第27話 「株って何?」 「『応援チケット』だ小僧」
「ススムさん。「金持ち父さん貧乏父さん」に資産を作れ。って書いてあったので、
その資産である株をやろうかと思ってるんですが株って何なのか詳しく教えてくれませんか?」
「フム、いいだろう。ところで小僧、お前は株に関する知識はどの程度だ?」
「え? いや、それは景気に応じて上がったり下がったりするものじゃないんですか?」
老人は若者に向かってハァッ。と大きなため息をついた。
「小僧、資産を作るという目線は良い。ただ、あくまで目線だけだがな。お前は株に関して何も知らないようだな。富士山頂を目指すなら入念なルート確認と充分な装備品が必要になるだろ? 小僧、今のお前はジャージにサンダル履きで荷物も持たずに富士山に挑むようなものだぞ?」
「う……」
進は痛いところを突かれて言葉が出ない。そんな彼にススムは「株とは何か?」を教え始めた。
「まぁいい。小僧、今日のオレは機嫌がいい。特別に株に関して基本中の基本を教えてやろう。そもそも株と言うのはだな……そうだな『応援チケット』と言えばいいだろうな」
「『応援チケット』……? どういう意味ですか?」
進の疑問に答えるようにススムは語りだす。
「例えばとある会社が新商品の開発が終わって、いざ生産しようと思っても工場を建てる金が無かったとしよう。
そうすると「こういう商品を製造したいんですけどそれを作る工場を建てる資金がありません。後でお返ししますので『応援=出資』してくれませんか?」
と言って株券を売るのさ。それで集めた金で工場を建てて商品を作って売り、儲けが出たら「皆様からの『応援=出資』でこれだけの利益が出ました。これはお返しです」と言って株価が上がったり、配当金が出たり、株主優待がもらえたりするのさ」
「配当金? 株主優待は知ってましたけど……」
「株を持っていると持っている量に応じて配当金と言ってカネがもらえるんだ。大体は決算の年1回か、本決算と中間決算の年2回払っている。
まぁ誰もが株自体を売り買いして利益を出すと思っているから注目されにくいがな」
老人は話を続ける。
「それともう1つ、株には「会社の経営に参加できる権利」というのもある。小僧、お前は『株主総会』というのは聞いた事があるか?」
「え~と……どこで聞いたかはわかりませんが確か聞きましたね」
「その程度の知識か。株主総会というのは株を持ってる者が招かれ、経営陣に直接モノを言う機会の事だ。もちろん持ってる株の数が多ければ多いほど発言力も強くなるし、仮に小僧、お前がある会社の株を全部買い占めればその会社はお前の物になるぞ」
「ええっ!? か、会社が俺の物ですか!?」
思いもしなかったススムの発言に進は驚く。
「そうだ。実際大企業が別の会社の株を買い占めて完全子会社化することも決して珍しい事ではない。まぁとてつもないカネが要るから個人でやるのは無理な話だろうがな。株に関しての基本は『応援チケット』と『会社の経営に参加できる権利』この2つだな。これらさえ押さえておけばまあ間違いはしないだろう」
ススムによる、株に関する簡単な説明は終わった。
「しかし、ススムさんの言う事は分かりやすいですね。スルスル頭の中に入っていきますよ」
「フッ、褒めたって何も出ないぞ。オレも無駄に長生きしているわけじゃない。難しい事を簡単に説明するのもわけない事さ。
これからも小僧の頭でも分かるようにかみ砕いて教えてやろう。ありがたく思えよ。あと6時起床も6万円を貯めるのも続けろよ。
何事も続けるというのは根気がいるが、普通の人間は続けることが出来ないから脱落していく。金持ちになりたいのなら続けることだな。大抵の人間は続けるだけで成功できる。まぁがんばれ」
その日の授業は終った。
【次回予告】
ススムは「投資や投機をやる際に『投資』や『投機』のままでいることが重要だ」と説く。その意図とは?
第28話 「投資と投機とギャンブルとレバレッジ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます