逃走②
「奴」は松本を見るなり、一直線に向かってきた。
―――ただし、「一番近かった」永石ではなく、松本に。
「え」
松本はどうすることもできず、その場で立ち尽くしてしまう。
「奴」のナイフが松本の首元に吸われ―――
生々しい音と共に貫いた。
「―――――――――――ッ!!」
声にならない悲鳴が部屋を包み込む。
仲間の死を目の前で見ることになるとは誰も思いもしなかっただろう。
それだけあって、松本が殺される様は見ていて非情に辛いものがある。
否、見ている暇はない。
「――――――――オマ エ" 、 ラ」
松本がかすれた声で探索者達に伝える。
「――――――――――――――ハ ヤグ、 イ ――」
―――最後まで言い切る前に喉を切られた。
それでも松本は諦めて諦めていない様だった。
先程のくしゃくしゃになった紙切れを永石に渡す――
瞬間、追い打ちをかけるようにナイフでメッタ刺しにされる。
眼球を潰し、腕を落とし、内臓を抉り。
「それ」が松本なのか識別できなくなるまでそう時間はかからなかった。
「ハァハァ...あいつ追ってきてるか?」
「いや、来てはいないっぽい」
松本を《裏切って》逃げてきた探索者達はみんなくらい顔をしている。
「...でも仕方なかったよな」
そう、言い聞かせる。
「で、なんでここに来たんだ?」
石山が尋ねる。
確かにまだ未探索の部屋は沢山ある。
もっと遠くの場所で身を潜める方が確実に良さそうだ。
「いや、「これ」が正しいならここが一番確実だろう」
そう永石は言いながら、先程松本に渡された紙切れを確認する。
そこにはこの階のおおまかな見取り図が書いてあった。
「あいつ、片っ端から部屋を見て回ったとは言ってたけどこんなの書いてたのか...」
でもそのおかげで死にかけたのも事実である。
「で、このメモが正しければここから地下に降りれる」
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