第9話 チョロイン

 はぁ...こんな暗くなってる中、公園に入っていくのは...傍から見たら不審に見えるか...?...はぁ............


 あ...そういえば、この間あの公園に...いたあの...なんだっけ...?不審者......いるかな?いたらやなんだけど...。ちょっと気持ちを落ち着けたいだけだから............どうですか~~~~?おっ!!!


 いない!!いない!!おっ♡おっ♡おっ~~~~~~♡......時間の問題か...?この間は、夜中だったしな...


 う~ん...まぁ...いいや、取り敢えず、定位置につこう...いつものベンチ...。う~む、どっちが不審者かわからんなぁ...っち...


 はぁ...寒い......


 思い描いてたものとは違うな...全部...今日も.........。中田さんは...結局なんだったんだろう。でも、なんとなくだけど...もう、喋ることはないのかなぁ...。やだなぁ...。僕は結局一人で浮かれてそして、勝手に人が傷ついて...また、一人になったんだ。


 あぁ...暗くなってきた...寒さも増してくる......。

 

 あ...カップルだ...。大学生だろうか...。いや...違う...大学生...?少なくとも、顔は見えないが恰好は若いな......coupleじゃないし...5人ぐらいいる。暗くてよく見えないが...こっちに近づいてる...?なんだ...?気のせいか...?男1女4か...?...うっ.........なんだ......全員よく見たら何か胸に...光る小さな物をつけてる?反射で光ってるようにみえるのか...バッジか?ちょうど弁護士バッジみたいな大きさだな...。


 こっちに近づいてきてる。自意識過剰ではない。本当だ。目標が僕じゃないとしても、こっちに来てることは確かだ。どいたほうが良いでしょ。まともに顔も見れないんだからさ...。それじゃ......


 「ちょっと待ってください」


 ...え?僕...?


 「そう、貴方です、貴方...」


 若い女の子の声がする。世間を知らない...全能感の籠った声だ。希望に溢れた声だ。


 う...苦手なんだよな...そういう、THE 大学生みたいな人...。いや、声だけでそこまで判断するのはおかしいな...。いや、それより...なんで僕?


 いや...なんだ、この集団...?


 「...なんですか?」


 この集団は...なんなんだ?日も落ちようとしたくらい公園の中...いたとしてもランナーぐらいだ。犬の散歩も寄り付かないし、子供連れはもう帰ってる時間だ。こんな時間にわざわざ公園にいる人間は...暇を持て余した人間か...帰れない人間...もしくは...何かしら目的のある人間...か?


 「私たち怪しい者じゃないですよ~、ただちょっとお時間よろしいですか?」


 今が一番暗い時間だ。夜と昼が移り変わるちょうどその時、だからだろう、人影は見えるが、誰が喋っているかは分からない。影がこっちに語り掛けている。もう、すぐそこで。不気味だ。


 ...オジカンヨロシイデスカ?.........業者か...?宗教勧誘か?どちらにせよ...ごめんだ。勇気を...勇気を...。


 「あ...ちょっと...」


 「男を探していてね...おっさんだよ...ここで回ってるはずだ」


 お前...今まで一言も声を発していなかった男か?男の声だ。一番中央で女の子に囲まれている。喉に絡みつく様な声だ。


 回ってるおっさん...あの不審者のことか...。探しているのか?あの不審者を...


 「君、ここ良く来てるよね?見たことある...よね?」


 !?!?!!?良く来てる...!?なんだ...こいつ...。ばれてたってことか...???ばれてる...?有名...?ここらへんじゃ...?中田さんも見てたみたいだし...。え......。...まぁ...それはいいとして...。


 正直に言えば良いのか...?なんで、あの不審者を探ってるんだ?言っても良いのか...?あの人が危ない目に合うのでは...?いや...でも...不審者だしなぁ...。


 ...よくわからんけど...まぁいっか。別にいっか!


 「はい...この間見ましたね」


 「そっか!そうだよね」


 「私たち、その人の知り合いなんですぅ、だからに夜ここでぐるぐるしてるっていってて...さすがに止めたいなって思ってて...」


 あ!成程!!また、違う女の子の声だ。甘い香水...。


 そういうことだったんですね!なら協力しないと!!


 「確かに...ちょっと傍から見てて不審ですからね...」


 「あぁ...すいませんね本当に...私たちが言ってあげたらやめてくれると思うので...ちょっと...待ってくださいね...」


 なにか、ごそごそしている...。近づいてくる...より強く...甘い香りがする...。すぐそこに来て顔が見える。茶髪の理髪そうな顔をした...女子大生だろう。笑顔が...香りも相まって甘ったるい...。上瞼にはうっすらとラメが見える...。


 「これ!私の番号です!お兄さん!その人見たら、電話してください!私たちみんな割とここら辺に住んでるので!別に用事無くてもかけてきて良いですよ!玲って言います!」


 ...電話番号...を書いた薄い紙。女の子の番号.........え!!う~///////


 「折角、こんな偶然会ったんですから!仲良くしましょうね!お兄さん!」


 これは...なんだろう...心臓が鳴ってる......。これが...恋...?ツキが回ってきた...?へ!????手を...握った!!!!!!!!へ...!!


 可愛い...見たことない...こんなかわいい子...。


 「よろしくね!木村さん!」


 可愛い......電話しなきゃ...。

 

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