俺がやることにした。


しばらくは人数が少なかったもののお昼に近づくにつれてお客さんの数も

増えていき

今は満席の大盛況。外でまってる人もいる。


流石に人手が足りないので花音と優を客引きからこっちに戻す。

ラッシュ時はクラス全員フル稼働でなんとかやり切る。


「つ、疲れた」


「ああ、やべえな」


今は、お昼の時間も過ぎ、お客さんはくるもののさっきほどでもない。


「おつかれさま!午前組は上がって良いよ!」


俺らのシフトは終わった。


とは言っても、俺とさやはこの後にミスコンとミスターコンが

控えているので気が抜けない。



ミスコン、ミスターコンは体育館で行われるので準備のために向かう。


「あ、先準備しちゃうか」


「ん。まってる」


準備とは言っても洗面所でコンタクトをつけて髪を少しいじるだけ


鏡を見る。


…相変わらず目つき悪いな


「おかえり」


「おう、どーかな?」


「制服バージョン見るのは初めてかも」


そう言えばそーかもしれない


ちょうどそこに追いかけてきていたのか花音と優がきた。


「お、もう準備終わってたんだね」


「いーんじゃねーの?ガンバー」


テキトーだな


「えーダメだよ。目つき悪いからもっと制服こうやって着崩して…」


花音の指導の元色々制服をいじる。


「オッケーオッケー」


「おー結構変わるもんだな」


「ん。かっこいい」


そーかね?そんなに変えたわけじゃないんだけど


「バシッと決めてこいよ。成瀬の隣に他の男立たせんなよ」


優に叩かれる。


「やれるだけはやるよ」


気持ちを入れ直す。


「じゃ、花音たちは観客席の方で見てるからー。あ、あと言い忘れてたけど

周の名前Mr Xで登録してあるからね!」


「じゃーなー2人とも頑張れよー」


「おい!花音!」


呼んだものの時すでに遅し。そそくさと逃げていった。


いや、Mr Xってなんだよ。まじでふざけんなよ


はぁ


ため息がもれる


「早くいこ…Mr Xさん?」


「やめろ」


「ふふ、面白い」


こっちとしては面白くないんだよなぁ


さやと2人体育館に向かう


すんごい視線を集めてる。


特に喋りかけられたりはしなかったものの

めちゃくちゃ見られた。これはなかなかきついな


体育館に入ると係の人に声をかける。


「ミスコン、ミスターコンの出場者はどこに行けば良い?」


「わ!びっくりしたー!ってめっちゃイケメン!うちの学校にこんな人いたっけ?一年生?」


「いや、2年だけど」


「えぇ〜!同学年じゃん!誰!?誰!?」


めっちゃくるな、おい


「それよりもどこ行けばいいか教えてくれない?」


「あ、ごめんごめん。こっちこっち」


係の子に連れられて舞台袖の方に行く。


「ここで待ってて」


「了解。ありがとね」


「ん。ありがと」


「あの!わたしあなたに票入れる!頑張ってね!」


なんか応援してくれるらしい。


「ありがと。頑張るよ」


「は、はぅ」


顔を赤くしながら戻っていった。


これで票ゼロはないか。よかったよかった。


「むー」


さやが横でほっぺたを膨らませてる。


「どした?」


「別にー」


なんだかな


しばらくそこで待ってると

他の出場者もやってきた。


今回のミスターコン優勝候補の池面王子。

去年の優勝者でもあり、学校の王子様的。


ちなみにだが、ミスコン優勝者はさやだ。二位と大差をつけた圧勝だったそう。


俺は興味もなかったので見に行ってなかった。


その、池面先輩は余裕な雰囲気で椅子に座って始まるのを待っている。


男子は俺と池面先輩を抜いて2人。

どちらも二年生だが俺は関わったことのない人だった。


女子はさやを抜いて3人。みんな2位を狙って頑張ってるらしい。

なんか悲しいな!


「そろそろ始まるので準備お願いしますねー」


司会をやる女子が顔を出してきた。


順番はミスコンやってミスターコンやって投票やって表彰みたいな流れ。


そのミスコンが始まるらしい。


「頑張ってな」


「ん。頑張ってくる」


さやを見送り俺は舞台袖から見守る。


「今年もミスミスターコンの時間でございます!みんな盛り上がってるかー!」


観客席からは歓声が聞こえてくる。

こんなに盛り上がるものなのか


「今年はなんと前回優勝者がどちらも参加してると言うことで他の出場者が下克上できるかが気になるところですねー。さっきメンツを見てきたんですけど今回はミスターコンにわたしの好みの人がいましてですねー」


いや、どゆことやねん。誰なんだろーか



「おっと、そんな話をしてる場合じゃありませんね。ミスターコンスタートです!」


ひとりひとり自己紹介や一言を述べて行く

3人分が終わり残りはさや


「そして最後は前回優勝者成瀬さや!」


さやが舞台の中心へと歩いて行く


「成瀬さやです」


「うーんやっぱいつ見てもかわいいですよねーほんと天使です!一言お願いしまーす」


少しの静寂が流れた


「…ばか」


たったその一言だけで男子は落ちた。間違えなく。


「な、なんとたった1単語で男子共を落としてしまったぁ!恐るべき成瀬さや!」


ほんと恐ろしいよ。

これでまた人気増えると俺が困るんだよなぁ。



ミスコンが終わりさやが戻ってきた。


「さっきのセリフなんであれにした?」


「花音が行ってほしーって」


あいつか


ミスターコンが始まるアナウンスが流れる。


「ささ、ミスターコンの始まりです。ミス同様去年の優勝者が参戦しており今回はなぞの男も出場してますしね。期待大です!」


謎の男絶対俺なんだよな


「さてさて〜1人目です、前回優勝者。池面王子!いやー本当に美形というか王子様ーって感じですよねー。さあ自己紹介をお願いしまーす」


舞台に立ちスポットライトを浴びる池面先輩は長い金色の髪をサラッと流す。


「池面王子だ。ハニー達、僕以外のやつにも票を入れてあげてくれ。僕が出場してるのに勇気を出して出てきたのに僕が全ての票を取ったらかわいそうだろう?まあ、僕に入れたくなる気持ちはわかるけどね」


この男、女子からの人気は高いが男子からは結構嫌われている。

見ての通り性格に難ありだ。


観客席からは女子達の黄色い声援が聞こえてくる。

池面は余裕の笑みで手を振っている。


ちなみに俺もあんまに好きじゃない。というか嫌い。


その後も2人自己紹介と一言が行われるも反応はなんとも

言えなかった。


1人はしっかりとやったものの前が池面だったのもあり反応はイマイチ

もう1人はネタ枠なのか一発芸をかますも完全にスベってた。

少しかわいそうになるくらいに。


「さて次は今日の目玉と言っても良いでしょう!私のお気に入り!完全に一目惚れしました。名前、学年共に未詳!Mr X!」


うん。すんごく恥ずかしい。その名前

あと、何一目惚れって?まじでやめて?うちの嫁さん怒らすと怖いよ?


少し顔を引きつらせながら舞台へとでる。


眩しいスポットライトと観客席からの背線を全身に感じる。


やばい。めっちゃ緊張すんだけど。


「正直に言います!私はMr Xに票を入れます!」


何を言ってんだ!?


「いや、だって見てくださいよ。あんなのに睨まれたら私溶けちゃいましゅよー」


どゆこと?まじやべーな


「お願いです!『お前は俺の奴隷だ』って強めに行ってください」


何これ今までこーゆーのなかったじゃん。

自己紹介と一言で終わるんじゃないの?


しかも完全にやる流れになってるな。


はぁ


マイクに顔を近づける。


「お前は俺の奴隷だ」


お望みどおり、高圧的に言ってみる。


どーだ?言ったぞ?これでいいんだろ!!


もうやけくそ状態だ。


「はぅぅ。Mr Xさん私と付き合ってください」


はぁ!?


「無理」


「厳しくされるのも悪くないですねぇ」


なんか新しい扉開けちゃったみたい。


「あ、いった!!あ…はい。はい。ごめんなさい。やります。ちゃんと続きやりますから」


どうやら誰かに怒られてるっぽい。

自業自得ですね


結局俺の時間は終わりろくに自己紹介もせずに投票タイムへと移った。


ひどくない?


「周よかった」


「あれでいいのか?だいぶ酷かったと思うんだが」


「そんなこともない」


出場者も票を入れることができるので投票しに行く。

ちなみに投票はミスコンかミスターコンのどちらか片方のみにしか投票できない。


だからミスターコンには女子がミスコンには男子が投票する形になってる。

もちろん例外もあるが。


開票が終わった。


まずはミスコンからの発表だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る