雪の降る冬の短編集

雪の降る冬

ひと夏と森の館

誰が言い始めたかなんて覚えていない。

たぶん誰が言っても結果は変わらなかったと思う。

私たちは夏休みという言葉に惑わされて、はしゃぎ過ぎたんだと思う。

外は雨が降り注ぎ、家に帰る事も出来ないだろう。

今日はこの館に泊まることが僕たちに残された最善策だろう。


「水木、部屋の中はどうだった?おかしなところはなかったか?」

「うん。思ったよりも綺麗な部屋で大丈夫そうだよ。晃くんの方はどうだったの?」

「俺の部屋はクモの巣がひどくてな、よかったら俺も同じ部屋に住まわしてくれないか?」

「大丈夫だよ。ベットも二つあるから。」


そういうと、晃君は私の部屋に荷物を運び始めた。

クモの巣がひどいと言っていったので、荷物は廊下に置いておいたんだと思う。

と言っても荷物がたくさんあるわけではない。

お菓子や飲み物に懐中電灯、単三電池、スマホ。

鞄の中にはそれしか入ってないと思う。


「いったん集合場所に戻るか。」


晃くんと一緒に1階へと降りていく。

階段はボロボロで気を付けて歩かないと壊れてしまうんじゃないかというほどだった。

ただし、廊下にはランプが灯っており、足元にはそこまで注意しなくても良かった。


「久々に水木と遊べそうだったのに残念だったよな。」

「うん。‥…でも、明日になれば雨も上がると思うから‥…。」

「そうだな。明日になればまた遊べるようになるよな。」


晃くんとは小学校までは一緒だったけど、進学と共に離れ離れになってしまった。

それでも晃くんは私の事を忘れてなくて、今日のピクニックに私も誘ってくれた。

そして、晃くんとは久々に遊べるはずだった。けど、ピクニックで目的の場所に着いたと思いきや急な大雨に見舞われこの館で雨宿りをすることになった。

窓を通して外の様子を見てみるといまだに雨が降っている。

そして、空一面が暗い雲に覆われて、青い空は見えないほど。


「晃くんは両親に連絡入れたの?」

「うん。圏外になってはいなかったからちゃんと入れといたよ。そしたら、俺たちの方にこれそうだったら迎えに来てくれるってさ。」

「そうなんだ。でも、この雨じゃあ、土砂崩れが起きてそうだよね。」

「そうなんだよなー。ここら辺、直ぐ土砂崩れが起きそうだから。」


この場所にピクニックに来たのは2年ぶり。

2年前も一度ピクニックに来たことがある。

その時も帰る途中に雨が降って大変だった。

どうにか雨宿りは出来たものの、食糧が無くて体を温めるようなものもなかった。

親たちが迎えに来ようとしても土砂崩れで道が塞がれてすぐに来れない状況だった。

その時は、どうにか1晩凌ぎきって助かったけれど、今回はどうなるかは分からない。

ただし、前回に比べて、食糧もあれば体を温めるもの、そして、知識がある。こういう時に学校で習った理科の知識が役に立つ。


そうこう考えていると、1階に着いた。

そして、そのまま階段を降りてすぐの場所にある扉に手をかける。

部屋の中は10畳ほどの広さで、6つの椅子がと1つの机が用意されていた。

そして、その1つの椅子に1人の少年が座っていた。


「水木くんに、晃くんか。思ったより早かったな。」

「苗木も早いな。」


そこには苗木くんが座っていた。

苗木くんは晃くんと同じ中学校の友達らしい。


「苗木くんの部屋はどうだった?」

「綺麗、とは言えないが、一晩過ごすには申し分ないな。クモの巣派が目立ったがどうにかなりそうだったし、誇りはどこまでなかったから大丈夫だったな。2人の部屋はどうだった?」

「私の部屋は誇りやクモの巣はなくてきれいだったよ。」

「そうか。もし汚かったら部屋を譲ってやろうと思っていたがいらない心配だったな。」


苗木くんは本当に優しい人だ。

今日初めて会った私に対して優しく接してくれる。

普通だったら私なんか相手にされないのに。


「俺の部屋は完全にアウトだったわ。」

「そうなのか?なら、俺の部屋を譲ろうか?」

「いや、水木が部屋を一緒に使わしてくれるって言ったから大丈夫。」

「そうか……て、今何て言った?一緒の部屋を使うといったか!?」

「ああ。」


慌てている苗木くんに対してい、晃くんは普通のように返事をする。

私もそのことについて一瞬は考えてけど、晃くんだからそんなことはないと思っていた。

だって、こんな日にそんなことはするはずはない。


「そ、それはいけないんじゃないか!?緊急事態とはいえ、男と女が同じ部屋と言うのはさすがに‥…。」

「大丈夫だって。お前が考えているようなことはしねーよ。つか、そんなことしたら小間らにすぐばれて俺の人生が社会的に死ぬからやらねーよ。」

「そ、そう、だよな。確かに、お前がこんな時にそんなことしないよな。すまない、変なことを言ってしまった。」

「いいってことよ。‥‥と、4人目が来たな。」


晃くんの声につられて扉の方を向くと一人の男の子が入ってきた。


「ちょっと、苗木くんなんで勝手に移動してるんですか!廊下で待っててくださいと言ったじゃないですか!」

「その後に先に行っていると言ったはずなんだがな……?」

「僕はこういうのが苦手だといったのに一人にするとかありえないじゃないですか!!」

「すまない。少しぐらいは大丈夫だと思ってしまった。」


部屋に入って来るや否や怒り出したのは前田くん。

ホラー系は無理らしく怒りながらも足を振るわしていた。

彼も晃くんの友達らしい。


「前田くん、部屋の方はどうだったかな?」

「…ふん。……君に話す事はないね。」

「おいおい、そんな言い方はないんじゃないか?心配してくれてるんだ。素直に答えればいいじゃないか?」


ただし、苗木くんとは違い私の事をあまりよく思っていない。

でも、それが普通の反応だと思う。知らない人に対して見せる反応で、苗木くんがただいい人過ぎるだけだ。


「苗木くん、私は大丈夫だから。」

「ふん。」


私に関してはそんな感じ。これ以上喋ってくれることはない。


「まあまあ、みんな仲良く行こうぜ。それに、今日中はここを離れる事は出来そうにないから素直に行こう。」

「まあ、晃くんがそういうならそうしましょう。その、さっきは少し口が悪すぎました。」

「うんん、大丈夫だよ。」


ただ、晃くんにかかればこういう感じで素直になってくれる。

だからこそ私もそこまで気にしないのだ。


それから数分。

私たちは軽く話をしながら、残りの子達を待つことにした。

会話は簡単な事ばかりで、主には私の事。苗木くんと前田くんは私の事は全然知らないので昔の事を含めてながら話した。


「という事は、2人は以前この辺りに来たことがあるんだな。」

「ああ、何回かあるな。そんなかで小6の時も雨が降って大変だったな。今回みたいに身動き取れない状態で、親にも連絡が取れない状態で結構絶望的だったんだよ。でも、1日しのげば翌朝には迎えが来てくれて助かったけどな。」

「どうだったのか。それなら、今回も1日しのげばどうにかなるかもしれないな。」


あの時は本当にしんどかった。

でも、その経験があるからこそ今回も絶対助かると分かる。


「その時もここで雨宿りをしたんですか?」

「うんん。前の時は木の下に体を細めてたの。ここら辺の木は大きいから雨宿りをするのに向いていて。それに、前の時はこんな館見つけられなかったの。」

「そうなのか。という事は今回は前よりかはラッキーだな。」

「そう、だな。」


晃くんの声が少し震える。

確かにこんな屋敷で雨宿りが出来るのはそれなりに幸運だ。

でも、それ以上に今回は雨が強いし振っている時間の長さも長そうだ。

それに……。


「何やらみんな楽しそうに話しているじゃない。」

「わ、私たちが最後でしたか。」


私の思考はそこで終わった。

残りの2人が戻ってきたからだ。


「美都くんに釜戸くんじゃないか。2人も無事だったようだな。」

「2人ともどうでしたか?」

「まあまあね。設備としては申し分ないわね。お風呂もあってお湯も出るようだったから。‥…ただし、埃ね。部屋の隅に貯まっててひどかったわ。」

「私の方もです。設備が良くても部屋にクモの巣があったりして困りました。」


6人が無事に戻ってきて分かった事として、どの部屋も埃がたまっているという事だ。

元々人がいない館だったので、もしかしたら綺麗な方かもしれないけれどどうしても意識してしまう。


「2人の部屋にはお風呂が付いているのかい?羨ましいな。」

「苗木の部屋にはないの?」

「無かったな。」

「僕の部屋にもです。」


当然私の部屋にもお風呂はついていない。

彼女たちが羨ましい。


「そうなの。晃の部屋にもないの?」

「ああ。と言っても、俺は水木に部屋を貸してもらってるから、あったとしても水木優先で使うけどな。」

「はぁぁぁ””!!!」


晃くんはこういう所で平然と言うからやめてほしい。苗木くんの時も少し感じていたけど、特に彼女の前ではやめてほしかった。

だって、彼女の叫びようで分かったかもだけど、あまり言っていいような感じじゃない。


「どうしてそんな女と一緒の部屋を使うことになってんのよ!!」

「そ、そうですよ。異性と一緒の部屋と言うのはさすがに‥……!!??」


美都さんと前田くんがすごく反応する。

苗木くん同様にこの年の子は異性が同じ部屋で過ごすといことに過剰な反応を示すようだ。


「大丈夫だって。何かするわけじゃないんだし。」

「ま、まぁ、晃くんですし、節度があるのは分かっているんですが‥‥…。」

「なんでわざわざその女なのよ!!その女とおんなじ部屋じゃなくていいじゃい!!」

「み、美都ちゃん、晃くんがああいってるんだし‥…。」

「あなたは黙ってて!!」


晃くんの一言で前田くんも少しは考えが緩んだようだった。それでも、少しだけの疑っている様子がある。


その対して美都さんは言葉をしゃべれば喋るほど悪化している様子。釜戸さんは私たちには何も言ってこないどころか美都さんを落ち着かせてくれている。

晃くんによると2人は保育園から一緒だと聞いていた。けれど、仲がいいというわけではないらしい。


私も何か言おうかとも思ったけれど、美都さんが余計に怒る未来しか見えなかったので誰かがこの話題を切ってくれることを願うことにした。主には、晃くんにだけれど。


「まあまあ、落ち着けって。今はそれどころじゃないと思うんだ。今日はここに泊まらないといけなさそうだし、身の安全を第一に考えるべきだと思うんだよね。」

「だけど‥…!!」

「分かってるよ。そこまで言われたら俺は前田の部屋に移動させてもらうよ。前田もいいよな?」

「えっ!?ぼ、僕ですか?ま、まあ、いいですけど。」

「という事だからそれでいいだろ?」

「男子同士だったら、文句ないわよ。」


晃くんが違う部屋に移動することでどうにか収まった。

でも、もとはと言えば、晃くんが言わなければこんなことが起きなかったんだから少し反省してほしい。そう思って、晃くんを少し睨む。

でも、晃くんは私にきずくとにっこりとして私の意図に全然気づいていない。


「よし、そう言う事だからこれから移動するか。前田、水木、行こうぜ。」

「え!?私も!?」

「一応あの部屋はお前の部屋なんだから当たり前だろ?」

「そ、そうだけど。」


そっと、美都さんの方に視線を向ける。

鬼の形相をして睨んでいた。本当に勘弁してほしい。

でも、ここに残ったら残ったで、美都さんに睨みつけられっぱなしだ。


「分かったよ。」


この場に残るより付いて行った方が良いと考えた。


「それじゃあ、3人はこの場で待っていてくれ。それじゃあ。」


そう言って、晃くんを筆頭に私と前田くんと共に部屋を移動した。

しかし、前田くんとは途中の階で別れた。

前田くんには晃くんの荷物を部屋に入れれるように準備してもらうことに。

私と晃くんは荷物をまとめるために部屋へ向かった。



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「晃くん、荷物はこれだけでいいの?」


元々いておいて分よりもコンパクトにまとめた荷物。


「ああ。これだけあれば、十分だ。他の荷物は水木が持っていてくれ。」

「うん、分かったよ。」


そういって、私のカバンの近くに荷物を置く。

そして、準備が出来たので、前田くんの部屋へ。

別れる前に前田くんから部屋の位置は聞いていたのですぐにたどり着けた。

部屋に前に前田くんはいなかったので多分部屋の中にいるんだと思う。

彼自身こういうのは無理だと言っていたのでしょうがないと思う。

それで、このまま開けると彼を怖がらせそうだったので、まずはドアの横にある呼び鈴を押してみた。

しかし、中だけにしか聞こえない構造になっているのか、こちらにはなっているかどうかの判断が出来ない。

さらに、すぐに出てくる雰囲気がないので、一応もう一度押してみた。


「出てこないな。」

「うん、そうだね。部屋の中で何かあったのかな?」

「ん~~。」


しばらく待ってみたが出てくる様子はない。


「もう一度呼び鈴鳴らしてみる?」

「いや、声を出してみて、それでも出てこなかったら無理やり入ろう。」


晃くんの提案を通すことに。

晃くんが大きめのノックを三回。


「前田、俺たちだ。中にいるなら部屋を開けてくれ。」


しかし、前田くんは出てこない。

こうなったら無理やりと思い、ドアを無理やり引く。


鍵がかかってなかったのか、それともぼろかったのかわからないが、部屋はすぐに開いた。


「水木、俺が前を行く。離れないように付いて来てくれ。」

「う、うん。」


頼もしい晃くんの背中についていく。

電気もついておらず、部屋の中は真っ暗。

本当に前田君はいるのかとすら思う。


「晃くん、前田くんいないね。」

「ああ……そう、だな。」


まずはベットを確認して次はトイレを。

一応ベットの下に隠れていないか確認してみたけど、彼はいなかった。


「どうする?」

「いったん一階

のあの部屋に戻ろう。もしかしたら、何か事情があって前田も戻ってるかもしれない。」

「そうだよね。うん、いったん戻ろう。」


そうして、私と晃くんはみんなが集まっていると思われる部屋に向かった。

一応すれ違いが起きないか確認しながら向かったけど、誰一人としてすれ違うことはなく、廊下を歩く影すら見なかった。

部屋の前につくと、一旦深呼吸をする。

そして、心が落ち着いたところで部屋の中に。

晃くんがドアに手をかけて開く。


「お、晃と水木じゃないか?2人ともどうしたんだ?前田の部屋に行ったんじゃなかったのか?なのにどうして前田はいないんだ?」

「いや、前田の部屋に行ったら中にいなくてな。もしかしたら怖くなってこっちに戻ったんじゃないかと思ってここに来たんだ。‥‥けど、見た感じいないな。」

「それに、美都さんと釜戸さんもいないね。」

「水戸がシャワーを浴びたいと言ってな。一人で行くのも危ないと思って、釜戸について行ってもらったんだ。」

「そうだったのか。それにしても、前田はどこに行ったんだ?」

「私たちが来る前に一度も戻ってないんだよね?」


一応確認してみる。

と言っても結果はわかっていた通り。


「もしかしたら、美都さんと釜戸さん一緒にいるかもしれないね。」

「護衛しろ的な感じで無理やり連れて行ってるかもな。」

「それなら、まずは2人のもとに行こうよ。」


そうして次は、美都さんの部屋に向かうことにした。

ついでに、苗木くんも付いて来てもらうことに。

みんなで集まった方がいいと思った結果だ。


「それにしても、晃はよく迷わずに進めるな?本当に始めてきたのか?」

「学校の時の自己紹介で言ったと思うけど、迷路の類は得意なんだ。だから迷路でもないところは暗闇の中だろうが道は覚えているから迷わず進めるんだ。」

「本当に晃くんはすごいよね。」

「こういうのは慣れだな。親が迷路が好きだからよく一緒に行くうちにって感じだから、みんなも数をこなせばできるようになるよ。」

「そうかな?晃くんはだからできただけだと思うよ?」


そういいながら、美都さんの部屋の近くに。

部屋の前には一人の少女が立っていた。


「あ…。」

「美都さん。」


美都さんがドアの前で立っていた。


「美都は見つかったな。」

「晃何でここに…。それに、なんで他のも…。」


美都さんに事情を説明する。

途中前田くんについて何か知らないか聞いてみたけど、返答はやっぱり知らないとのこと。


美都さんは釜戸さん待ちでドアの前で待っているらしい。

他人に対してきつい所はあるけど、こういうところは優しいんだと分かった。


「それで、釜戸が後どれくらいで出てこれそうか聞いてくれないか?前田を探しに行かないといけなくてな。」

「ま、晃のお願いだから聞いてあげる。」


そういうと美都さんは部屋の中に。

鍵は閉めていなかったらしく簡単に中に入っていった。


「きゃぁぁぁ!!!!」


部屋に入ってすぐに叫び声が聞こえてきた。

さすがに緊急事態だと悟り、中に入った。

シャワーの音が聞こえているのでお風呂場で何かあったことがわかる。

入ってすぐのところにあるのでそのまま入っていく。


「これは、いったい‥‥。」

「ひどいな。」

「どう、して‥…前田くんがこんなことに‥‥。」


お風呂場の壁に何かで打ち付けられている前田くんの姿があった。

目も潰され血が流れ切っている。

打ち付けられているのは口の奥と腹部。

そして、シャワーによって赤い血が床にさらさらと流れて行っていた。


「美都、立てるか?」

「ご、ごめん、腰が抜けて‥‥。」

「水木は大丈夫か?」

「う、うん。私は大丈夫。」

「なら、美都を外に連れて行ってくれ。ここにいるのは辛いだろうし。」

「晃くんは?」

「俺は苗木と一緒にこの場をどうにかする。」


後は晃くんと苗木くんに任せ、私は釜戸さんを引っ張ってベットの方に。


「美都さん大丈夫?」

「な、なんで、あんたなんかに、言わなきゃ、う、う……うえぇぇ。」


美都さんは大丈夫ではない様子。ベットにそのまま吐いてしまった。

私は美都さんの背中をなでながら少しでも楽になるようにしてあげる。

触るなと罵倒を浴びされたが、今はそれどころじゃないので無理やりしてあげた。


そして、少ししてからお風呂場で大きな音がした。

2人が何かしているのだろう。

そして、血まみれになった二人が現れた。


「助かればと思ったが、無理だった。」

「そうだったんだ。」


どうやら、前田くんはなくなってしまったらしい。


「今から、釜戸を探しに行こうと思っている。」

「釜戸さんが犯人なのかな。」

「普通に考えたら、ここにいなくて、この部屋を使っていた釜戸が犯人だろうな。前田を殺してそのまま逃げたっていうのが妥当だな。」

「だが、まだ決めつけるのは速いと思う。ともかく釜戸に会わなければどうしようもない。」

「そうだよね。釜戸さんが犯人だって決める蹴るのはいけないよね。」

「それで、今から探しに行くがどうする?美都が辛そうだから、水木には残ってもらおうと思ったが…。」

「わ、私は、大丈夫だから!こんな奴と2人でいる方が嫌だね。」

「美都さんでもさっき、吐いたばっかりで動くのもつらいんじゃ…。」

「大丈夫って言ったら大丈夫なの。それと、さっきから私の名前を軽々使わないで。」


そういって美都さんは立ち上がる。

まだ足が震えているが彼女の決意は変わらないだろう。


「それなら今から行くが、みんな周りには注意してくれ。常に自身の身は自身で守る気持ちでいてくれ。」


そういって、晃くんは歩き出す。

先頭を晃くんに任せて私たちはその後を追う。

まずは隣である美都さんの部屋へ。

しかし、どこを探しても見つからない。つまりハズレだろう。

そして次に近い苗木くんの部屋に。

2人の部屋に比べさらに探すところが少なくすぐに探し終わった。しかし、どこのも人の気配はなかった。

最後に前田くんの部屋。

ここには一度来ているがもう一度探すことに。

しかし、やっぱり誰一人としていなかった。


「ここもいないな。」

「次は、水木の部屋に行くか?」

「いや、先に一階の部屋に行こう。ここまでですれ違っていない以上一階にいる可能性が高い。」


そして、まずは端の部屋から探していく。

そして、徐々に探す部屋はなくなっていき、最後は中央の部屋に。


「俺たちが最初に集まった部屋だな。」

「ああ。それでここに居ればいいんだけどな。」


そして、晃くんが右のドア。苗木くんが左のドアを開ける。

そして、ゆっくりと開けられた部屋は明るくともされていた。

机の上に知らないうちにロウソクが何本か立てられていて火がついている。

そして、机の奥の方もロウソクでともされていた。

男の子を前に両端から向かっていく。

ロウソクが置かれていたのは床で、円をなぞるように置かれている。


「きゃぁぁぁぁ!!!!!!!!」

「うそ、だろ…。」

「うっ!」


美都さんは驚きのあまり後ろに下がろうとしてそのまま倒れるように転んだ。

苗木くんは取り乱し硬直している。

私は、目の前のそれが異常すぎて声も出せず、動くことも出来ず、ただ吐きそうなぐらい気分の悪いものを抑え込むだけしかできなかった。


その中で唯一冷静だったのは晃くんだった。

バラバラになっているそれに近づき、触りはしなかったもののしっかりと眺めていた。

そして、何かの確認が終わったのか、立ち上がる。


「まずは外に出よう。ここにいても、もう意味がないだろう。それに、水木と美都はそろそろきついだろう。」

「そうだな。2人はきついだろうな。俺は美都を運ぶから晃は水木を頼んだぞ。」

「ああ。」


そういって、それぞれの端から出口に向かうことになった。


「水木、ゆっくりでも歩けそうか?」

「多分、大丈夫。でも、少しつらいから、体、預けていい?」

「ああ。大丈夫だ。」


私は、晃くんに体重をかけながらゆっくり歩く。

一歩一歩がとても小さく、部屋の外に出るのに時間がかかってしまった。


美都さんは苗木くんにおぶってもらい外に出たので早かった。

ただ、まだ歩けないのか座りこくっている。


「晃くん、もう大丈夫だよ。」

「分かった。」


美都さんの横に下ろしてもらう。

そのあと晃くんは苗木くんと話し始めた。


「やっぱりさっきのは、‥‥…釜戸、だよな。」

「あぁ。繋ぎ合わせると同じぐらいだ。」

「それにしても、まさか体をバラバラにされて殺されてるとはな。」

「しかもすべて関節のところで切られていた。それに目玉も潰されていて、前田といい人殺しは目玉をつぶす趣味でもあるのか?」


二人はさっきの死体釜戸さんについて話していた。


「それにしても、だれがやったんだ?」

「この中にいるとは言いずらいな。俺と水木は2人でいたからどちらかが人殺しをしようとしても無理。共犯だとしても、前田、釜戸を殺そうとしても2人のどちらかに鉢合わせるから無理だな。」

「そして、俺が2人を殺すのも無理だな。前田を殺すとしてら美都に見つかる。釜戸を殺すとしても晃と水木に見つかる。そのあとはともに移動したからそれこそ殺しは出来ない。そして、美都もまた、前田は殺せても釜戸を殺すには俺たちと鉢合わせてしまい不可能。」

「4人共犯ならできるがその可能性もない。つまり、謎のもう一人、いや、謎の複数人だろうな。この屋敷に忍び込んでいるだろうな。」

「そんな‥‥。それじゃあ、早くこんなところでないと、みんな殺されるぞ!!」


苗木くんが大声で叫んだので分かった。このままでは死んでしまうのだろう。


「ああ、だから早くこの屋敷を出るつもりだ。」

「となると、荷物を早く取りにいかないとな。」

「いや、荷物を置いて行ってでも‥…。」

「いや、置いてきたものから俺たちを特定されても困る。荷物は持ち帰るべきだ。」

「そうか。なら、今すぐ移動すべきだよな。」

「あぁ。ただし、2人は動けそうにないみたいだから、俺一人でみんなの荷物を取ってくる。」

「何言ってるんだ!?一人になったら、晃、君自身ば危ないんじゃ‥‥。」

「大丈夫だ。それよりも、動けない女子を置いていくことも出来ない。だから一人はここに残る必要があるんだ。だから苗木、2人を頼んだ。」

「しかし、‥‥。」

「お前を一人で行かせるのもあれだろ?それに、水木の部屋を知らないだろ?手あたり次第探す方が危険だ。」

「分かった。‥…だが、ちゃんと戻って来いよ?」

「任せろ。」


その言葉だけを残し、晃くんは行ってしまった。

そしてすぐに苗木くんはさっきまで話していたことを私たちに話してくれた。

危険だからすぐさまここに出ること。

それと、この館を出るためにみんなの荷物を晃くんが取りに行ったこと。


「それじゃあ、私たちは助かるんだね。」

「ああ。無事に晃が帰ってくればもう安心だ。」

「よかったー。」


これで一安心できる。

と言っても、それは晃くんが帰ってくればだが‥‥。


「美都さん、よかったね。」

「………」


さっきの影響でしゃべれなくなったのか、ずっと黙りっぱなし。

しかし、口元は少し動いていた。

そして次は大きな声で。


「もういや、もういや、もういや、もういや、もういや、もういや、もういや、もういや、もういや、もういや、もういや、………。」


そしてそのまま走り出してしまった。


「追いかけなくちゃ!」

「あ、あぁ。」


いきなりのことで苗木くんは動けなくなっていたが、私の声で正常さを取り戻す。

私の方が動きが早かったが、男子と女子では当然足の速さは男子が早くすぐに苗木くんは私を追い越していってしまう。

そして、私が階段を半分まで登った時、


「いや、いや、いやぁぁ!!!!!」


ちょうど階段と階段の間から叫び声が。

そしてすぐさま、『ぐちゃっ!』と何かが床にぶつかり飛び散る音が。

階段からのぞき込むと、槍を高々と掲げている兵士の銅像のちょうど槍の部分に何かが刺さっていた。

そして目を凝らしてみれば、刺さっているのは人であり、美都さんだった。

何が起きたのか分からず、急いで階段の上まで登る。


そして目にした光景は……。


「や、やめるんだ、釜戸。」

「あなたと水木をやれば…!!」


釜戸さんが苗木くんの首を両手でつかんでいた。

そして、一回に落とそうとじりじりと手すりの方に。

苗木くんは何とか踏ん張っているが、いくら相手が女子とはいえ首を絞められている以上思ったよりも力は出せないはず。


「だ、だめー!!」


私はとっさの判断で釜戸さんに体当たりをした。

すると、相手も私がいることには気付いていなかったらしくそのままして倒れた。

何とか苗木くんを救えた。


「ごほっ!!‥‥たす、かった。」

「よ、よかった。」


釜戸さんが倒れているうちに何があったのか事情を聴かないと。


「いったい何があったの?」

「それが、俺がついたころには美都が落とされる寸前で、なんで釜戸が生きているのかすら分からないんだ。」

「そうなんだ。」

「そして、水戸を落とされた後杉は俺に狙いを付けてきてな、それでさっきの有様だ。」

「そう、だったの。」

「それより早く、釜戸の体を拘束……水木、右だ!」

「え?」


その今間私は手すりの方に飛ばされる。

そして、すぐに首をつかまれ、


「あなた達さえ居なくなれば……!」

「くっ、苦っ、しい……」


そして、首を上に持ち上げられ、手すりから落とそうとしてきた。


「やめるんだ!」


そういって、立ち上がった苗木くんが体当たりを。

釜戸さんは意地でも私を落としたかったようで腕を離さなかったので私まで手すりにぶつかる。

背中が痛かったが、気力を振り絞って握られている腕を離す。

そして、少しでも距離をとる。

さすがにこれ以上は動けまいと考えたかったが、まだ立ちあがる。


「嘘だろ…。」

「これ以上は‥‥。」


諦めかけたその時だった。


「水木、苗木、頭を下げろ!!」


その声にすぐに反応して頭を下げる。

そのあとすぐに大きなものが私たちの上を通り、何かが釜戸さんにぶつかった。

さらに、運悪く手すりが壊れそのまま一階…いや、銅像に槍の上に落ちて行った。


「2人とも大丈夫だったか?」


廊下の奥から晃くんがやってきた。


「すまない。」

「晃くん、ありがとう。」


私たちは晃くんによって助かった。


「それにしても大きな声がするからびっくりしたが、‥…釜戸が生きていたとはな。」

「多分だけど、あそこにあったのは本物そっくりに作った人形だったんじゃないかな?」

「確かにな。釜戸の持ってきていたかばんはやけに大きくてパンパンだったしな。」

「そういえば、美都は…。」


私たちの様子を見て悟ったんだろう。

言葉を続けないかった。


「それにしても、一階に落ちたんじゃあ、助からない、よね。」

「そ、それは、‥…。」

「さっきのは俺たちのせいでもあるんだ。逆に俺たちを助けてくれたんだ。何も悔やむことはない。」

「そうだよ!」




――――――――――――――――――――――




それから私たちは晃くんの持ってきた荷物を持って玄関に。

途中銅像の所に行ってみたが、2人ともすっかり刺さっていた。


「2人とも運が悪かったな。」

「そうだね。」

「釜戸に対しては自業自得だ。晃へたしても自分のせいだと思うなよ。」


苗木くんがカバーした。



私たちが外に出た時には、豪雨だった雨がやみ星空が出ていた。


「あれだけ見通しが見えなかったのに晴れればすぐだな。」

「これなら、ある程度のところまで下山できるな。」

「そうだね。」


そして私たちは降りれるところま出歩き続けた。

星と月が私たちを照らし続けてくれていたため明かりは必要なかった。

そして道の途中で、まぶしい光を見つけた。


「「晃!!」」


光の向こうには人の形をした黒いもの。

そして、晃くんの名前を呼ぶところから察するに、あれは、彼らは晃くんの両親だ。


「今回も無事でよかったわ。」

「俺は、苗木さんたちに見つかったって連絡してくる。」

「分かったわ、あなた。」


そうしておじさんの方は行ってしまった。

苗木くんの両親も探しに来ているのだろう。


「陽菜ちゃんも無事でよかったわ。」

「おばさん苦しいですよ。」


晃くんと同じように抱きしめてくるが、へとへとの私からしたら少し強く感じる。

それぐらい今は疲れているのだろう。


それからしばらくして、苗木くんの親らしき人物が現れた。

彼の両親もとても心配していたようで見つけた時には涙を流していた。


「みんな無事なようだし、今回はよかったな。それじゃあ、早くこんなところから離れて帰ろうか。」

「陽菜ちゃんは、私たちの車で帰りましょうね。陽菜ちゃんのご両親も来たがってたんだけどね、色々あって来れなかったの。だから私たちが送ってあげるわ。」

「ありがとうございます。」


そうして私たちは帰ることになった。



「それじゃあ、夏休み明けの月曜日一緒に登校しような。」

「うん、晃くん。」


そうして入れの玄関に向かう。

記憶の中にあるものよりも古い、というよりも掃除が出来ていない感じ。

ドアノブを握り扉を開ける。

中に入ると少し埃が目立つ。

お父さんとお母さんは掃除をさぼっていたのだろうか。

ここまで来るとボロ屋敷なんかと間違われてもおかしくない。


家の中に入ってすぐに私はある場所に向かった。

記憶の限りでは玄関からまっすぐ行けばつく。

扉の前につくと一旦深呼吸。

そして、埃のかぶった扉開く。

中には、台所で機械的に料理をしているお母さん。

画面に目が行っているだけでちゃんと見ているのかわからないお父さん。

そんな二人に私は、


「ただいま、お父さん、お母さん!」


大きな声で帰ってきた知らせを告げた。


「あ…。」

「え…。」


私の方を見るお父さんとお母さん。

心配のし過ぎだったせいか、瞳の色がなかった。

そして、私を見てからだんだんと魂が戻ってきたのか瞳に色を取り戻していく。


「ひ、な!」

「陽菜!」


そして、お母さんが涙を流して抱き着いてきた。


「お母さん、危ないよ。」

「何言ってるのよ!私たちはずっと心配してたのよ!」

「そうだぞ。お前がいない間消失感でいっぱいだったんだぞ!」


お母さんは泣き止むまで私に抱き着きっぱなし。

お父さんは、私とお母さんに見えないように泣いていた。


「お母さん、そろそろ調理の続きをしないとご飯食べれなくなるよ。」

「そ、そうよね。」


私に言われるがままお母さんは台所へ。

私はお風呂場に行き、汚れを落とすことにした。


「今日は疲れたな。……でもこれで、私は解放されたんだ。」


それからしっかりとお風呂に浸かった後、上がることにした。

着替えの準備をしていなかったので、バスタオルで体を隠して2階に。

私の部屋に入ると埃がひどかった。

少し動けば埃が口に入るんじゃないかったぐらい。

そんな中で服一式を取り出す。

タンスの中に入っていたので、埃などはついていなかったが、少し小さかった。


「さあ、ご飯にしましょう。」

「いただきます。」

「いただきます。」


豪華な料理とはいかなかったが、久しぶりの手料理は世界一おいしく感じた。

それを食べ終わると、すぐに寝ることにした。

くたくたで何かする余裕がなかった。


そして次の日から、私たちは何日もかけて家の大掃除をした。

こんな時期にやることではないけど、家のいたるところに埃があってこんな中で生活したくないからだ。

というか、よくお父さんとお母さんは生活できたなと思う。


そして待ちに待った夏休み明けの月曜日。


「お母さん、おかしいかな?」

「いつも通り大丈夫よ。でも、そろそろ制服を変えないといけないわね。制服が小さく感じるんじゃない?」

「やっぱり!?見てる分には大丈夫だと思ったんだけどな…。」


それからお母さんにお見送りをしてもらってから久々の道を通る。

そして、


「おはよう、晃くん。」

「おはよう、陽菜。」


私はいつも通りの待ち合わせで彼と会った。


「久しぶりに一緒に登校するな。」

「本当だね。」


私たちは、たわいもない話をしながら学校に向かった。

この時間はほかの生徒も通学しているので学校が近づくにつれて生徒が多くなる。


「それにしても晃くんはモテるね。」

「どうしてそう思うんだ?そんなことないと思うぞ?」

「晃くんはそういうのには鈍感だよね。周りを見てみて。ほとんどの人は晃くんを見てるよ?」

「そうか?あれはお前を見てたんじゃないのか?てっきりお前がモテるからかと思ってた。」

「もう、そんなわけないじゃん。」

「ん~、俺はそう思うんだけどな。だって、お前めっちゃ美人じゃん!」

「//////!!そ、そんなことないもん。」


そこから私たちの会話がなかった。

正しくは私が振られた話に反応しなかったから会話にならなかっただけ。


それから、私たちは靴箱に行き、名前のある場所に靴を入れ、持ってきたシューズを取り出す。

それに履き替え、私たちの教室に向かった。

座る席を確認するために出席簿に貼ってある図を見る。

それから私は席に荷物を置いて晃くんの所へ。


「緊張するよ。」

「大丈夫だって。堂々としていれば何ともないさ。」

「そうかな。」


私も頭が冷め、晃くんと会話できるほどになった。

そして、ホームルームが始まる5分前、苗木くんが登校してきた。

しかし、彼の顔は青ざめていて元気がない。

だから、私と晃くんは彼のもとに行き声をかける。


「苗木くん、大丈夫?」

「調子でも悪いのか?」


私たちに気づくと、震えた声を出した。


「夏休み中に行ったピクニック、俺たちは何人で行ったか?」

「3人だ。」

「そうだよな。でも、ほかにも3人いた気がするんだ。でも、俺も3人だと思い出せないし、他に誰がいたんだって言われても答えれない。それにあの時泊まった屋敷だ。」

「結構怖かったな。」

「それだけじゃない。忘れてはいけないような事が、あったはずなんだ。」

「?何のことだ?怖かったものの大したことはなかったと思うぞ?それに雨が上がっておかげてそのっひ中に帰れただけだと思うぞ?

「そうなんだ。そのはずなんだ!だけど、何かが欠けているような消失感がって俺…。」


苗木くんは頭を押さえだす。


「多分それはあれじゃないのか?こないだのことと、夢の記憶がたまたま似ていていろいろ混ざってそんな感じになったとかじゃないのか?」

「そうかも、しれない。でも、確信がないんだ。」

「ま、そういうのは忘れた方がいいと思うぞ。変なものは忘れておいた方がいい。」

「そう、だよな。」


それに納得したのか苗木くんの顔色はよくなった。

それから私たちは席に戻ることに。

その途中私は晃くんに聞いてみた。


「本当のこと言わなくてよかったの?」

「いいんだ。そのための苗木だしな。」

「そう。」


私は少し晃くんを悲しく思った。

でも、それは彼が私のためにやってくれたことだから責めることが出来ない。


「それじゃあ、出席をとるぞ。みんな席に就け。」


先生が言ってきて出席確認をする。


「そして次は、……水木。」

「は、はい!」


慣れないことだったから少し声が上ずった。

でも、みんなにはそこまで反応されなかった。

私の気にしすぎだろうか?


「それじゃあ、これでおしまいだ。少し話をするが一点。空いている2席だが、明日片付けるか誰か手伝ってくれる人募集中だ。それと、その間あの席に荷物を置かないように。誰も使っていないからと言って使っていいわけじゃないからな。それじゃあ、以上だ。夏休み明けで気が抜けやすいから気負付けて学校生活を送ってくれ。それじゃあ、この後の移動教室遅れないようにな。」


その言葉を最後にホームルームが終わった。

それからは久しぶりの学校生活。

あの頃よりも、とても楽しく感じるようになっていた。




新たな学校生活。晃くんがいなかったらどうなっていたか分からなかった。

それでも、友達もたくさんできた。

そして、学校から帰ってくる場所も。


「ただいま!!」


私の学校生活は始まったばかりだった。

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