第32話 複利の力ってすげぇ

「暑中見舞い」が「残暑見舞い」に変わったものの、まだまだ35度近くまで上がる暑い暑い夏の日が続く。

 4月の初めに最初に教えをい始めてからは大分経ったが授業はまだまだ続いていた。




「小僧、お前も1度は聞いたかもしれん……「複利は人類最大の発明である」もしくは「複利は宇宙で最も偉大な力である」という言葉を遺したのは誰だと思う?」

「え? 確かエジソンかアインシュタインだったと思いますが……」

「ふむ。ズバリ大正解とまではいかないが、知ってるようだな。物理学者だったアインシュタインの言葉だ。

 複利というのは凄まじい力を持っていて、それを有効活用すれば永遠の富が手に入る。だが使い方を間違えれば人間1人の人生を破滅させることなどいとも簡単にできる。それほどの力を複利が持っているのをアインシュタインは知っていたのだろうな」


 ススムの授業が始まった。今回は複利についてだ。


「複利の力を例で示そう。単純計算になるが例えば100万円を月利5%で24ヶ月、つまりは2年間運用したとしよう。

 これが「単利」だった場合は220万円だが「複利」だと約322万円になる。2年で100万円近い差が産まれるのだ。しかも時間をかければもっとこの差は広がる。3年運用すれば「単利」だと280万円だが「複利」だと約579万円、実にほぼ300万円の差になる。これが複利の力だ」

「……」


 青年は複利が秘めるその圧倒的な力を前にしたのか言葉も出なかった。


「もちろん、これはあくまで複利の凄さを体感してほしい為に用意した理論値に過ぎんが、少なくとも複利については学べただろう?」

「は、はい。そうですね」

「でも小僧、お前はすでに借金という形で複利の力を学んでいるぞ。 借金……お前の言い方をすれば「カードローン」か? それも複利だ」

「え!? カードローンも複利なんですか!?」


 進は驚いたのか目を大きく開ける。老人はあきれながらも言葉を紡ぐ。




「何だ小僧、お前はそんなことも知らなかったのか……まぁいい。

 さっきも言ったようにカードローンの借金も複利計算だ。滞納すればするほど借金は加速度的に増えていく。これも複利のなせる技だ。

 今月は苦しい……まぁ実際には毎月苦しいんだろうがな。そうだからと利息を払わずにいて借金が加速度的に増えてしまって結局破産してしまった者も、また聞きを含めればオレが知ってるだけで何人もいる。

 彼らはみな「月の支払いは1万円程度だから」とタカをくくっていたらいつの間にか払えなくなっていた。と口をそろえて言う。それくらい複利というのは膨らむときは一気に膨らむものさ」


 老人は語る。破産した人間の事を思い出しているのか、少し悲しげだ。




「さっきの100万円の話だと、2年かけて開いた100万の差が、次の1年では一気に300万に増えるのを『物凄く急だな』と思わなかったか?

 それこそが複利の力だ。時間をかけるほど、元手が多いほど加速度的に増えていく。これこそアインシュタインが絶賛した複利の力だ。

 小僧、もしお前が複利の力を生かしたければ時間をかけろ。お前はカネを持っていないが時間はある。それを有効に使えばすぐ、とまではいかないが富を築くことは出来るぞ」

「時間……ですか?」


 進はあまりピンとこないのか、講師に問いかける。


「そうだ、時間だ。お前には時間はたっぷりとある。時間というとても貴重な『資源』をお前は持っている。それを有効に使うんだ。

 そうすれば大いなる富を築くことも十分可能だ。もしお前が50代だったらすでに手詰まりだが実際にはまだ30なんだろ? お前にはまだ可能性は十分残っているぞ」

「そ、そうですか……時間ってそんなに大事なモノなんですか?」


 今一つ納得できない、飲み込めない、ふわふわとした態度で進はススムの言葉を受け止める。


「ふーむ……お前は時間の重要さを知らないようだな。よし、良いだろう。お前に時間の重要さを教えてやってもいい。

 小僧、お前が金持ちと出会う時には時間を最重要視しろ。カネなど2の次だ。そうでないと、つながれるはずの関係もつながらなくなるぞ。

 小僧、これから話すことは『自分に支払え』と同じくらい重要な話だ。漏らさずに聞けよ」


 老人の話は続いた。




【次回予告】


「金持ちは時間を最重要視する。人様の時間を無駄にするのは『時間窃盗罪』という犯罪行為である」


なぜそこまで時間が大事だと言い切れるのだろうか?


第33話 「常に時間を意識しろ」

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