16 マミ カオスドラゴンと戦う (2)

 

 

 

***

 

 

 「…どういう再生能力だよ、これは…!!?」マミが、

奪ったはずのカオスドラゴンの右腕の完全再生に、

流石に厳しい眼差しになる。

 

 膨大に流入し続ける黒紫の混沌波動が、カオスドラゴンの巨体にも

カオスグリフォンの群れにも注ぎ込まれ続けている。

 

 「…勇者のあの一撃が、効果無し…!?」と、表情は冷静なままで、

眼差しの鋭さを増した一糸纏わぬクレイアが、咄嗟に、

フィリスの妖精波動を帯びた鋭過ぎる鞭の様な蹴りで、1体のグリフォンの

獅子の首を斬り飛ばすが、一瞬で首が再接続され再生されてしまう。

「…さらに強化されてる…!」クレイアが、得心した様に淡々と。

 

 「クレイアちゃんもう一撃!!!」フレナの叫びに即座に応えて、

一瞬で、クレイアが蒼黒の暗黒波動を凝集した光の杭を発生させて

グリフォンの胸板に撃ち込み、

間髪入れず、フレナが、胸の前で交差させた左右の手に握り締めた

2本の黄金剣を、左右に開く両腕の力を込めて水平にすれ違わせて、

すれ違う2本の刃から黄金に輝く三日月状の光の刃を迸らせ、

グリフォンの胸板に撃ち込んで、

暗黒波動と竜気波動と秘めた妖精波動の三重共鳴が、

グリフォンを水平に斬り裂いて、黒紫の光粒子に砕く。

 

 「…もう、三重波動でないと倒せない……」淡々と呟く棒立ちのクレイアの

背中の白過ぎる柔肌に、異様な力を込めたグリフォンの爪が

捻じ込まれるが、ガッディスジュエルのガッディスフィールドに防がれて

掠り傷も負わせられず揺らがせる事すら出来ない。

 

 「どうしたのクレイアちゃんまともに攻撃受けて…!!!?」思わず

驚愕するフレナに、

「ガッディスジュエルなら大丈夫って言ったの、フレナでしょ?」と、

クレイアがしれっと応えて、思わずフレナが穏やかに苦笑する。

 

 「ミーユちゃん剣仕舞わない!!?っ、剣と拳じゃタイミング

合わせにくいっ!!!」マリンの叫びに、「っ、解りました…!!!」と、

些か唇を噛み締めつつミーユが、神聖魔術で聖銀大剣を非実体化して仕舞う。

 

「ならっ!!!」と、マリンが、闘気波動を背面と脚の背面側から

ジェットの様に迸らせて飛翔しつつ、1体のカオスグリフォンの下方に

回り込み、「ハァアアッ!!!」と、闘気をありったけ込めた

アッパーカットをカオスグリフォンの腹に撃ち込み、

「っ!!!?、ちょっ!!!?」思い切りあわてて呼応したミーユが、

マリンと同じ様にアッパーカットをマリンが撃ち込んだすぐそばに撃ち込み、

突き上げる二つの拳から闘気波動と神聖波動と秘めた妖精波動が迸って、

カオスグリフォンを爆散させる。

 

 「もうっ!!!、いきなりはこっちが合わせにくいですよっ!!!」思わず

ぼやき気味になるミーユに、

「でもちゃんと合わせたじゃん!!、やっぱりミーユちゃん

格闘のセンスもあるよ!!!、格闘家目指さない!!?」と、

無邪気にマリンが微笑み、

「…わたし神聖騎士なんですけど…」思わずぼやくミーユが、 

「!!!!」次の瞬間マリンの背後から襲い掛かる2体のカオスグリフォン

目掛けて飛び掛かり、1体の獅子の爪を横殴りの肘打ちで弾き飛ばし、

もう1体の獅子の顎を薙ぎ払う蹴りで撃ちのめし、

それぞれのカオスグリフォンの全身に神聖波動を伝わせ、反響させて、

「タアッ!!!」瞬時に合わせて、マリンの無造作な正拳突きが1体目の

カオスグリフォンに、撓う槍の様な鋭く突き込む蹴りが2体目に、

間髪入れず撃ち込まれて、闘気波動が迸り、

2体とも黒紫の光粒子に砕ける。

 

 「…やっぱり格闘家やろうよミーユちゃん…!!」のほほんとした

マリンの笑顔に、

「だからそんなのんきな事言ってる場合じゃなくて…!!!」と、

ミーユの方が頭を抱え気味に。

 

 何となく美少女達の方に心配しつつ視線をやり、

取り敢えず無傷で少しずつでもカオスグリフォンを倒していく美少女達に、

取り敢えず安堵するマミに、カオスドラゴンの両翼から迸る、

直径10メートルを超える渦状の黒紫の波動の刃が襲い掛かる。

「!!!っ」咄嗟にマミが、両脚でなめらかに鋭く交互の水平蹴りから

虹色のオーロラを放ち、そのオーロラを鏡面に変化させて、

渦状の黒紫の波動刃をカオスドラゴンの両翼へと反射させ、

両翼を凍結粉砕させてしまう。

 

 「…何だあの冷気…!!!?」マミの瞳が、厳しく、カオスドラゴンを

見据える。(…ただの混沌波動の刃じゃなかった…。確かに三次元に

存在し得る冷気は絶対零度が限界…、だけど、超次元断層で熱運動

エネルギーを吸収する微小ブラックホールみたいなものを無数に形成すれば、

さらに低い温度も生み出せる…!!!)

マミの洞察は的を射ている。カオスドラゴンが両翼から放った混沌波動刃は、

絶対温度マイナス300度に相当する冷気を帯びていて、

その冷気の反射の直撃で凍結粉砕された両翼が、

3秒後には再生を完了してしまっている。

 

 「…さてどうする…!!!?」と、唇を噛み締めるマミに考える余裕を

与えまいとする様に、カオスドラゴンが、7億ボルトの雷光を帯びた左右の

膝を、容赦無い勢いで連続でマミ目掛けて撃ち込み、

「ハァアッ!!!」瞬時にマミが放った、虹色のオーロラの刃を纏わせた

左右のローリングソバットの、優美な二条の曲線が、

カオスドラゴンの左右の膝を裂き砕き、左右両脚全体を虹色の光粒子に

飛び散らせてしまい、

 

3秒後にはカオスドラゴンの両脚が完全に再生する。

 

 「…勇者様は、手加減して攻撃しておられる…!!!?」竜族執政官

アリテアが、訝しげに。

 「…おそらく、ただ倒すだけなら勇者様なら可能なのです、

しかし…!!!」と、絶世の美女の姿の竜族の皇帝が、苦しげな表情で。

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