20 マミ ヴィクトル・マクガイヤーと会う (1)
***
ふと、皇帝の言葉に、マミが心持ち身を震わせる。「…マリン、
君の御父上、ヴィクトルさんは1年前から体調不良なんだよな…!?」
マリンが、面差しに陰を過らせつつ、「…うん…、まるで原因が
解らなくて…、本当なら今回の和平交渉もヴィクトルパパが来るべき
だったんだけどどうしようもなくてわたしが代理に…」
マミが、厳しい瞳で、「…その体調不良、カオスの影響って可能性は
無いのか…!!?」
マリンが、その場の一同が、愕然として、
マリンが、面差しを蒼ざめさせながら、「…確かに、あれだけ鍛えてるパパが
体調不良ってその可能性が一番…、対立悪化の切っ掛けになった
ファルクリスタ鉱脈発見とタイミングが一緒だし…!!!!」と、
言葉を震わせ、
竜族執政官が、「いかん!!!!、
総帥を起点にマクガイヤー・コンツェルン全体に洗脳波動が伝播したら、
折角の開戦回避が台無しに…!!!!」と。
「こりゃいかん!!!!」思わずマミが、その場にいる全員を巻き込んで
転移魔術の虹色の光の柱を発動させる。
わずかに朝日が射しつつある晴れた空の下、
豪奢ではなく落ち着いた雰囲気の巨大な白亜の洋館、
マクガイヤー・コンツェルン総帥ヴィクトル・マクガイヤーの邸宅の
玄関前に、マミ達一同がいきなり転移魔術で現れる。
「!!!!っ、何者だ!!!?」と、護衛の黒服の男達が、
魔法科学で製造された光弾を発射するタイプのアサルトライフルの銃口を、
マミ達に向ける。
咄嗟にマリンが、「驚かせたのは悪いけど!!、緊急事態なの!!!っ、
こちらの方は神界の勇者様よ!!!、御無礼の無い様に!!!」と、叫ぶ。
「!!!!っ、お嬢様!!!!?っ、失礼致しました!!!!」と、
男達があわてて片膝を突き、
マミが、(…何かもうこういうのパターンになってきてるなー…)と、
そういう場合ではないのだが、内心少しぼやき気味に。
「とにかく急ぐから!!!!」と、マリンが、全速で邸宅内に駆け込み、
マミ達もあわててその後を追う。
総帥ヴィクトルの寝室前で、メイドの美少女がマリンの姿に気付いて、
「あ!!、お嬢様!!!、良かった、良い所に…」と言い掛けるのを、
「悪いけど話は後!!!!、緊急事態!!!!」と、強引に振り切りつつ、
マリンが寝室に駆け込み、マミ達7名も後に続き、
愕然とする。
「おお、マリン、戻ったのか。」と、腰掛けていたベッドから
立ち上がったのは、落ち着いた印象の高級スーツのズボンを身に付け、
上半身は素肌を晒している、身長2メートルを超す偉丈夫である。
隆々と筋肉が盛り上がった印象ではない、鍛え抜かれ研ぎ澄まされた
細身気味の強靭な肉体美を誇り、脚線が長く、面差しは堂々として美しい。
肌の色艶が良く、異様に元気そうだ。
周囲にはわずかに黒紫の波動光粒子が、舞っている。
「パパあ!!!!?」思わず、茫然と、素っ頓狂な声を上げるマリンに、
「どうやら混沌波動の拠点が消滅したらしいな。私も今気が付いたが、
何時の間にか私の体内に居た混沌が…、」と、偉丈夫が、
ヴィクトル・マクガイヤーがほのかに身を震わせて気合を入れると、
少し、黒紫の光粒子が散って、完全に消え去り、「…拠点を失って
急速に弱まり、私の闘気波動でも吹き飛ばせた様だ。」と、
ヴィクトルが悠然と微笑む。
一同、何やら茫然と。
「…そんな…、結構強い混沌の痕跡感じるのに…、…わたし達三重波動で
やっと対応したのに…、…さっきまで病人だったはずなのに……」と、
マリンが、呆然とし続けている。
竜族の皇帝が、「…只の闘気波動ではない…。…神界波動に相通ずるものを
感じる…。…成程、これが、マクガイヤー・コンツェルン総帥にして
格闘界の神の異名を誇る、ヴィクトル・マクガイヤー……」と、思わず
鋭い眼差しで。
ヴィクトルが、思わず不敵に微笑み、「…これはこれは、竜族の皇帝陛下に
執政官閣下、公王息女殿下にストリンガル家御令嬢、闇の死告天使に
魔術界の新星、そして…、」と、マミに握手の右手を差し出す。「…神界の
勇者殿、ですか。…あなた方に助けて頂いた様ですな。感謝します。」
「あ、いや、そんな、」思わず、いささかはにかみ気味に、マミが、
恐ろしい力が込められているヴィクトルの手と、
何気無く握手する。「…フレナとミーユに殺し合いをさせたくなかった、
ただそれだけ、でして。殊更感謝して頂く様な事じゃ…」
「…ただそれだけ…、ですか?」ふと、妙に面白がっている表情で、
ヴィクトルが微笑み、
竜族の皇帝が、何やら愉快そうに、「…本当にただそれだけでこの世界を
救って仕舞われた様ですわ、この方は。」と、少し深く、微笑む。
「…ええ、まあ…」マミが、どんな顔をして良いやら見当が付かず、
困り気味に、微笑む。
竜族執政官が、「何にしても良かった!。これで洗脳波動の拠点が
無くなった!。安心して和平会談が出来る!。ヴィクトル総帥にも
列席して頂けますな!」と、快活な笑みで。
ヴィクトルが、少し厳しい眼差しで、「マリン、鉱脈共同開発の諸条件は
摺り合わせが済んでいるんだな?」と、訊ね、マリンが、魔法科学で
作られたモバイルタブレットを異次元収納モードから実体化モードに
切り替えて取り出し、「…基本合意は完了。…後は、事業を進めながらでも
微調整していくぐらい、かな。」と、ヴィクトルに画面の内容を見せる。
「…ふむ、ここまでは押さえたか…。」と、画面を見据え、「…上出来だ、
マリン。」と、ヴィクトルが微笑み、
「…わたしの手柄っていうより、皇帝陛下と執政官閣下が話の解る方で
助かった、って感じかな。」と、マリンが少し謙虚に微笑む。
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