2話 ログイン

東京都秋葉原、某ファミレスでの会話。

「なあ、例の動画見たか?」

「見た見た、超話題んなってたもん。ライフアリーナの実況生配信。サービス開始当日に不具合起こして誰もプレイ出来なかったのに、そいつだけログイン出来たっつーんだもんなぁ。」

「そうそう、それで気になって見てみたものの、突然訳分かんねーコト叫びはじめて、そのまま配信切れたから、結局ゲームの内容は解らずじまいだったんだよな。」

「その生主、あれから昏睡状態らしいぜ?ま、嘘くせーけど。」

「ふーん、やっぱログインなんて出来なくて、苦し紛れに狂った振りしたのかね。」

「それにしてもゲーム公式からのアナウンスは特に無いしな、ちょっと変じゃないか?」

「それな_」

最後まで聞かず、俺は店を出た。

…隣の席から聞こえた会話について、俺は詳しい。

実はその生主ってのは俺の兄貴の事だ。

あの日兄貴は自室で配信を始め、半狂乱になった後意識を失って、病院に運ばれた。

その後両親から、荒れ散らかった部屋の後片付けを頼まれたがいまだ手を付けていない。単純に面倒臭いからだ。

「でもそろそろ手をつけないと、うるさく言われるよな…」

電車に揺られ家に帰り、兄貴のいた2階の部屋へ向かった。

部屋はあの日のままで、時間が止まっている。

割れた窓ガラス、ぶちまけられたゴミ箱の中身、中身を想像したくないペットボトル…

兄貴のこういう不潔なところが、好きになれない。

ふと、デスクに目をやる。

パソコンの電源がまだ点いていた。

「つけっぱかよ…」

俺はパソコンに手を伸ばし、シャットダウンしようとした。

しかし、ディスプレイに映し出されたのは、あのライフアリーナとかいうゲームのログイン画面だった。

「これって…」

あの日兄貴はゲームにログインしていなかった。

その直前の画面で、気を失ったのだ。

つい、俺は興味本意で、ログインボタンをクリックしてしまった。その瞬間。








«ようこそ。クルクマ様 wel come to Life,arena.»







「_え」


俺は目の前が真っ白になった。

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