ティアル・ナ・エストレア ー青髪の双子の王子ー

涼月

第一章 伝説の始まり

第1話 宇宙の彼方の物語

 群青に染まるそらの彼方。

 煌めく雲の片隅に、地球と似た青い星がある。


 エストレアと名付けられたその星は美しく、宇宙そらの神に愛された。



 最高峰、宝燐山ホウリンザンの麓に広がる緑の森の奥深くには、滾々と湧き出る透明な泉があって、凪いだ水面は昼の空の青を写し、夜の星を瞬かせた。


 宇宙の神はその畔に、一組の男女の命を授けた。

 

 そして二人に一振りの銀の剣と、宇宙を閉じ込めた藍色の石の指輪を与えたのだった。

 

 こうして、エストレア星に人の世が始まった。


 

 その数を増やし、エストレア星の全土へと散って行った人々は、辿り付いた先で苦難の果てに、それぞれの生活を築いて行った。

 それは、人種の違いを生み、民族の違いを生み、その違いゆえに誇りと団結と、排斥の心を生み出した。


 長い長い年月の後、森の奥の小さなのことは人々の記憶から薄れていったが、剣と指輪を守る者のことだけは、『ティアル・ナ・エストレア(エストレアの希望)』と呼ばれ、伝説となった。 


 だが、その伝説も、やがて人々の記憶の奥深くに眠るおとぎ話となってゆく。


『ティアル・ナ・エストレア』がどこにいるのかも、その真偽でさえも、定かで無くなった。

 最早人々は伝説を忘れて、日々を生きていた。


 これは、遠い遠い宇宙の果ての物語―――

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