塔原島郷 改 〜幻想魔術編〜
水霊氷Water ice
第Ⅰ話「最後の会話、最後の戦い」
遥か昔、大日本帝国の時代、一部の街や村が土地ごと神隠しにあったと言う話があった。
近隣の森も無くなっており、多くの人々や生き物が一夜にして消えた。
ーー、こんな話は時代と共に消え去り、人々の記憶から忘れ去られてしまった。
『トウゲンキョウ』
一度は聞いたことのある夢と現実の間にあるとされる楽園、元々は日本列島の一部だった異郷、人々の噂通り一面には様々な花が咲き誇っており、山は全て桜色に染まっている。
今はもう存在しない生き物や、伝説上のモノとされた獣人族がこの世界には平然と共存している。
ーーー、この世界を初めて見たのはまだ年齢が12才の時だった。
それまでは大変な時だったとは言え、体が弱かった俺は親に見放され学校でもいじめられ、お荷物な存在になっていた。
もう生きる希望を失った俺は焼け野原になっていた草原にのど真ん中に立っていた、ここにいれば、死ねるかもしれない、そんなことを思っていた。
「俺は、、、、、、魔術も使えない、、、、世界のゴミ、、、、」
男の子は自分の手を見ながら、ため息をつき死んだ魚の目をしていた。
彼には、生きる希望がなく親の件もあり心は完全に壊れており、物心着く頃にはすでに周りの景色は全て白黒にしか見えていなかった。
「ゴホッゴホッ、、、、」
心身共に限界を迎えており、彼は血を吐いてしまいその場で座り込んでしまった。
茶色くなった草原には生暖かい風が吹き始めた。
だが、もう彼には風を感じることができずただただ草木の揺れるのを音、そして、色を失った景色でしか感じられず、命の灯火が尽きるのを待つのみだった。
「短い人生だったな、、、」
視界は白黒から真っ黒になり初め、彼はもう終わるのだと感じた。
風は次第に冷たい風に変わり、季節外れの雪が降り始めていた。
ーーー
かつて、この世界には魔力といった特殊な力を持つ巨大な獣が多く存在していた、それらは村や弱小な亜人種を無差別に襲い、殺害していた。
このままでは楽園と呼ばれていたトウゲンキョウは地獄となってしまうのを人族はおそれ、ないはずの神に毎日願いをするようになった。
だが、いくら願っても何の解決にもならず日に日に被害が多くなる一方だった。
そんなある日のこと、亜人と人の間に生命が誕生し初めて魔力を持つ、半魔ではあるが人族が現れた。
半魔の子はスクスクと成長し力をつけ、自分で編み出した魔力の応用、魔術を編み出し巨獣を次々と倒していった。
彼の魔力に当てられた人族は魔力を操れるようになり、彼のおかげで魔術も大きく成長し、今や属性魔術なんてものもある。
ー、そして現在、亜人種も増え大きな街や都市ができ、学校などができ始め今は魔力第一の世界へと変わってしまった。
ーー、、、、俺は、この世界が嫌いだった。
能力もなく、魔力もない、次第には体が悪いときたもんだ、、正直辛くてしょうがなかった。
だが、それも今終わった、、次はまともな生活を送りたいな、、、、
「ーーーーー!」
?なんだ、
「お願い、ーーーーー!」
声が、、、、する、、、?
「お願い!ーー!起きて!いやだよ、、、、」
?!この声は、
「そんな、、、、嫌だよ、、、、、グスン」
「海友さん、、ーー君はもう、、、、」
ごめんな、、、海友、、、
今度こそ永い眠りに就こうとした瞬間、また海友の声が聞こえた今度ははっきりと、しかも悲鳴の声が。
「そんな、、、なんで、こんなところに幻獣が現れるなんて、、、」
「なんで、海友さん達の周りに結界を張っているのに、気づかれたんだ?!」
海友は
一緒に来ていた人もなんとかしようとしていたが、結界を維持するので背一杯だった。
「ぁ、、、、たすけて、、、、、、ーー、、、」
幻獣の太振りで結界が破られ、一緒に来ていた少女は吹っ飛ばされてしまった。
もう一度幻獣は腕を大きく上げ、海友のところへ勢いよく振り下ろした。
「くッー、、、、、、、、」
「ーーー、」
「、!、、、、・・!」
海友は何も起きないことに疑問を抱き、目を開けるとそこには、玲依が立っており幻獣の腕を鉄剣一本で防いでいた。
「悲しませて申し訳ない、」
「!、、、、、よかった、、よかった、、生きてる!」
「フンッ!」
腕を押し返し、一瞬のうちに切り落としていた。
「すごい、あんな大きな腕を切り落とすなんて、」
「立てるかい、」
「うん、大丈夫になった」
「そうか、じゃあこのまま幻獣を倒すぞ」
「うん、」
先ほどまで絶望の気持ちだったが、彼が起きて、前に立つだけでそんな気持ちが、雰囲気が消え去り、安心・自信あふれる気持ちになった。
男の子は懐から数枚の札を取り出し、幻獣の周りへと囲み始めた。
(今の体調なら持ち堪えられそうだ、)
「
囲んでいた札から黄色い光柱が現れ、動け無くした。
幻獣は暴れだし、鋭い爪で柱を幾つか破壊するが、待機中の魔力を吸収し瞬時に修復していた。
「今だ!、海友!」
「わかった」
「我が元へ集え、金、火の元素達よ、今こそ天罰をあたてたまえ」
金・火属性魔術「ニュークリアエクスプロード」
幻獣の足元に赤と黄色の魔法陣が現れ、強大な範囲爆発魔法を起こした。
男の子は離れたところに避けたが、熱と風がとてつもなく吹き飛ばされそうになっていた。
さっきまで、白黒の景色しか見れなかったが、今は赤く燃え上がる炎と煙を、周りの景色に色がつき始めていた。
燃え盛る炎の柱は天を貫き、先ほどまで厚い雲で覆われていた空は、夜の暗く明るい風景を見せていた。
「いつの間に夜に!」
「これは、、、、」
俺は幻獣を侮っていた、、、
高密度の爆風の中から結界を破壊し、何事もなかったかのように幻獣は現れた。
奴の体には黒い闇が纏っており、おそらくこの空の現象と関係しているのだろう。
このままでは、海友がやられてしまう、、、
「海友、逃げてくれ、」
「え?」
あまりの発言に海友は驚き、固まってしまった。
そんな状態を元気ピンピンの幻獣は黙って見ているわけもなく高い雄叫びを上げながら襲いかかってきた。
「しまっーー」
「炎符・ヘルブレイズ」
玲依はすごい速さで幻獣の目の前に飛び立ち、
黒い炎を纏わせた鉄剣で、胴体を切り付けた。
幻獣は大きな雄叫びを上げ、周りにある闇が傷を治そうと集まるが、それを黒炎が邪魔をし、回復できずにいた。
「なんて威力の炎、、、」
海友は衝撃で地面に座り込んだまま、動けず見たことのない黒い炎を凝視していた。
「逃げるんだ!海友!」
幻獣は癒えない傷に苛立ちを覚え、暴れ始めてしまった。
「もう、時間がない、、、、」
ー詠唱省略ー
「水符・幻想結界」
複数枚の青色の札を操り、幻獣の周りに現実と幻想の境界の狭間を創り四方に展開した。
続いて、赤、青、白の札を取り出し、詠唱を唱え海友の目の前に門を召喚した。
「神符・三界門」
「これは、、」
「その門をくぐり街に戻って強いやつを連れてこい、俺は抑えることしかできない、」
「、、、、、」
海友はどうすることもできず、悩んでいたが結界に大きなヒビが入り始め、それと同時に門が薄くなりその場で固まってしまったが、男の子の「元気でまた会おう」の一言で海友は意思が固まり、門をくぐった。
「、行ったか、、、、」
結界の亀裂から一部出てきた、魔力の塊である無数の手を剣でながしながら消えてく門の方を確認した。
「さて、続きと行こうか‼︎」
次の更新予定
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