マン・アフター・アームヘッド

みぐだしょ

プロローグ

◎ネクストエイジ◎

人類が母星への帰還を開始し一部の人々を残しヘブン放棄をしてから一万の年が過ぎた時代。文明は衰退しアームヘッドは野獣や化け物へと姿を変えた。ビスケットハンマーの倒壊、シビルヘッドの経年劣化によりヘブンの人類生存可能領域は減っていった。

  


「マン・アフター・アームヘッド」

プロローグ

  


ネクストエイジ1500年、アプルーエ大陸北部に強大な国家があった。勿論人類の国家ではない。その象の旗印を持った王国はファントムの貴族が支配する国家だった。ファントムの王国、ハーシェル王国は外縁部の人類領域を制圧しその領域を数千年に渡り拡げていった。

  


アームヘッドが人類を襲う理由にはある信仰があった。人類、今のネクストエイジ人類は神堕ちと呼ばれる一万年前にアームヘッドの造反に敗れたアームヘッドの創造主達だ。神堕ちを内に取り込むことで神のちからを得ることが出来る。故にアームヘッドは人類を狙うのだ。

  


シビルヘッドが倒れ人類側の軍勢が敗走しリズへと撤退していく。それを執拗に追う小型のアームヘッド達。その状況にカエルス・リンスはいた。カエルスを追うのは小型の人と同サイズながらアンテナやパチンコなどが頭の代わりについている異様な存在だ。神堕ちと誤認せぬよう貴族が改造しているのだ。

  


貴族や将軍はかつての巨大アームヘッドの姿を保つが比較的新しい平民のアームヘッドは人類サイズの小型だ。それら雑兵は神堕ちを将に献上しボディのための資金元としている。カエルスも貴族の栄養剤として狙われているのだ。カエルスは残弾を確認する。彼の古代技術は敵を圧倒していた。

  


ならばなぜ人類側が今回の戦で敗れたのだろうか。カエルスは舌打ちする。奴が来ていたのだ。ハーシェル五天王の次席、ウンブリエルだ。ウンブリエルはこのバズーカと同じく神代の産まれであり、神話を語り継ぐ生きる伝説。百合の時代を生き残ったアームヘッドの一人だ。その姿が丘の向こうに見えた。

  


「ウンブリエル・・・、俺の先祖の罪よ」カエルスが呟くとアームヘッドの雑兵もウンブリエルの接近に気づいたようだ。「よくやった、お前達は私に踏まれぬよう下がっておるがよい」ウンブリエルが近づきながら言った。「我が名はウンブリエル、百の人類兵器を倒し魔塔を折しハーシェルの王が一人だ」

  


「知っているぞ、ウンブリエル。奴は元気か?」「はて、こやつはなんのことを言っておるやら・・・。さては貴様が例の黒い軍勢を率いておるものなのか?どうした?オベロン卿はあれに手を焼いておったが、今回はそれは無しか?」黒い軍勢・・・?カエルスは全く覚えが無かった。「まあよい」

  


ウンブリエルは恭しく胸を開いた。「我が糧となるが良い。神堕ちよ」竜の口のようにウンブリエルの胸が開きカエルスを呑み込もうとしていた。カエルスは怯まず手榴弾をウンブリエルの内臓に投げ込もうとする。「む?」ウンブリエルが身をかわす。もう一機のアームヘッドだ。「不敬だぞ!」

  


一匹の野生アームヘッドがかつての習性故かカエルスを呑み込もうとしているのだ。ウンブリエルから獲物を奪おうとしているそのアームヘッドにもはや知性はない。「誇りを無くした獣が!」ウンブリエルは腰に帯びた剣を持ち、構えた。野生アームヘッドがカエルスを狙う。カエルスは手榴弾を投げた。

  


野生アームヘッドの口がはぜると同時に野生アームヘッドがウンブリエルの剣で両断される。「ほう、なかなかやるではないか」ウンブリエルがカエルスを見下ろした。そしてすぐに掴んだ!「!?」「敬意を表しもっと丁寧に取り込んでやろう」再びコクピットが開いた。カエルスは覚悟を決めた。

  


「ぐっ」ウンブリエルが苦痛を声に出す、カエルスのナイフの微少なテトラダイにダメージを受けたのだ。だがこの程度で倒れるウンブリエルではない。「我が血に賭けるぜ」カエルスはナイフの一族の象の紋章、アプルーエ十二貴族の紋章を一瞬見てウンブリエルの体内へ潜り込んだ!「お前は我が愛機だ!」

  


ウンブリエルは困惑していた。ハーシェルの大貴族である自身に自ら乗り込む人類に。そして自身を乗っ取ろうとしているのだ。「無駄だ・・・私は偉大なるアームヘッドだぞ」「俺は貴様の創造主だ」「・・・なに?」カエルスの精神を掻き消そうとするウンブリエルのアームコアは怯んだ。

  


アームヘッド雑兵は突然、暴れだす貴族に困惑していた。「ならばお前はあの・・・あのお方の孫か?我々がずっと探していた!アプルーエ十二貴族最後の血!」「貴様が知る必要はない!」カエルスとウンブリエルの精神は皮肉にも相性が良かった。かつてのあるべきアームヘッドのように両方が残った。

  



もはやウンブリエルのアームコアはカエルスの精神を乗っ取れはしなかった。だが同時にカエルスもウンブリエルから出れない。お互いの意志がその体を動かそうとするため、身動きが取れない状態だ。「このまま飢え死にさせるつもりか?」「待て・・・あれを見ろ」二人は空をみた。「なんだと?」

  


空から宇宙から降りてくる黒いアームヘッド達だ。「なんだあれは・・・」「お前も知らぬのか、ではあれは人類の兵器ではないのか」その黒いアームヘッドの名はハッピースレイブ、宇宙から還って来たリズの移民船団だ。それが彼らの闘うべき相手になる。

  


「マン・アフター・アームヘッド」

プロローグ終わり

  


◎アフター・エイジ◎

メモリー・ニルヴァーナによる世界浄土が発生しなかった場合の放棄ヘブンにおける文明衰滅時代のこと。セイントメシアアブソリュートオメガとアビススカージの無限の争いの結果、シンギュラリティの演算が終了しオルタナティブが結実した結果終了する。

  


◎ターンバック◎

シンギュラリティが運命樹の末端においてトリニティによって破壊されアフター・エイジ終了によるオルタナティブ・エイジへの移行が回避された結果、引き起こされた時間逆行現象のこと。それによってシンギュラリティの残骸がレイラインの平行世界集束にもたらされた。

  



◎メモリー・ニルヴァーナ◎

ネクスト・エイジを引き起こした存在。シンギュラリティの残骸により生じ、運命の構造が変質した。結果的にネクスト・エイジの終了により回避されていたオルタナティブ・エイジへの移行が再開されることになる。

  


◎レイラインの平行世界集束◎

レイラインは複数の過去からひとつの共通の未来を導くことが出来る。その為、その時代の濃度が上昇し介入を受けやすくなる。逆に複数の集束を起こすことで本当に重要な平行世界集束を守ることをする場合がある。

  

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