第13粒「了(不思議な男の人)」
フフフフ…
そうですか
それは
だとしたら
では
この【
この
フフフフ…
さて、
人の想像するモノは全て実現出来る
この
しかし、
おや?
フフフフ…
【短篇集(礫)】
第13粒「不思議な男の人」
嘘から出た
誰もがこの言葉を一度くらいは耳にしたことありますよね?
私はこの言葉の様なことを現実にしてしまう人を見たことがあります。
それは、私がまだ小学生になる前の5歳か6歳の頃の話です。
当時、私が住んでいた家の近所にある公園のトイレの横には、
その人は男の人で、ホームレスと呼ばれる生活をしているわりに臭いや身なりが普通の人と変わらず、なぜかわかりませんが、地域の人々の信頼も厚く、警察の人も公園の近くを通り掛かるとその人に挨拶をするほどでした。
ある日、私と近所の友達のA子ちゃんは公園にある、俗にターザンロープと呼ばれる遊具をやる順番で喧嘩をしてしまいました。
今思えば、どうしてあんなに怒っていたのかわからないほどに私もA子ちゃんも怒っていて、2人して絶交だと言ってその日は別れてしまいました。
絶交と言った通り、次の日から私もA子ちゃんも家の側や公園で会っても一切口を聞かないまま、1週間ほどが経っていました。
そんな時、私と友達のA子ちゃんの様子を見て今までと違うと感じたのか、そのホームレスの男の人が私に話し掛けてきました。
私から事情を聞いたその人は私にこう言いました。
「そうか…ターザンが1列しかないからしなくてもいい喧嘩をしちゃったんだな。よし!そんならおじさんが皆に内緒で明日までにターザンを2列に変えておいてやる。だから、明日になったらちゃんとA子ちゃんにごめんなさいして仲直りするんだぞ?」
この言葉に、友達と仲直り出来るかもという希望をもらい、私はその男の人とターザンロープの件を皆に内緒にすることと、A子ちゃんに謝って仲直りすることについて指切りをしました。
次の日、ターザンロープの様子が気になった私が朝9時過ぎくらいに公園に行くと、男の人の言った通り、ターザンロープが2列になっていました。
子供だった私は、それほど深く考えずにその時も公園にいた男の人へ感謝を伝え、約束通り友達のA子ちゃんに会うなり直ぐに謝って仲直りしましたが、今となってはこの出来事が不思議でなりません。
公園にターザンロープを1基増設するだけでも少なくとも数日から数週間の工事が必要なハズですし、費用も数百万円は掛かるハズなのに、あのホームレスの男の人はたった1日でそれをやってしまいました。
正確には、前日に私が公園から家に帰宅したのが午後4時前なので、それから次の日の朝9時過ぎに公園に行くまでの17時間から18時間程度で、それをやったことになります。
さらに言うと、1列しかないターザンロープを追加で1基増設したわけではなく、1列しかなかったターザンロープがまるで元々そうだったかの様に2列のターザンロープに置き換えられていました。
時が経ち、区画整理や人口の増加などの理由で、その公園があった場所にはマンションが建てられてしまいましたが、今でも私と友達のA子ちゃんを含め、その公園で毎日遊んでいた子供達にとっては、2列のターザンロープで競争をしたことは大切な思い出です。
あの男の人は、私が小学生の時にいつの間にか居なくなってしまいましたが、子供だったとはいえ、その男の人をおじさんと言えばいいのかおじいさんと言えばいいのか、はたまたおにいさんと言えばいいのか、全く判断できない様な人で、普通ならあり得ないことを言って実現させてしまった不思議な男の人でした。
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