第401話 うぇい!
六覇の話。過去の話。色々と話をしたものの、コレだけはあえて避けていたのかもしれない。
こいつの名前だけは不用意に出したくないし、何よりも関係性を問われたら答えようがないからだ。
しかし、こいつはあえて自分から名乗り出やがった。
『ヒハハハハ、それにしてもボスは冷てぇ~な~。これまで『色々』と皆に話をしているし、タイミングもあっただろうに。オレのことは欠片も話題に出さねーんだからよぉ~。あっ、ひょっとしてオレのことはあえて話題に出さなかった? そんであわよくばこのまま皆には知られないようにしときたかった? ヒハハハハ、メンゴ♪』
そして、そんな俺の今の気持ちを見透かしているかのように、こいつは機嫌よさそうに言ってきやがった。
いや、それよりも……こいつ、あまりにもタイミングよく……
『あっ、ボス。今、なんでこいつこんな都合のいいタイミングで~とか思ってる? 簡単だ~、オレの魔水晶は色々と改造施したりの特別製でねぇ~、その気になれば魔水晶を通じて相手に許可なく盗聴……ま、盗み聞きとかできたりとか~、ま、実は色々と機能が備わってんだよねぇ~』
「ッッ!? 盗み聞き? 許可なく? できる? ちょっと待て、それなら……」
俺は咄嗟に傍らのトレイナを見た。そして、トレイナはさっきから頭を押さえたまま『迂闊……』と、ブツブツと呟いている。
ってことはこれって……
『ヒハハハハ、ま、安心しなよ~、ボス。プライバシーは守るさ~』
「な、に?」
『仮にボスが~、な~んかブツブツ独り言を呟いているな~ってのが多かったとしても、ま、思春期のお兄さんにはよくあることで~、ま、そのたびに『誰かさん』の名前を呟いたりとか、独り言なのに何か会話しているように聞こえるのも、ぜ~んぶ黙っててあげるから・さ♪』
バレてる……
『ほら、オレはパナイ空気読めるしィ!』
「ど、こがぁ!」
こいつに……筒抜けだった。
周囲に人がいないとき、俺がトレイナと堂々と会話していること。
当然向こうにはトレイナの声は聞こえない。しかし、俺は何度もトレイナの名前を口にしている。
でも、俺がトレイナの幽霊が見えてるとか、そういうのにこいつは辿り着いている?
「あ、あなたは……まだハニーの周りを……」
『おやおや、ボスの嫁候補ちゃん。そんなパナイ嫌そうな反応見せんなよ。そういう心の狭いところ、クロンちゃんと違うねぇ』
「っ、な、余計な……」
『かつてオレにクロンちゃんと共に啖呵切った君はもっとデッカイ器だと思ったんだけどねぇ~』
天空世界で一部始終をその場で見ていたシノブも、まだこいつが俺にかかわっていたことを驚き顔を引きつらせている。
「ねぇ、お兄ちゃん。この魔水晶の向こうの声は誰? やーけに、お兄ちゃんに馴れ馴れしいし!」
「だいたい、お兄さんの右腕? 笑わせないでくれるかな? お兄さんの右腕はボクなんだからね」
ムスッとした様子のエスピとスレイヤ。
だけど、正直俺はどう反応していいかわからない。
このクソ野郎との関係性で変な勘違いされたくない。俺はこいつが舎弟になるとか拒否している。だから、すぐにでもこの魔水晶を叩き割って二度と話せないようにしたい。
だけど、こいつがもしトレイナのことに辿り着いたとしたら、あんまり下手なことしたらどうなるか……
「ん~……待つじゃない、エスピ嬢。スレイヤくん」
「だってぇ~……」
「いや、エスピ嬢。やっぱこいつの声……聞き覚えどころじゃないじゃない? いや……しかし……」
「?」
エスピは気付いていないようだが、色々と鋭いコジローは、やっぱり勘づいたのかもしれない。
この声の主が誰なのか。
『いや~、エスピちゃんは分からないか~、でも、仕方ねーか。オレとあんま戦わなかったしね。オレはどっちかってーと、現役時代はライヴァールやベンリナーフと殺り合う方が多かったからねぇ』
「……え?」
「ッッ!!??」
『しかし、流石はコジロウ。オレの正体に辿り着いてくれたようだな。死んだはずの男を思考から除外せずにちゃんと辿り着くとは……』
「お、お前さん……まさか……」
『しかし、いつも飄々としているお前をかなり驚かせることができたって点ではオレの勝ちと言っていいかもなぁ? よっ、コジロウ敗れたり!』
あっ、エスピはやはり分からないようだけど、コジローの肩が大きく揺れた。どうやら、今のではっきりしちまったようだな。
『ノジャちゃんは……』
「ガルルル! ガウガウ!」
『ヒハハハハハ、うるせーな~、お座り♪ なんつってなぁ! しかし、かつての同志が気づいたらボスのバター犬……いや、バター狐になってんのは驚きだねぇ。ウケる。そこら辺、流石はオレが見込んだボスだけどね』
「大将軍のことも……おい、貴様はいったい何者だ?」
『おー、貴様とか……随分とエラそうじゃない、ラルウァイフちゃんよ~。ウサギぴょんぴょんとかやってたくせに~』
「な……に?」
ノジャは激しくコンコン。ラルウァイフは呆然としちまった。このままこの声の主が誰なのか分かったら、ぜってー驚くよな……
「ねえ、お兄さん。この声の主は誰なの? なんか大物っぽい雰囲気だけど……」
「アース様……」
「アースくん?」
「お兄はん?」
族長もアミクスも、そしてオウテイさんもカゲロウさんも含めて一斉にみんなが俺を見る。
この声の主は誰なのかと。
すると……
『ヒハハハ、エルフの族長さん。いや~、あんたとはオレが自由に動けるようになったら一度対面で話したいねぇ。あんたとはパナイ話が合うと思うんだよ』
「……は?」
『集落の名前……タピル・バエルだってね? 良いセンスしているよ。何を隠そうタピル・バエルという名前は……オレがボスの偽名として考えてあげた名前なんだからな!』
「「「「「「ッッッ!!??」」」」」」
その瞬間、一斉に皆がまた驚いた表情を浮かべた。
そして、そうなんだよな……だから俺はタピル・バエルなんて嫌だったんだよ。
「お前さん……もし、オイラが想像した奴だとして……死んだはずだと……」
『生きてた。すんまそん』
「っ、お、あ……いやいや、だとしても……何でお兄さんをボスと? これじゃぁ……」
『ヒハハハ、だよな! 帝国の御前試合では大魔螺旋を使ったがために、魔王軍の残党と関わりあるのでは? みたいな疑いをかけられて罵倒されたのに……なんか、ウソから出た真ってか? もう、そうなっちゃってるよ! むしろ新魔王に的な! パナイな!』
そして、これもまたその通り。俺の人生最悪の日に浴びせられた言葉。
なんだか俺も着実にその通りに……
『というわけで、おひさ~、そして初めまして! オレはパリピだぜ、ウェーイ! 六覇の一角、闇の賢人くんでーす! ウェイ! ヒハハハハハハハハハ、以後よろしくな!』
「「「「「………………はっ!!??」」」」」
――あとがき――
話が一歩も進んどらん。
だけど、みんなもウェーイ。あと、ちょっと忙しくなるのでまた不定期になります。最近ちょっと頑張ったから許してつかーさい。うぇい!
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