3 逃避行1
「くっ、どこだ!?」
デルフィナたち女騎士はあらぬ方向で剣を振ったり、時折サイドステップやバックステップをしたり……と俺の幻影と戦い続けているようだ。
「やめて! ミゼルくんを殺さないで!」
レナが叫ぶ。
彼女たちにも騎士団同様に、俺の幻影が見えているんだろう。
この場で俺の姿を正確に認識できているのはベアトリスだけのようだ。
「便利な神器でしょ、ミゼル様?」
ベアトリスが俺にしなだれかかる。
「いちいちくっつくな」
俺は彼女から離れた。
「あら、つれないお方」
残念そうなベアトリス。
……まだ彼女が味方と決まったわけじゃない。
というか、純粋な味方ではないだろう。
ただ、この場から穏便に立ち去るためには、彼女と敵対しない方がいいのは確かだった。
今の状況のまま、俺はベアトリスと一緒にリオネル伯爵の元へ行く――。
とりあえずはその方針で行こう。
「待ってください! ミゼルくんは、大勢の生徒を守るために戦ったんです!」
「どけ。釈明なら奴を逮捕後に聞く」
レナやジークリンデ、ターニャ先輩はまだ必死で王立騎士団を食い止めようとしている。
「でも──」
「どかなければ、お前たちも連行するぞ」
デルフィナがすごむ。
「……でもっ」
「お前たちにとって大事な少年なのかもしれない。だけど、これは任務だ。あたしたちは騎士として、命令に従わなければならない……邪魔しないでくれ」
言って、デルフィナの表情に一瞬、苦渋の色が浮かぶ。
彼女には彼女なりの葛藤があるのか。
それでも任務を遂行しようとする意志は固いのだろう。
というか、このままだとレナたちまで公務執行妨害で逮捕されるんじゃないだろうか。
「大丈夫ですよ、ミゼル様。ここを離れたら映像を消しますから」
ベアトリスが言った。
「そうなれば、王立騎士団も剣を収めるでしょう。その後でミゼル様を探しても、すでにあたしたちは伯爵の居城へ向かう最中……見つけられません。ふふふふ」
「……分かった。じゃあ、できるだけ早く離れよう」
レナたちに、累が及ばないように。
俺自身の今後については、それから考えよう。
もしかしたら――。
あまり明るくない未来が待っているかもしれないが。
それでも俺は、自分の手で道を切り開いてみせる――。
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