8 老執事ガストン

「行くぞ――」


 俺はヴェルザーレを手に、ガストンに打ちかかった。


「さすがはクラスS神器。すさまじいプレッシャーですね」


 ガストンは動かない。


 武器を持たない丸腰で俺の攻撃を待ち受けるつもりか?

 それとも――。


 なんらかの神器で迎撃か防御でもするつもりか?


 どのみち、俺のやることは一つだ。

 この神の槌で眼前の敵を打ち砕く――。


「クラスSといえど……まだ制御が甘いようですね」


 奴の前面に暗褐色の盾が出現した。


 防御能力を持つ神器か?


 構わずヴェルザーレを振り下ろす。

 がつんっ、と重い衝撃とともに、槌が弾き返された。

 俺の攻撃は盾に阻まれてガストンまで届かない。


「これが私の神器『悪辣あくらつなる盾』です」


 ガストンが静かに告げた。


 この盾、硬い──。


 俺は表情を険しくする。


「単なる防御兵器ではありませんよ、この盾は」


 ガストンが微笑む。

 次の瞬間――。


 ごううっ!


 ワンテンポ遅れて、すさまじい衝撃波が俺に向かって吹き荒れた。


「ちいっ」


 ヴェルザーレを振り回し、破壊エネルギーを放ってそれを相殺する。

 今の衝撃波は、俺が一撃目に放った破壊エネルギーだ。


「こいつの神器の特性は、まさか──」

「単なる防御兵器ではないと今申し上げましたよ」


 ガストンは相変わらず微笑んでいる。


「私の『盾』はあらゆる攻撃を反射し、あるいは倍加して相手に返します」


 と、説明するガストン。


「さらに再生機能も完備しておりまして、先日、別の神器使いを相手に一度砕かれましたが、すでに元通り……いかにあなたがクラスS神器を持っていようと、易々とは打ち破れませんよ」

「打ち破るさ」


 俺は神の槌を掲げ、告げた。


「俺の行く手を阻む者、そして悪である者も──俺のヴェルザーレがすべて打ち破り、打ち砕く」


 正義の、名の下に。


「では、試して差し上げましょう。あなたが――あの方の脅威になり得る存在か、否か」

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