第7話 アンドロフォビア
なんで、こうなったんだっけ...?なんで、電車の隣の席に知ってる女の子が座ってるんだ?そうだ、上の階の子だから家に遊びに行っていいですか~って言われたんだ!いいよ~~~~って返したから一緒に帰ってるんだ。なんで~~~~~?????ちょっと難しいね~~~~~センター試験の数2Bぐらい難しい~~~~~~。
そして~~~~~電車の中で会話が無い~~~~~なんで~~~~~~~~~~~??????????????もうちょっと、あの...相手を楽しませる努力とかしたらどっすか俺君?俺さんならできるよぉ!!頑張れ!野球のお兄ちゃん!!...すまん...無理だわ...。何話して良いか分からんし...どこまで聞いて良いのかもわからん...。そもそも、まだ詐欺とか勧誘とかじゃないって決まったわけじゃぁないし...。
そもそも、この人名前も知らないんだが...名前ぐらい教えてくれても良くない...?何が好きかも分からないし、どんな人間かも分からない。いや...ちょっと、待てよ...あんまりコミュニケーションがうまくないって事は分かったな。奇遇だな!だが、それだけ。コミュ障が分かったところでまず自分ではどうしようも無いし...ってそうじゃなくて...。
うぅ...気まずいよぉ...。この人、携帯をいじる訳では無いし...ただただ黙りこくったまま座ってるだけ...。車内はガラガラだけど...ここまですいてる中で、隣に座ってるから明らかに知り合いなのに沈黙を貫いてるから...対面に座っているサラリーマン風の男にちらちらと痛い視線をプレゼントされちゃっているぞぉ...。どおしよぉ...。う~ん...。
「あ...名前...なんて言うんですか?」
勇気が溢れ出た!!だけど...。えぇ...なんで、そんなに露骨に嫌そうな顔を向けるんだ...。なんなんだ最近、勇気を振り絞って何か行動したら大体後悔する結果が待ってる。なんだ!?不幸だ!報われなさすぎる!!どうすればいいんだ!!チャーチル教えて~~~~~~!!!
「......中田です...ごめんなさい」
ゴメンナサイ......?なんで...?なんの謝罪なんだ...?
...
いいや、あんまり突き詰めても嫌だろうし!せっかくだから素直にその謝罪受け取っておくぜ!!
次は~~~荻窪~~~荻窪~~~~
おっ!!やっと着いた!!これが一日千秋ってやつか!!くっそ!!めちゃくちゃ長かったぜ!!五億年ボタンを押したけど100万円が出てこなかったぞぉ~~~~!クレームいれてやるわい!!
それにしても...中田......。聞き覚えは......う~む...分からん。無いな。じゃあ、あの、やたらと思い出された子は...この子じゃない。ってことか...まぁ、それはそうか。そんな偶然があるのがおかしい。
さて...そろそろ家に着くけど...本当に何もしゃべらないな。いや、こういうのはこっちから話しかけたほうが良いのか?でも、さっきのあの嫌がる態度からして、あんまり話したくないのは確かなんだが...。だが、そもそも話もしたくない相手の家に行こうとするか?
この中田さん...は何かしら事情があって話せない?外では?いや...でも...大学では話てたしなぁ...。
「ふぅ...えっと...やっと着きましたね...ここって......駅からちょっと遠いですよね?」
あぁ話しかけてきた...。わぁ!?びっくりした!なんだ、なんだ急に!どういう仕組みなんだ?...う~んあんまり突き詰めてほしくないかもしれないし...普通に話そう...そういう風に努力しよう。
「えぇ...本当ですよね!だから、毎朝きついですよね!!いっつも疲れっぱなしですよ!」
あ~ん...そうじゃない...。なんか、もうちょっと、会話の順序があるだろう。そんなに詰め込むなぁい!!いや...てんぱっちゃってる...。普通に、人と会話するの自体あんまりしないから...バイトも人と殆ど話さないし...。女の子となんて特に話すきっかけもないし...。
あ...そうだ、この人を家にあげなくちゃいけないんだった...。なんなんだ...ていうか本当に...?
あぁ...もう、やってみてから考えろ!!
「ちょっと散らばってるかもしれないですけど...どうぞ、ご遠慮なく」
う...うわぁ...初めてだ...うちの敷居を自分以外の人間が跨ぐのは。アポロ11号を見守った人たちもこんな気分だったんだろう...。まぁ、到着先は炊飯器とPCと机とベッドと冷蔵庫とキッチン、バスユニットだけで構成された殺風景の具現化だけど...。
「おじゃまします!」
あれ...?この人...やたらと元気だな?さっきと比べてだけど...。あれ?まぁ...事情が色々あるのだろう。
「今日はごめんなさい、急に...本当、急でしたよね、押しかけちゃってごめんなさい!」
本当に元気だな。別人か?
「いえいえ...大丈夫ですよ...一人暮らしで寂しい日々を送ってますので...適当にくつろいでてください」
えぇっと...取り敢えず...なんだ?お茶?お茶出さなきゃ...。でも、緑茶とかないけど...あぁ...そういえば冷蔵庫に麦茶あったよな...それでいいか?選択肢が無い!決定!コップは...あった...良かった...ずぼらだから5個ぐらいを用意していちいち洗わなくてもいい様にしてたんだった!まぁ...これは、実家からおくってもらったんだけど...。
「こんなものしかないですけど...」
中田さん...立ち尽くしちゃうか...そうだよな...座るものがないからな...囲う机も無いし...。まぁ...麦茶でもどうぞ!
「わぁ、ありがとうございます!!頂きます!」
「すいません...もし、よければそちらに座ってください...」
しょうがない...そこのPCの椅子に座ってくれ...いつまでも立たせておくわけにはいかないからな...。椅子買うべき...?いや...ざぶとんぐらい用意しておくべきだったか...。でも、人なんて来ないんだし...しょうがないじゃん...まぁ、いいや...。俺は、このソファベッドに腰かけるわ...。
「私、こっちに越してきて、分からないことが多いけど、一人だったので色々心細かったのですが、まさか下の階におんなじ大学の人がいるなんて思っても無かったです!!」
うん...?心細いかもしれないが...だが...それが知らない男の家に行く理由なのか...?あれ...そういえば、洗濯ほしたっけ...?ベランダに昨日干した記憶があるような無い様な...じゃあ、あんまりカーテンは空けないで置いたほうが良いな...。...そういえば、名乗ってなかったな。
「あ...木村って言います...」
「あ!すいません、普通もうちょっと最初に名前は聞きますよね、ごめんなさい!つい嬉しくて忘れてました...!」
嬉しくて...?ってどういうこと...?
「やっぱり、女一人だといろいろ心細いですよね...近くに同じような人がいて、本当に安心したんです!」
そっか...心細いんだ。まぁ、一人だとそっか...。心細い...?一人だと...?あら~~~私心細いわぁ...。まぁ、確かに困ることはある。明らかに人との交流関係が無い事で不利益を被ってないとは言えない...かもしれない...?わかんないなぁ。比較ができないんだもん...。同じような人...?中田さんも、友達いないのかな...?
「よかったです...」
あ...何はなせばいいんだ.........。分からん...そもそも、家にいれてよかったのか?何故、こんなにも態度が違う...。こっちはおいてかれっぱなしだぞ...もうちょっと...こう...あの...合わせて貰ってもいいんじゃないですかねぇ...。ペースに乗れないよぉ...。
「木村さんはどこから来られてるんですか?ここら辺の人なんですか?」
「ええっと...私は地方から上京してきて...長野のほうから...来ました...」
「えぇ?、奇遇ですね!私も長野のほうから来たんですよ!」
長野のほうから来て、一人で暮らしてるのか...。それは、確かに色々大変だな...。
「ごはんとかどうしてるんですか?」
「......バイト代でなんとか...」
「えぇ...すごい!私はほとんど実家に頼りっぱなしなんですよ!木村さんじゃあ料理とかされるんですか?」
料理する...。まぁ、しないわけではないけど..米は炊くし、パスタもゆでるし...卵は割るし...作ってる...料理してるわ!!すごい!!コックさんみたい!
「...はい...それなりに」
このまま、ちょっと抑えめに話そう。つい張り切りすぎると、踏ん切りがつかなくなって延々と話しちゃう。壊れたレコードみたいになるから。
「おぉ!本当に何かあったらちょっと頼らせてもらいたいですね!あはは!」
う~ん...なんだろう。そんなに不用心で大丈夫か...?いや、考えすぎか。最近の子は異性の家にいっても物怖じなんてしないんだ。考えすぎなだけだ。考えすぎなだけ...。
......
あ...。沈黙......何か言わなきゃ...でも何を...何を言えばいいんだ?こういうとき何を話せばいいんだ...?何を話す...①地元トークいや...これは駄目...長野はでかい、つうじなければ終わり...②この辺の事情...これはいいかも...。
「あの...食品とか...どこ買いにいってます...?」
「ええ...私は、あのここからちょっと行った駅前のスーパー、分かります?そこでいっつも買ってます、安くていいんですよね!」
「そうですね!特に豚肉とかこの時間になると安くて、ついつい買いだめちゃいます!そんなに使わないのに、無駄に使っていっつも余らせちゃって困るんですよ!あと、牛乳も安くなってたり...あっ」
やばい...一気に話過ぎた...なんでだ...気を付けようと思ったばっかりだったのに。料理の話でここまで盛り上がってるのは僕の内だけだぞ!ひかれてる!相手に引かれてるぞ!
「豚肉ついつい買いだめちゃいますよね~分かります!余らせちゃったりしたら、私は全部まとめて鍋にしたりしてます、意外となんにでも使えるから助かりますよ!牛乳も安くなってますよね!普段、150円くらいの物もタイムセールでこれぐらいの時間になると2割減とかになって本当に安くなるんですよね!分かります!」
あ...あれ...?良かったのか...?さっきの...自分では一気に話過ぎって思ったが...普通に話せてる...?あれで、良かったのか?いや...だが...一気に話過ぎたのでは...あれ...?いや...いいのか...?
「タイムセールですね!大体、今...これくらいの時間でしたっけ!すごい、助かります!タイムセールのお陰で素パスタ食べずに済んでる感じですから、タイムセール様様です!もう、スーパーのほうに足向けて寝れませんよ~」
あぁ...また、出ちゃった。相手は素パスタなんて興味ないし、聞いてもいない。タイムセールにだってそこまで感謝してないかもしれな...
「本当ですよね!私たち、セールに生かされてるみたいな物ですよね!もう感謝しかないですね~!」
あれ...会話が通じてる。相手は気持ち悪いとか思ってない?あれ?いや...でも、人と話すの苦手だし...高校時代とか特に話すのが...でも...普通に話せてる...?あれ...?これが会話?あれ...?楽しい...?
いや...僕の話方はそんなにいいとは言えない筈だ。もっと、良い話し方はいっぱいある。もっと、落ち着いて話す...でも...楽しいな...つまり間違ってない...?いや...違う。この...中田さんが良い人なんだ。こっちに合わせてくれてる。
「もう感謝してもしきれないですよ!」
これが、会話か。久しぶりに思い出した。楽しい。楽しい。楽しい。
「あ...そういえば、私いま仕送り含め食料がちょっと尽きちゃってて、こっちに帰ってくる途中で行けば良かったですけど...もし、良ければちょうどタイムセールなので迷惑じゃなければ一緒に行きません?」
もっと、話をしたい。なら、選択肢は一つ。
「えぇ!ぜひ、行きましょう!」
「あぁ...でも、今日確かこれぐらいから雨が降るなんて天気予報で言ってましたよね?だから、ちょっと...降ってるかどうか確認してみますね!」
OK!って...あ...。シャっとカーテンが開かれて...ベランダ...やっぱり、洗濯物ほしっぱなしだった。あ~、ちょっと恥ずかしいな。あ...でも部屋に差し込む夕日からしてまだ雨は降ってないみたいだな。..あれ?中田さんどうしたんだ?一向に動かない...。夕日で逆行になってて影みたいになってるからちょっと不気味だな。あれ...?本当に、どうしたんだ?
......
「...中田さん...?」
!?
「え?ちょっと!?」
急に振り返って...なんで!?後ろにいた僕を押しのけて...トイレに駆け込んだ!?え!?なんで!?トイレに行きたかった?でも、それなら言ってくれればいいのに...。そういえばどんな表情をしていたっけ...逆行で良く見えなかったが...、ただトイレに行きたかっただけなら...ちょっと、行動が違くない?
...ていうか...あれ...
.........
やけに長いな...。
........................え...。
トイレから、すすり泣く声が聞こえる...?え...?中田さん...?
「中田さん...?」
返事は無い。
え...?
あ、やっと出たって...あっ!あっ!
「え!?中田さん!?」
ちょっと!どこ行くんだ!?うちの扉開けて、外でて階段上り始めたぞ!って...えぇ!?
バタン?上からだ...。
...帰った?え?なんで...?え...?
なんで?なんで?何か悪い事したかな...。僕のせい?でもベランダ見た瞬間にトイレにこもったってことは...ベランダ?つまり、あれ?洗濯物干しっぱなしだったのがそんなに気に入らなかったの?...でも、泣いてた...?え?干しっぱなしが悲しくて...?え?そういう物なの?え...なんで...。本当に何か悪い事したかな...?
あぁ...泣いてた...?うぅ...またか...なんだ...なんなんだ、この思い出は。なんで事あるごとに出てくるんだ...誰だこの女の子...なんで泣いてるんだ。なんで、重ね合わせるんだ...?なんなんだ...?覚えてないなら対して重要じゃないんじゃないんじゃないのか?なんなんだ...一体...。
う~ん...本当にどうしたんだろう。僕のせいかな...。どうしたらいいんだ...。楽しく話してたと思ったんだけど...やっぱり、そうじゃなかったのかな...。まぁ...そうだよね...あんまり最近、会話の機会無いし...。あれは、勝手に一人で盛り上がって...勝手に楽しくなってただけの...独り相撲だったんだ。全く、僕は馬鹿だなぁ...。そっか...耐えられなかったのかな...。
う~ん.....あっ......中田さん...荷物置きっぱなしじゃん...。
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