第22話 防衛組

「鹿山さんのステータスは、見た感じ防御向き、ゲームとかのロールで示すならタンクといったところだな。しかも、ちょうどよくMPも多めだから、自分で自分を回復するスキルをとって、要塞的な役割をするのがあってると思う。」


「ふむ、それはありがたいですね。私の戦う理由は、ここに娘と嫁が居るからなんです。私以外の防衛などをこなしている方も大体が似たような理由ですね。だから、私は殺す力より、守る力が欲しかったんです。」


護るべきものがあるのは、非常に大きな精神的支柱となって、彼を支えてくれるだろう。とてもいい事だ。しかし、娘がいるとは驚きだ。自分と対して年齢も変わらないと思っていたのだが。


「娘が居るのか?失礼だが、鹿山さん、あなた歳は幾つだ?」


「私は35歳ですね。そんな貴方は18から20歳ぐらいでしょうか?」


は?同い年ぐらいだと思っていたのだが、一回り近く年上だったとは。てか、なんで俺が20歳ぐらいに見えるんだ?元ブラック勤めなせいで歳より老けて見えるはずなのだが。


〈それはレベルが上がったからですね。レベルが上がるためには体内に魔力を取り込む必要がありますが、その結果、体に魔力が馴染んでいくことでステータスが上がっていきます。この世界にもダンジョンを起点としてどんどん魔力が充満してきていますからね。〉


その事と、ステータスの上昇、俺の歳が若く見えることにどんな関係がある?


〈世界に満ちる魔力との親和性が高くなることで、間接的にこの世界との親和性が高まります。その結果、世界に及ぼすことの出来る影響が大きくなることでステータスは上昇します。また、それと同時に世界との親和性が高くなり、世界に馴染むことで存在が強固になり、劣化しにくくなります。老化は劣化と同義です。若返っているのは一気にレベルが上がり、急激に世界との親和性が上がった結果じゃないでしょうか。〉


え?じゃ、レベル上げすぎるとガキンチョみたいになるの?ふむ、滅茶苦茶強いガキンチョ。外ずらだけ見るなら面白いな。


〈レベルが一気に上がったからといって幼くなることはないですね。生物学的に、最盛期と呼べる状態で固定されるといった方が正しいと思われます。〉


そうかぁ、じゃあ、鹿山さんが若返っているのは何故だ?別に急激にレベルが上がった訳でもないだろう?


〈彼が若く見えるのは単純に彼が童顔で、レベルが多少上がったことによって健康的になり、肌の調子などがまとめて良くなっているためではないでしょうか。〉


言い方が悪いが、若作りみたいなもんか。まぁ、確かに言われてみればレベル上げし始めてから、親父も若干若く見えた気がする。


「俺は26歳だ。急にレベルを上げたせいで若返ったらしい。」


「なんと!それは驚きでした。レベルにはそんな効果もあるんですねぇ。」


「あ、確かに武さん若く見えるかも。レベルあげたおかげでそうなったのなら私も頑張れば若返るんですか?」


「ああ、少なくとも、少しレベルが上がるだけでも肌の調子が良くなったりして、若く見えるらしい。」


やはり若くあるってことは女性にとって大切なのだろう。お袋含め、うちのチームの女性陣が目を輝かせて話を聞いている。


「おい、武。そろそろ街の方見に行こうぜ。」


隼人に急かされて思い出したが、今回の目的は街の観察と、食糧の確保だった。


「鹿山さんすまないが俺たちにも目的があった。そろそろ出させてもらう。」


「そうですか…。」


多少渋い顔をしているが、仕方ないとは思っているようだ。ただ、この状況をそのまま見て見ぬふりはこちらとしても心苦しい。

なので、


〈親父、聞こえるか?〉


〈武か、急にどうした?俺の方は問題ないぞ。〉


〈いや、街に行く最中に避難所に寄ったんだが、武芸者が居ない上に武器まで揃ってない状況で何とか防衛しているらしくてな。そこの奴らに稽古をつけて欲しいんだ。〉


〈わかった。時間的に今日は無理だから、言ってくれれば行くぞ。〉


〈ありがとう、親父。頼んだ。〉


とりあえず話が着いたので、[念話]をきる。


「鹿山さん、今じゃなくて申し訳ないがまたすぐに来ることにする。その時は、親父に頼んであるから稽古をつけてもらってくれ。」


「ありがとうございます!して、親父さんは何か武道の嗜みがあるので?」


「あぁ、俺の親父は剣道の道場の師範だ。教えるのもそれなりに上手いから安心してくれ。」


「そうでしたか。なんと御礼申し上げたらいいか。」


「いや、礼はいい。今すぐ何も出来ないのが心苦しいが、また来るまでは持ち堪えてくれ。」


「はい、ありがとうございます!」


「じゃあそろそろ失礼する。また。じゃあみんな行こうか。」


「「了解。」」

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