10月
第42話 貧乏人は退屈で攻撃的
10月になりいつの間にかあれだけ鳴いていたセミがいなくなり、季節はすっかり秋。紅葉の季節となった。
進がススムに教えを
「小僧。今回は金持ちとは反対の立場にいる者、つまりは大多数の貧乏人の事について語ろうと思う。これを決して見習わず、反面教師にして金持ちへの道を進んでほしい」
ススムが語り始める。
「いいか小僧、貧乏人と言うのは
普段からの発想が貧弱な奴が退屈を持て余した時が一番危ない。誰かを攻撃してウサ晴らしをするようになるからな」
「ええ? でも「貧乏暇なし」っていう言葉もあるじゃないですか?」
進は「貧乏人は暇」と言うススムの言葉に反論する。説得力が出るよう昔のことわざも使った。
「ほほぉ、大したもんだ。そんな言葉を知ってるとはな。俺が思うに貧乏人は「時間をカネに換えている」要は「時間の切り売り」をしているから暇ではないというのもあるだろう。
だがその他にも「他人をぶん殴ることに忙しいから時間がない」というのもあるぞ」
「他人を殴ることに忙しい? その、具体例は何ですか?」
進は「貧乏人は他人をぶん殴るのに忙しいから「貧乏暇なし」なんだ」というススムの意見の具体例を出させる。
「一番わかりやすい例は「春名風花」昔の「はるかぜちゃん」への誹謗中傷が全てだ。貧乏人は嫉妬、憎悪、怒り、嫌悪まみれで、チンケなプライドを維持するためには他人をこき下ろしていないと死んでしまう、とさえいえるほどの勢いで非難する。
酷い話だが「自分は安全圏内に居ながら憎い相手をブッ叩いて壊す」事が趣味だと言わんばかりのクズも可視化されてないだけで山ほどいる」
ススムの瞳にはハッキリとした軽蔑の意志があった。彼は話を続ける。
「事実、彼女への10年にわたる誹謗中傷に対する賠償金、315万円が請求された後も『俺たち下層市民はせっせこ働いて税金を納めているのに315万円の不労所得を得られていい身分ですね上級国民様』なんていうゴミクズのカスそのものな恥知らずな書き込みを平然とした顔でしている連中だっている。
どれだけ慈悲深い神や仏だったとしても「打つ手なし」とさじを投げるほどの救いようのないクズの中のクズだ。こんな奴が地球に存在していい理由なんてどこにもない」
ススムは「こんな奴らが自分と同じ日本人としてカウントされてることそれ自体が腹立たしくて許せない」と言わんばかりの表情だ。
「他にもコロナウイルスで壊滅的な打撃を受けた旅行代理店に『今まで
小僧、まさかとは思うがお前はそんな書き込みを見ても「スカっとしてストレスが解消される」とは思わんだろ?」
「そりゃそうですよ。言っときますけど嘘じゃないですよ」
進は当たり前のように言う。それを見た老人は
「まぁ安心したよ。小僧はそんなクズではなさそうだからな」
「確か手なれてる人は顔を見ただけで相手が何を考えてるのか分かる、って聞きましたけどススムさんもそうなんですか?」
「まぁな。前にも言ったが年の功というのはバカには出来んもんだぞ。お前が何を考えているかなんて顔を見ればすぐ分かる」
ススムはそんなの当たり前なことだ、と言わんばかりの顔をして言う。
「トランプゲームの大富豪では大富豪が
いくら金持ちが破産しても貧乏人は貧乏人のままだ。そのことに気づかないのが、真の貧乏人だ。
勤めてる会社の社長が心臓発作で倒れたら自分の地位が上がる、もっと言えば社長になれると勘違いしているのが本物の愚か者なんだ。
実際には社内のキャリア組が新社長に就くし、人材が無ければ他所からヘッドハンティングする。そういうものだ。貧乏人は金持ちがいくら死んでも永遠に貧乏人のままだ。それに気づけない愚か者が多すぎる」
ススムは貧乏人の愚かさを嫌というほど知っているのか、大きなため息をついた。
「あと、これも覚えとけ。前にも言ったが貧乏人というのは他人のせいにし過ぎる。
「俺が貧乏なのは政府の政策が悪いんだ!」とか「会社が俺の働きに見合った給料を出していない!」とかな。
他人のせいに出来るのは幼稚園児までだ。そういう意味では精神面では幼稚園児のまま大人になったハナタレ坊主があまりにも多すぎる。
小僧、お前は大人なんだから「自分の不幸は他人のせい」なんていう見苦しい真似は辞めろよ」
「わ、わかりました。
「結構なことだ。今日はこの辺にしとくか」
授業が終わった。
【次回予告】
「今の大学は残念だが清潔な無菌室にある就職予備校だ」
ススムはため息をつきながら愚痴に近い口調で言う。
第43話 「エリートは複数の視点を持つ」
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