護りたいもの
結城彼方
護りたいもの
ある日、銃砲店でいつものようにテレビを見ながら店主が客を待っていると、見知らぬ男性客が店にやってきた。店主が男に言った。
「いらっしゃいお兄さん。どんな銃をお探しで。」
店主の問いかけに対し、男は少し迷惑そうにして答えた。
「自分で選ぶからいいよ。放っておいてくれ。」
ぶっきらぼうな態度をとる男に対して店主が言った。
「そりゃ悪かったね。俺は客の欲しい銃を当てるのが趣味だから、ついつい話しかけちまった。」
その言葉に男は興味を惹かれ、店主に聞いた。
「どういうことだ?」
店主がニヤリと笑みを浮かべて答えた。
「俺は長い間この商売をやってる。すると、次第に客が何の目的で銃を買いに来たのか目を見れば解るようになったのさ。殺人、脅し、自殺、護身、狩り・・・色々ね。」
店主の話を聞いて、男は店主に問いかけた。
「それなら俺の目には何が見える?何を目的に銃を買いに来たと思う?」
店主は男の目をじっと見つめ、そして答えた。
「そうさなぁ・・・目的がハッキリした目をしている。それでいて興奮も動揺もしてないし冷静だ・・・何か護りたいものがあるんだろ?となると、欲しいのは護身用の銃って事になるな。」
店主の返事を聞いて、男は少し驚いた様子を見せた。そしてしばらく沈黙した後に答えた。
「・・・・まぁ、そんなところかな。」
男の言葉を聞いて、店主は得意げな顔をしていた。
「それでどの銃にする?護身用なら片手で撃てて、携帯しやすいものが良いだろう。」
店主が言うと、男は店の壁に掛けられていた大型の狙撃銃を指差していった。
「アレがいい。」
店主が困惑した表情で言う。
「おいおい。あの銃は護身には向いてないよ。」
店主が男を説得しようと他の銃を勧めるが、男は頑として譲らなかった。とうとう店主は根負けして、その銃を売る事にした。男は銃を購入し、店主に礼を言うと店を去って行った。
次の日、店主はいつものようにテレビを見ながら客を待っていた。すると、とんでもないニュースが流れた。
“大統領暗殺される”
店主がその訃報に目を丸くしていると、犯人の男の顔写真が表示された。驚いたことにその写真の男は、昨日、店で狙撃銃を買っていった男だった。ニュースではその男が過激派極右政治団体のメンバーである事が伝えられ、店主は彼が護りたかったものを知ることとなった。
護りたいもの 結城彼方 @yukikanata001
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