独白
舞風つむじ
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『独白』
私には妹がいた。それも、とんでもなく良くできた妹だ。成績優秀、眉目秀麗、素直な良い娘だ。おまけに家事全般をこなす。そんな妹が私は大好きだった。
私と八歳年下の妹は二人で生活していた。というのも、両親が数年前に交通事故で死んでしまったのだった。私は両親に感謝していたけれど、特別に好きというわけではなかったから深いショックは受けなかった。二人きりで大変でしょう、と親戚は口々に言った。けれど、別に生活に困窮しているわけではない。彼らは私たちが大学を卒業できるくらいの貯金を残していたし、そもそも私は大学卒業間近だった。その上、私は在学中に応募した小説が賞をもらったことで、今もこうして著述業を営んでいる。
本当は、就職して安定した職に就きたかった。けれど、ものぐさな私は就職活動の時期が分からず、知らない間に逃してしまったらしくて就職できなかった。結局本の売り上げも多少あって、今のところはある程度の家計の足しになっているからこれでも別にいいかなと思っている。もし生活が苦しくなったら、その時はまたなんとか考えよう。
家のことは妹に任せきりだからよくわからない。ただ、彼女に特段疲れた様子もない。もし私が彼女と同じように家事をやろうとすればとても疲れてしまうかもしれないけれど、彼女は大抵のことを卒なくこなしてしまうから、きっと大丈夫なのだろうと思う。
少し申し訳ないとも思ってたまに手伝ったりもしているけれど、私は大抵の家事がうまくないし、妹の邪魔になることが多い。だから、お金を稼いでいることを免罪符にして家事はあまりしていない。
このまま一定水準の生活ができて、そこそこ幸せでいれればいい。それで妹は何とかして大学まで卒業してもらって、幸せに生きてほしい。
私はまぁ、結婚願望もないし何か特別な生きる目標があるわけでもない。彼女がここを出たら何とかして生きていこうと思っている。
いや、思っていた。過去形になっているのは私が大きく変わってしまったからだった。
今はもう、そんなことは思えない。私は「罪」を犯した。ここに現前している事実は、もう戻れないところまで来てしまっていることを私に示している。だから、せめてここで私の罪を明かし、それを懺悔とさせて欲しい。その後に改めて、私は贖いをしたいと思う。
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