第11粒「悪夢」
また同じ夢を見た。
いつもと同じ酷く嫌な夢だ。
夢の内容は口にするのも
普通なら自分がこんなことをする夢を見たら気分を害するのは間違いない。
しかし、俺はこの夢を何度も繰り返し見ているからか、夢の内容自体にはもう慣れていて何も感じない。
ただ、早く夢から覚めたいだけだ。
夢の中での俺は幼稚園児だった。
みんなで楽しく山に遠足にきていた。
夢の中の俺は遠足の途中で好きな女の子を崖から突き落としていた。
シーンが替わり、駅のホームにいた。
ホームには綺麗なお姉さんが一人だけいた。
俺は電車が来る直前にそのお姉さんをホームから突き落としていた。
またシーンが替わると俺は小学生になっていた。
夢の中は給食の時間だった。
給食当番をしていた俺は給食のシチューに家から持ってきたジャガイモの芽をいれていた。
次のシーンは海だった。
泳ぎが得意な俺は潜水をして浮き輪で浮かぶ人の足を次々と海の中に引っ張り込んでいた。
それからシーンが切り替わると中学生になっていた。
俺は夜の道路にワイヤーを架けていた。
そこに暴走族がやって来て次々とそれに引っ掛かり事故を起こしていた。
その次は学校のトイレにいた。
そこは俺の通っていた学校ではなかった。
可愛い女の子が一人そこに倒れていた。
女の子は何を言っても泣くだけだったので俺は女の子の口と鼻をガムテーブで塞いでいた。
次のシーンでは学校が燃えていた。
そこは俺の通っていた学校だった。
理科室で俺と一緒に実験をしていたクラスメイトの袖にアルコールランプの火が燃え移ったと夢の中の俺が説明していた。
さらにシーンが切り替わった。
俺は高校生になっていた。
高校生になって初めて出来た彼女と彼女の部屋にいた。
部屋の中には彼女の両親が倒れていた。
部屋は赤く染まっていて彼女の体も真っ赤に染まっていた。
さらにどんどんシーンが切り替わっていったが、相変わらず内容は目を覆いたくなるような酷いものだった。
最後のシーンで俺は必ず鍵の掛かった部屋に閉じ込められていた。
ああ、今日もまた同じ夢だ。
俺がどんなに求めても俺はこの部屋から出ることはできない。
俺がどんなに叫んでも俺を見る夢の中の人間の眼は人間を見る眼ではない。
何度も何度も、繰り返し繰り返し、寝ては起き、起きては寝た。
何度起きても同じ夢だった。
何度寝ても同じ夢だった。
俺はいつまで経っても夢から覚めない。
俺は何度繰り返し寝ても覚めても悪夢が終わらない。
誰か俺の悪夢を止めてくれ。
誰か俺を夢から覚ましてくれ。
夢から覚める夢を夢見て俺はまた夢を見続けるしかない。
ダレカユメカラサマシテクレ。
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