第8話 釈然としない

 これどうしよう...。このリュックサック...基本色が黒で背負う所に少しピンクっぽいラインが入っている...そういえば中田さんの服と同じ様な感じだな。歩きやすそうなシャカシャカした薄いピンクのパンツと、上は確か...良く分からないけど黒にピンクのラインが入ったアウターを着てたな...。


 ボーイッシュとまではいかないが、どちらかと言えばスポーティな感じだった。髪型はセミロングで服装はスポーティ...か。セミロングだからスポーツはあんまりやらない...?いや、髪型は関係ないか...結べば良いし...。


 それにしても...なんで逃げたんだろう...。なんでかは、分からないけど、多分僕のせいだ...どうしよう...。どうしよう...いや...どうしようもない...。


 う~ん...このリュック大学から帰って来てそのままだから財布とか入ってるんじゃ...ていうか、明日も平日だから大学あるだろうし...なかったら困るよな...。えぇ...でも、少なくとも今すぐこれをどうにかするっていうのは...届けに行くにしても良くないな...。タイミングを計るべきだ...そんなタイミングある?まぁ、少なくとも今行くっていうのは良くないな。


 ていうか、これで中田さんが...大学に行けなくなったら......ってあれ...また、あの...知らない子と重ね合わせてる...。もう、今は一旦忘れよう。取り敢えず、今重要なのは、このリュックをいかにして中田さんに返すか。後...その...できれば遺恨が残らない形に...。いや...一度嫌われたり、引かれたりしたらもうきつか...。


 取り敢えず...上の階だったよな...何か紙にリュック置きっぱなしって書いて郵便受けに入れとく?今できるのはそれしかないよな...気づくかな...?


 よし......はぁ......


 「中田さんへ 本日、私の家にお越しいただいた際にご不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。また、退出なさった際にお荷物をお忘れになられておりますが盗難の危険性もありますのでおいそれとそちらに持っていくことができません...」


 えっと...続き...なんて書こう...。いや、そもそもなんで謝ってるんだ?まぁ、何かしらこちらに原因があった事は多分間違いないんだろうが...具体的に何が悪いのか分からないし...。


 ぴんぽん...?来客か...?いや中田さん...?え...あ...中田さんだ...マスクつけてる...。...そうだ、荷物取に来たんだよな...持ってこなきゃ。


 「あの...中田さん...これ」


 ドアを開けると...中田さん。なんだ...目を合わせてくれない。ずっと下を見ている。


 「リュック...忘れてましたよ...?」


 中田さん...?


 「え?これは...?」


 中田さん...!?え...?行っちゃった...


 リュックは返せたけど...なんだこれ...?手紙......?ちょっとだけ、よれた紙...。ノートか何かの裏紙かな?急いで帰ったあとこれだけ書いて、持ってきたのか...?それにしても、ひったくらなくても...もうちょっと優しくとれば良かったのに...リュック...。


 はぁ...ドアを閉めて...鍵を閉めて......ソファベッドに...よいしょっと。手紙か...?A4紙に書かれた文章か。高校を思い出すな。


 読むのは後にしよう...。


 はぁ...気持ちが...落ち込んじゃうなぁ...。自分に何かしら原因があったかもしれないのはなんとなく分かってるけど...あんなあからさまに引かれたら...ちょっと悲しいな。なんだろうこの気持ち...これが、悲しい...!?ありがとう...私に感情を教えてくれて...。こういう時どういう顔をすればいいのかしら...。


 ......


 いや...やっぱり今読むか...。中田さんが何を思っていたかは正しくは分からない。こっちに原因があったかも......いや、多分そうだけど...多分...でも...分からない...正しくは分からない...。だから、どうせ読まなかったらぐぢぐぢ何か分からない事で悩んで...多分読むタイミングを失うだろうな。だから、今読んで...それで何かしら分かったらすっきりしよう...。


 ......どれどれ...


 「木村さん 今日はせっかくお邪魔させていただいたのに失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした。これは、私の性格から来ている物なので決して貴方のせいではありません、どうかお気になさらないでください。


 しかし、非常に失礼な頼みであることは理解しているのですが、どうか今後私を見かけても話かけないでください。礼儀知らずであることは重々承知しております。でも、どうかお願いします。


 ごめんなさい。でも、お願いします」


 ...はぁ.........。なんだろうこのため息は。結局何も...いや、自分に原因が無いってこと以外分からなかった。それも方便であるかもしれないけど...。なんだ、この気持ち...。わかんないなぁ.........。


 はぁ...公園でも行くか...。


 


 


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