第19話 本を読む習慣
6月末日の前日……進は言われた課題を2つ持って老人の目の前に現れた。
「小僧。課題の成果を2つ提出してもらおうか? まずは6万円だ」
「はい。これです」
進は封筒の中に入っていた6万円をススムに見せた。それを見て彼はうん、と深くうなづく。
「良いだろう、次は読書の課題だ。小僧、確か『バビロンの大富豪』を読んでいたそうだな。軽くでいいから何が書かれていたか言ってもらおうか?」
「バビロンの大富豪は……まず自分に支払え、それと自分だけのカネを働かせて増やせ。というのがありましたね。っていうか前にススムさんが言ったことがそのまま載ってましたね。もしかして元ネタはコレですか?」
「バレたか。そうだ、この本からとったんだ。でも役に立っただろ? 実際貯金ができなかった小僧がカネを貯められるようになったし、借金の返済もできるようになったではないか」
ススムはどこか誇らしげに語る。
「オレから言いたいことは、本の内容は問わないから読む習慣をつけろという事だ。
最初のうちはマンガ本でもいいからとにかく本を読む習慣をつけることが重要だ。多くの者はここでつまづく。
学校通いの際に読みたくもない教科書や読書感想文の本を無理やり読まされ、読みたいマンガは親から禁止される。となると本を読むことが「苦痛」となる。
実際、読解力が高い子供の部屋にはマンガ本がたくさんあり、低い子供の部屋には大人でも読むのが難しい本がたくさんあったそうだ。
読みやすい本を読み続ければ読解力は自然と伸びるし、難しい本をムリヤリ読ませようとすれば逆に落ちる。その証明だ」
ゴホン! とススムは咳をつき、話を続ける。
「教科書や読書感想文で本を読まない、読みたくない習慣をつけるのは学校教育の中でも特にひどい『巨悪』だ。これのせいで何人の才能の芽がつぶされた事かわかったもんではない。日本経済の停滞の原因の1つがこれだとさえいえる。将来を担う子供たちに確実に悪影響を与える悪習だ!
しかも親も同じように学校教育を受けているから、これは世代から世代へ受け継がれてしまう負の連鎖ですらある!
親の教育格差がそのまま子供の教育格差に悪影響を与えてしまう! これ以上
ススムはふぅっと一息つき荒げた声を整え、普段の声のトーンに戻して改めて進に向かって説く。
「すまんな、つい声を荒げて。幸い小僧、お前は朝早起きする習慣をつけている最中だからそれとセットで本を読む機会も作れ。そうすればいい流れを作ることが出来るぞ。何度も言うが大事なのは習慣だ。
習慣さえつければあとは自然と成果はついてくる。本を読むのが習慣になれば後は知識欲に従って読めばいい。
最初のうちはアマゾンで高い評価を得ている本を読めばとりあえずハズレを引くことはないだろう。慣れてきたら書店を回ることだな」
「書店って……アマゾンがあれば十分じゃないんですか?」
進の反論にススムは鋭い眼力を向ける。
「甘いな小僧。書店を
書店で買う際は少なくとも3~4店ハシゴしろ。書店にはオススメの本が目立つように陳列されている。
もし複数の店舗で
本の巻末には大抵『何年何月何日に何回目に刷られたか?』が載っている。刷られた回数が多ければ多いほど役に立つ本である確率が高くなる。
それだけ売られ続けているというのは内容がある、それも時代を問わずに不変的な内容という証明だからな」
ススムの話は続く。
「他にもオーディオブックと言って「耳で聞く本」というのがある。それを使えば本を読む時間が無くてもモノに出来る。それを使ってもいいだろう。
それと、本を読む際には1回だけ読んで終わり。じゃダメだ。何度も読み返して脳に刷り込ませるんだ。そうしないと本当の意味での血肉にはならん。
少なくとも1冊につき期間をおいて最低3回は読め。そうしないと使える形で頭に残ることはない。せっかく本を読んだのに時間とカネの無駄になるぞ。それだけは避けろ」
「!! さ、3回もですか!?」
「最低そのくらいは読まないと頭に入らん。オレも「バビロンの大富豪」はかれこれ20回以上は読んでいるがそのたびに新しい発見がある」
次は「金持ち父さん貧乏父さん」を読め。とりあえず1ヶ月もあれば1回位は余裕で読めるはずだ」
その日の授業はそれで終わりだった。
【次回予告】
給料が20「万」円だろうが、20「億」円だろうが、貧乏人は貧乏人。とススムは言う。その真意とは?
第20話 「収入が多いだけの貧乏人」
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