12話(終) エンド・コンテンツ
10月6日午前2時、携帯のアラームが鳴った。
すぐに止めて、布団から起き上がる。
両親を起こさないように階段を下りて、一階の洗面所で顔だけ洗う。
すぐ自室に戻り、学生服に着替えた。
今日は文化祭当日だが、俺は普通の生徒より早く登校する。
ちなみに出店の準備が終わってないとか、事前に運んで置く物があるとかそう言うことではなく。
俺は今日、ある人物と学校で待ち合わせしているのだ。
出来るだけ音を立てないようにして、俺は家を出た。
「あの世界」から抜けた3日後、今から1週間前。俺の携帯に知らないアドレスからメールがあった。
やけに物知顔をしたがるような文体から、差出人はすぐに見当がついた。奴だ。
「君の力で、僕の友達を救って欲しい。それは君にしか出来ないことなんだよね。それで…」
奴の頼みであろうと、あの日俺は、「あの世界」に巻き込まれた人を救うと決心したんだ。
取り敢えず話だけは聞いてやるつもりで、集合場所の校門前にやってきた。
そこには、パソコンを弄りながら壁にもたれ掛かった少年がいた。
「時間通りだね、クルクマ君。」
「その呼び方はもう止めろ、ここはゲームの世界じゃ無いんだ。」
「そうか、ごめんごめん。じゃあ…右近修二(うちか しゅうじ)君。早速頼みたいことがあるんだけど…」
メールの件について、俺は詳しく説明された。
「…わかった。成功するかは解らないけど、やれるだけやる。」
俺は奴の持つパソコンに手をのばす。
「頼んだよ。」
「そっちこそ、しっかりサポートしてくれよ。」
「そこは抜かり無いとも。」
この世界に縛られた人間を救いに、あの世界にもう一度飛び込む。
これでようやく、俺はあの日サガミに誓った約束を果たす事ができる。
俺はこれが最後のログインになるように、強く願った。
_東京都秋葉原、某ファミレスでの会話。
「なあ、Life,Alina.運営の発表見たか?」
「…ライフアリーナって、あのオンラインゲームの?そんなんあったなー。今さら何の発表だよ?」
「まーもう結構前の発表なんだけど、この前の休みに久し振りに思い出して調べてさ、11月末で開発中止になってたらしい。」
「あーやっぱり?なんかサービス開始時から不具合起こしてたもんな、あれ。ま、俺はもう興味ねぇけど。」
「それなー。あっ!そんなことよりこの前さ…」
_隣の席の学生が何やら騒がしいが、何の話をしているのかまでは興味がない。食事も終わったし、俺は店を出ることにした。
もう4月だと言うのに風が冷たい、今日は厚着をしてくれば良かったと少し後悔した。
一度はゲームの世界に吸い込まれ、脱出するために奔走していた俺だったが、今年からはもうただの受験生。これからの勉強や学校の事なんかを考えると少し憂鬱だけど、せっかく取り戻した俺の人生だ。楽しめないと損な気がするから、何事もゲーム感覚でクリアしてやろうと思う。
俺になら、出来るはずだ。
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