白眉の星

椅子製造機

プロローグ

―――「それ」が起こったのは2022年3月、友人全員の受験が終わり、打ち上げで旅行に行った時に起きた。―――



「ワァオ」

「やりますねぇ!」

「こりゃすげぇわ」

「パシャ(シャッターを切る音)」


それぞれが感嘆の声を上げるのも当たり前、そこには今まで見たことのないような絶景が広がっていた。


彼らは今、半日かけてこの素晴らしい大地へと赴いていた。

誰かが手入れをしているように整っている森、濁り一つない川、そして数え切れないほどの星々が彼らを待っていた。


「めっちゃインスタ映えするやんww」

ここは普段誰も来ないような場所で、最初は怖がって行くのを拒んでいた松本だが、今ではそれを忘れてはしゃいでいる。

「おい、暴れんなよ暴れんなよ...」

それを止めているのは、この不思議な集団のムードメーカー的な存在のりおだ。

平静を装っているがテンションが上がっているのが見て取れる。


―――プルルルル...

さて、これから何をやろうかと考えていた彼に、電話の着信音が鳴った。

相手は勿論、野原である。

「もしもし、もう着いたか?」

「おう、めっちゃ綺麗だぞ」

「いいなぁ...俺も行きたかったよ」

「仕方ないだろ。バイトが入ってたんだから」

「ま、俺の分まで楽しんできてくれ!」

「勿論。じゃあ切るぞ」

「あ、ちょっと待て」

「なんだよ、俺も早く遊びたいんだが」

「いくら人気の無い所でもヤるんじゃないぞ?ww」

...プツッ


何故あいつはあんなにハッピーな性格なのか。そう思いながらはしゃいでいる仲間たちを眺めている彼は、永石と呼ばれている。

今回の旅行を提案したのも彼だ。

「電話、誰から?」

「野原だよ」

「なんか言ってた?」

「いや、特には」

永石と一緒に話しているのはミカ、永石と付き合っているがあまりにもリア充らしくないのでもはやネタにされてる。

「めっちゃ綺麗だね」

「お、そうだな」

そんな他愛のない話をしている。


「オラァ!今日はちゃんと替えのバッテリーも持ってきたぜェェ!!(パシャパシャ)」

一人だけ孤立してシャッターを切っている彼はアキラ、この集まりの中でも屈指のオタクだ。

そんな彼の趣味の一つが写真撮影である。だがオタク故に金が無いので今回のような絶景にはめったに出逢えないのでとても気分が良さそうだ。


「おいアキラ、良いの撮れたか~?」

「おら、364364」

「やりますねぇ!」

「やっぱ最高だわ」

「あとでLINEに送ってくれや」

「当たり前だよなぁ?」

そんなアキラと話しているのは、植村だ。

一見普通の高校生だが、二次元のキャラとゲームに一生を捧げるオタクだ。

そんな彼だが、たまに変わった事を喋りだすので皆から毎日いじられてる。それも第三者から見たらいじめかと思われるくらい晒しものにされているが本人曰く、慣れたとの事。


それぞれが思う存分遊んでいる中、一人それを眺めている男がいる。石山だ。

彼はこの集まりの中でもトップクラスの頭脳の持ち主で、いつも皆に勉強を教えている。

一見穏やかな性格だか、りおがしょっちゅう煽って怒らせている。



皆、とても楽しそうな顔をしている。




―――これから起こることも知らずに、一際輝いてる一等星シリウスを眺めるのだった。―――

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