異世界から帰還したら10年経ってて、彼女は俺の親父と結婚していた

ラピス

異世界から帰還したら10年経ってて、彼女は俺の親父と結婚していた


高校2年生の春、人生初めての彼女ができ、幸せのの絶頂だった しかし、俺は突然、異世界に転移した

つらかった、最悪だった、でも心が折れなかったのはひとえに彼女のおかげだろう

帰りたい、そして彼女に会いたい

その一心で俺は長い時間をかけて元の世界に帰還した

そして、どうやら俺が帰ってきたのは転移した10年後だったらしい

たくさんの出来事が起きていた

当時、有名だった芸能人が引退したこと、なかなか完結しなかった漫画が完結したこと、親戚や当時の友人が亡くなっていたこと、

そして――


「ゴメンね。私、あなたのお父さんと結婚したの」


――彼女は俺の親父と結婚していたこと


 △▼△


俺は今、親父と元カノと同じマンションに住んでいる

何故か親父と元カノに一緒に住もうと誘われた

正直、住みたくなかったが、一文無しの俺には金が貯まるまでそこに住む以外の選択肢はなかった

……そういえば、親父と元カノがどうして結婚したのかという説明は聞かされたが、俺は呆然としていたためどんな内容かはあまり覚えていない

まぁ、そんな訳で俺は親父と元カノとは一切会話がない

ただ住んでいるだけだ


――気持ちが悪い


 △▼△


金はなかなか貯まらなかった

正直、最初の方は、まぁなんとかなるだろうと思っていた

馬鹿だった

まず全然、採用されない

そして、採用されたとしても賃金が安いうえ、仕事が精神的につらかった

異世界では結構楽に金儲けができたので舐めていたと言うしかない

1日中バイトを入れて必死こいて働いた

しかし、体は頑丈だったので肉体的には苦しくなかったのは救いだろう


 △▼△


苦節数ヶ月

やっと一人暮らしをしていく上で必要な金が貯まった

そして、並行して進めていた引っ越し先や仕事も見つかった

本当に長かった

もうここにいる理由はないのでさっさと家を出て行くことにした

一方的に二人に、次の日には出て行くと伝えた

二人ともポカンとした顔をし、すぐに何か言ってきたが無視をして寝た


――気持ちが悪い


 

 △▼△


「…なあ、なんでそこにいるんだ?邪魔だからどいてくれないか?」


朝一番で家を出ようとしたら玄関に元カノがいた

何しに来たんだ?


「……また帰ってきてね。ここは――」


「黙れよ」


息を飲む声が聞こえた

どうやら殺気を少し放ってしまったようだ

だが俺はそれを無視した


「なんなんだよ…!何がしたいんだよッ!」


――気持ちが悪い


「……」


「最初謝ったかと思えば開き直ったように言い訳まがいのことを言ってきて、それになのに申し訳なさそうに俺の顔色見てさ。どっちなんだよ!」


――気持ちが悪い


「…」 


「開き直るなら、開き直れよ!!そうじゃないなら最初からするなよ!!」


――気持ちが悪い


「…」


「本当に、本当に…何がしたいんだよッ!!」



俺はそう言って家を飛び出た



 △▼△


――気持ちが悪い


分かっている


――気持ちが悪い


当然のことなんて分かっている


――気持ちが悪い


10年だ。そして彼女とはただの恋人関係だっただけ、婚約者とか夫婦とかそんなんじゃない。誰と結婚しようが俺を裏切った訳にはならない

親父もだ、お袋と死別し、何も知らない中で出会ったんだ

何も悪くない


――気持ちが悪い


それに、あれらは歩み寄りだった

新しい関係を築くための物だった

悪いのはそれを突っぱねた俺だ


――気持ちが悪い


分かっていながら分かろうともしない俺も、どっちつかずな親父と元カノも本当に


「胸クソ悪ぃな」


俺が間違っているとは思えない

だけど親父と元カノもだ

何が悪くて、何が正しいんだろう


まぁ、分からないし、分かりたくもない



――気持ちが悪い





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