第4話 まず自分に支払え
その日、ススムは進に金持ちになれる方法の核の部分と言える重要な教え、純金にして5キロ……2500万円は軽く超える値に相当すると言うものを渡そうとしていた。
「良いだろう。オレの課題をクリアー出来たからな。では早速だが次の課題を与える。ここでは月末日が給料日だそうだがお前の給料は月いくらだ?」
「20万かそこらです」
「わかった。じゃあ1週間ほど前に給料が出たばかりだろ? そこから「2万円」を天引きして別にとっておけ。それを今月の給料日前日に持ってきてくれ。
専用の銀行口座を開設してそこに振り込むのが一番いいだろうが、専用の封筒に分けてとっておくのでもいい。
とにかく2万円を天引きして別にとっておけ。なぜだかわかるか?」
「? いえ……」
「まぁ分からんだろうな。では教えてやろう。金持ちになりたかったら「まず自分に支払え」という事だ」
「自分に支払え……?」
進の疑問に答えるように、ススムは語りだす。
「ほとんどの人間はまず「他人に支払い」をする。
服を買ったら服屋に支払い、食料品を買ったらスーパーに支払い、賃貸物件に住んでいるのなら大家に支払いをしている。
他にもネット代、スマホの通話料に通信料、光熱費、電気ガス水道……これは全部お前のための支払いではない。全て「他人への」支払いだ。
そして『全ての支払いを終えた後にお金が余ったら』自分のために使う、と思っているからこそカネが貯まらんし、ましてや投資資金も確保できん。
だからこそ天引きなんだ。強制的に天引きすれば残りのカネで生活せざるを得なくなるからな」
「でも、気を付ければ月末にお金は余るんじゃないんですか?」
進の進言にススムはハァ。と深いため息をつき、さも嫌そうなものを見るような目つきで反論しだす。
「分かってないな小僧。じゃあ聞くが、貯金はいくらある?」
「生きていくのにカツカツでとても貯金する余裕は……」
「それ見た事か!」
ススムはビシリ! と一喝する。
「「月末に余ったら貯金しよう」なんていう
思い出してみろ。「月末が近いけど思ったよりもカネが余ってるから食事に行こう」と考えて、特にこれだという理由が無くても外食に出かけたのは1度や2度ではないはずだ。
もちろんオレも昔はそうだった。そういう体験は嫌というほどしているのに辞められんものだ。だから強制的に天引きなんだ。
昔、「5000兆円欲しい!」なんていうバカげたものが流行ったが、それだけのカネがあっても多分10年もしないうちに全額使いつぶすだろうな。それくらい自制心というのは信用できないものだ」
ススムはふぅ。と一息ついて話を再開する。
「実際、働き盛りの30代や40代でもその中の実におよそ2~3割が「貯蓄ゼロ」というデータがある。これは「自分に支払う」ことが出来ていないからだ。
「カネが無い恐怖からイヤイヤ働き、カネがある事で湧きあがる欲望のままに使う」という生活を送る者を「金持ち父さん貧乏父さん」という本に出てくる「金持ち父さん」は「ラットレースのネズミ」と呼んでいた。
なに安心しろ小僧。お前自身が「ラットレースのネズミ」ではないのか? と気づくことが出来れば抜け出すのは簡単だ。
その脱出方法の1つが天引きであり、まず「自分自身に支払う」という事だ。
今月の給料日前日に2万円を見せてくれ。銀行口座の通帳でもいいぞ。小僧、お前ならできるはずだ。待ってるぞ」
その日の話はそれでおしまいだった。
【次回予告】
サッカー選手がバスケットボール選手を「ズルい」と言う。金持ちは1日に8000時間働いていないとズルをしていると言う。その真相は?
第5話 「金持ちはズルいという愚かな考え」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます