用語解説(勢力)

鴉天狗からすてんぐ

 殺処分の対象となっている侵蝕人を保護する組織。鵺丸が侵蝕人の遺族を保護したことに始まり、彼を慕う者たちが集まってできた。しかし侵蝕の治療法が見つからないまま侵蝕人が増えていき、深刻な人手不足となる。さらに、同じく侵蝕人を集める妖派と対立。月光を雇うことで、人手不足と妖派に備えるが、鴉天狗内部では幕府と妖派への不満が高まる一方だった。やがて鵺丸の妖派駐屯地襲撃をきっかけに、幕府から追われ、越後に亡命した。鵺丸をはじめ、五人の元殲鬼隊員がいる他、妖刀も大量に保有している。

月光げっこう

 十六夜を頭領とする忍衆。鴉天狗と契約を結び、侵蝕人の監視と間引き、妖派対策の役目を担っていた。元々は将軍家に仕えていた隠密である。目の色で侵蝕度を測る、ひそひそ話まで聞き取る聴力など、人の域を超えた技能を持つ者も少なくない。鵺丸の指示を待たずに行動を起こすこともあり、完璧に近い働きぶりから、鴉天狗内でも一部では不気味がられている。

羽貫衆はぬきしゅう

 武蔵国で活動する傭兵。国士館の跡地に居を構え、頭領の柳斎と栄作、太郎次郎が常駐している。戦がない時は、主に笹暮の要請で、河越周辺の治安を守る役目も担う。妖派脱走後の影狼と來も所属。

舶来品店米蘭はくらいひんてんめらん

 ヒュウが経営する、幕府御用達の舶来品店。商都河越随一の知名度を誇る。東国同盟はメラン諸島以外に国交がないため、唯一のメラン商人であるヒュウの一家はほぼ敵なしである。珍しい物見たさでやって来た人が、ついでに雑貨を買っていくことが多い。


【幕府勢力】

東国同盟とうごくどうめい

 上野国大名――近藤隆介を盟主とする同盟。幕府滅亡後の幕臣が集まったものであり、現在は十一国が加盟している。そのため改まって東国十一国同盟と呼ぶ場合もある。もっとも、庶民の間では未だに幕府の滅亡を知らない者が多いため、東国同盟の名はさほど浸透していない。

妖派あやかしは

 柘榴を主将とし、妖の力の軍事利用を進める一派。ほとんどが柘榴の父竜眼の遺臣と、来方家の家臣で構成されている。宝永二十四年に人為侵蝕の実用化に成功し、妖の力を持つ兵――奇兵が誕生した。その成功に酔ってか、近年では横柄な態度が目立ち、鴉天狗はじめ多くの者から反感を買っている。

奇兵きへい

 人為侵蝕により妖の力を得た兵。多くは身体能力の強化に留まっているが、身一つで妖術を使う者もいる。特に力のある者には、妖刀が与えられることもある。総勢千五百人。人為侵蝕の過程で命を落とす者も多く、奇兵になれたとしても、いずれ侵蝕が進行すれば統制が取れなくなるため、兵としての寿命は短い。ただ、伊織のように最古参で生き残っている者もいる。

幕府四天王ばくふしてんのう

 東国同盟で特に優れた人物、松平兼定、高見遊山、柘榴、笹暮友晴の四人を指す。盟主近藤が選んだものと思われる。

甲信両鬼兵こうしんりょうきへい

 甲斐の奇兵と信濃の騎兵のこと。この二つが東国同盟の戦力の核となっている。


【朝廷勢力】

皇国こうこく

 日ノ本の皇帝を君主とする国。大隈与一郎が建国し、西側の大半を支配下に納めている。界港の様子からして、多くの国と国交を結んでいるようだ。特にプロセイン王国からは手厚い軍事支援を受けている。大名の存在は確認できず、中央集権体制が取られているものと思われる。

皇国陸軍こうこくりくぐん

 海八の軍制改革により誕生した戦列歩兵部隊。民兵を主体としている。プロセインから直接指南を受け、次世代の皇国の主力として期待されたが、伽羅倶利峠の戦いで壊滅した。

・プロセイン王国おうこく

 西洋の軍事大国。皇国の日ノ本統一を支援しており、様々な優遇も受けいているという。近年は戦場に姿を現すこともなく、その実力は未知数。目的については長いこと謎に包まれていたが、第一部最終話では、宝永山一帯の割譲を望んでいることが明らかとなった。また、プロセイン王国の背後にも、さらになにか大きな存在が絡んでいるようだ。


【独立勢力】

吉良家きらけ

 越後国を支配する大名家。家臣からの信頼が厚い義秋が当主だったが、鴉天狗亡命後間もなく死去。養子の義弘と義氏が後継者の座を巡って争うこととなった。現在は義弘が善見山城を押さえ、正式な後継者となっている。

九鬼家くきけ

 志摩国を支配していた大名家。戦国時代での活躍から、海賊大名として知られていた。朝廷が挙兵した際に滅ぼされるが、殺された当主の息子である影虎が、駿河国で新たな勢力を築いた。影虎は影狼の実の父でもある。高見曰く、取るに足らぬ弱小勢力。


【その他】

日ノ本ひのもと

 大陸の東に位置する島国。大陸側諸国の影響を受けながら、独自の文化を育んできた。宝永山の大噴火に端を発する内乱の真っ只中にあり、世界がその動静を注視している。

松平幕府まつだいらばくふ

 百五十年にもわたる戦国時代に終止符を打った松平家が開いた幕府。日ノ本に百年の平和をもたらしたが、宝永山の大噴火以降、急速に求心力が衰えていった。宝永二十年に朝廷が挙兵し、その翌年に将軍及び幕府要人が暗殺され、滅亡した。

殲鬼隊せんきたい

 宝永大噴火で大量発生した妖怪を駆逐するべく、日ノ本の猛者が結集してできた戦闘部隊。三大隊に分かれており、隊員は総勢二百名前後。例外はあるが、各国から三人ずつ選出された。妖怪が数を減らすと、遠方の者から優先的に引退。宝永二十年の朝廷挙兵により急遽解散するが、この隊に参じた者が後に大きな権力を握ることとなった。隊の構成は勢力の項目を参照。

・エゲレス王国おうこく

 プロセイン王国に並ぶ西洋の大国。日ノ本の内戦には関与していないが、メラン諸島の宗主国であるため、間接的に東国同盟を支援しているとも言える。

・メラン諸島しょとう

 日ノ本の南にある島国。正式にはエゲレス領メラン諸島。東国同盟が唯一国交を結んでいる国だが、日ノ本で活動しているのはヒューゴ父子のみである。

蒙句麗もうぐり

 かつて大陸内部に存在した超大国。日ノ本に攻め寄せたこともあり、その時の残忍な振る舞いは、日ノ本の人々に異国に侵略されることの恐ろしさを教えた。結局、嵐で蒙句麗の船団が壊滅して日ノ本は救われた。

国士館こくしかん

 竜眼が、次代の殲鬼隊員の育成を目的として開いた剣術道場。羽貫衆のメンバーの他、笹暮も所属していた。妖怪に勝つことに重きを置いており、決まった型はない。竜眼が死んだことで閉鎖となるが、その後門下生たちが資金を出し合って跡地を購入。現在の羽貫衆の屋敷となった。

宝永三大妖怪ほうえいさんだいようかい

 殲鬼隊時代に現れた妖怪の中で、最も強いとされた三体の妖怪。判明しているのは、越後に出没した酒吞童子と、竜眼が退治した覇蛇の二体。

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