第26話 使用人ゾート

あれからクラスに説明受けた。

にわかには信じがたい。

このカッコいい人がベルガルだって?


・ベルガル

「どうだ?我の変化も中々の物だろう?

グラン様には劣るがな。」


何処からどう見ても人間そのものだ。

『南海門』で戦った時。

確かに最後は人に近い姿になっていた。

しかし、ここまで変われるものなのか?


・ベルガル

「ニュートとはまた手合わせ願いたいものだ。」


出来ればもう戦いたくないかな。

生きた心地がしなかったもん。

、、、まぁいつもの事なんだけどね。


・クラス

「もう少し休んでて。

あれからずっと寝込んでたんだから。」


・「そうだったんだ。

迷惑かけたみたいでごめんね。」


・クラス

「良いの、気にしないで。」


・ベルガル

「クラス様はずっとお前の身を案じておった。

これで安心して眠れますな。

誠、仲の良い夫婦だの。」


ベルガルが突然とんでもない事を言い放つ。


・クラス

「べ!ベルガル。

何てこと言うの、違うから。

違わないけど、違うからね。」


・セント

「そうだぞ、まだそんな関係ではない。

ゾート君、まだまだ勉強不足だな。」


凄いタイミングで入ってくるセントさん。


・セント

「聞いたぞニュート君。

クラスを庇って重傷を負ったらしいな。

我が娘を助けてくれて感謝する。

ライオット君にセリス殿、更にゾート君。

彼等にも礼を言わねばならぬ。

もちろんニュート君にもな。

君には勲章が授与される。

正式に決まったら知らせよう。

それまでゆっくりしてると良い。」


セントさんはそう言い残し部屋から出ていく。

そうだった、ライ兄とセリスさん。

二人も『南海門』防衛という設定だったな。

ライ兄に謝らなくちゃ。

そしてゾート君?これってベルガルの事だよな?


・ベルガル

「クラス様の配慮でな。

この屋敷の使用人として貰った。

任務は主にクラス様の護衛だ。

これで名実ともにクラス様の盾となれた。」


本当に仲間になったんだな。

ベルガルが傍にいるのなら安心だ。


・「クラスは俺の大切な人だ。

しっかり守ってくれ。」


・ベルガル

「任せて置け。」


敵だと恐ろしい存在だが味方だと頼もしい。

これ程頼りになる護衛もいないだろう。


・ベルガル

「して、ライオットとセリスとは誰だ?

あの場には3人しか居なかっただろう?」


セントさんが居なくなってから聞いてくる。

その辺りの気遣いもしてくれた。

何とも頼もしい限りです。


・「実はね、、、」


俺はベルガルに説明した。

最後にグランの策と言ったら納得してくれた。

俺が寝ている時にグランが来たらしい。

『ベルガルをよろしく!仲良くしてね。』

そんな伝言を受け取った。


・ベルガル

「そう言う訳だ。

我ら実力を認めあった仲。

互いに切磋琢磨して高め合おうぞ。」


ベルガルは俺との再戦が楽しみなようだ。

困ったな、、、

次は勝てる気が全くしないよ。


でも強くなる為ならまた戦うのも良いか。

今度、ナナ師匠の元で立ち合ってみようかな。


・クラス

「キロスは昨日から学園に復帰です。

魔力枯渇の影響でボーっとしてましたが、命に別状はありませんでした。」


キロスの無事も聞き一安心。

これで全てが終わったんだな。


・「ギルドに顔出してこようかな。」


こうして寝ているのは性に逢わない。

出来れば体を動かしたい。


・クラス

「ゆっくり休んでください。」


クラスに怒られた。

でも、少しは動きたいかも、、、


・クラス

「今日一日は寝ている事!

良いですね?」


仕方がない、こっそり抜け出して、、、


・クラス

「抜け出そうと考えてますね?」


ギクッ!


・クラス

「ベルガル、しっかり見張って置いて下さい。

私はお食事の準備をしてきます。」


・ベルガル

「御意!」


そういって部屋を後にしたクラス。

ベルガル相手に逃げられるとは思えない。

完全に詰みました。


・ベルガル

「そう心配かけるでないぞ。

主は本当に心配しておった。

一日ぐらいゆっくりすると良い。

我が必殺技を食らったのだ。

死んでいてもおかしくなかったのだぞ?」


今思い出しても凄まじい一撃だった。

それに『闘魔術』によく似た魔力の使い方。

色々聞きたい事がある。


・「なぁ、色々聞きたいんだが。

戦いの事とか聞いても良い?」


・ベルガル

「お互いに高め合おうと言ったではないか。

何でも聞いてくれ。

我も聞きたい事が沢山ある。

一日寝ているだけではつまらぬだろう?

我と話そうではないか。」


戦闘の話となると饒舌になるベルガル。

そしてとても嬉しそうだ。

この人も戦う事が好きなんだな。

、、、、ナナ師匠と気が合いそうだ。


この日、俺とベルガルは話しまくった。

お陰でめちゃめちゃ仲良くなってしまった。

ベルガルって意外と気さくな方だったよ。


酒が入るとよく喋るしよく笑う。

人は見かけによらないな、、、


夜になるとキロスも会話に加わった。

ベルガル達との語らいは深夜まで続く。

最後はクラスに叱られて終わりを迎えた。


・ベルガル

「主はなかなか恐ろしい。」


ベルガルの一言が印象的な一日だった。



~次の日~


今日は朝から元気いっぱいだ。

昨日はゆっくりして良かった。

クラスに感謝だね。


・キロス

「ニュー兄!ずっとここに居てよ。」


朝ご飯を共に食べていたキロスの言葉だ。

キロスは明後日から学院寮に戻る。

今日と明日はここから通うらしい。


・キロス

「あ~、ニュー兄が居るなら休みたいな。」


ちらっとセントさんを見るキロス。


・セント

「駄目だぞ?防衛戦で休みを取っただろう?」


キロスの企みはそんな一言で頓挫した。

流石はセントさん。


・ベルガル

「では、今日は我、、、、

いや、私と手合わせ願えますかな?」


隙があると戦おうとするベルガル。

師匠とそっくりだな。


・クラス

「病み上がりなのでダメです。」


クラスの一言で一蹴される。

キロスとベルガルがシュンとしている。

死闘の事を思い出すと考えられない姿だ。


・セント

「ゾート君の実力か、、、

話によればかなりの腕前と聞いた。

どうだ?ニュート君。

君さえ良ければ彼と手合わせしてみるか?」


・ベルガル

「旦那様!ありがたきお言葉!」


めちゃめちゃ嬉しそうなベルガル。

本当に魔貴族のベルガルなのだろうか?

少し信じられなくなってきた。

その、何と言うか、、、落差が凄い。


・クラス

「でもお父様!」


・セント

「まあそう言うな、軽くで良い。

それにニュート君も体を動かしたいだろう?」


確かに体は動かしたい。


・「解りました、軽くで良いのなら。」


俺はセントさんの申し出を受ける。

軽く動かす程度なら必要だしね。


・ベルガル

「今日は良き日だ!」


・セント

「キロス、やっぱり今日は休みなさい。

私が学院に連絡しておく。

この戦いを見る事が一番身になるだろう。」


・キロス

「本当?やった!」


・ベルガル

「こぞ、、、いやキロス坊ちゃん。

われ、、私の戦いを見るのも良い勉強となろう。

しっかり目に焼き付けると良い、、、ですよ。」


興奮しているのか?

キャラがガタガタだぞベルガル。

そんなヤル気満々のベルガルさん。

軽く、、、だからね?


こうしてカーティス家の庭で模擬戦が始まる。



~食後・庭にて~


・ナナ

「おい、セント。

私は復興で忙しいのだが?」


何故か師匠が来ていた。


・セント

「まぁまぁ良いではないですか。

せっかくの注目の一戦です。

我が屋敷に来たゾート君の実力を見て下さい。」


成る程、ベルガルが屋敷に使用人として来たのを一番楽しみにしてるのはセントさんだったのね。


・セント

「さて、どれ程の腕前か。

楽しみにしてるぞゾート君。

我が娘の護衛として恥じない戦いをしてくれ。」


大切な娘を守れるか試すいい機会。

そんな所かな?


・ナナ

「どうやら復帰した様だな。

まったく、心配したぞ。

庇うのは良いが気を失ったらダメだろう?

その後誰が嬢ちゃんを守るんだ?

魔物如きに遅れを取るなんて恥ずかしい。

ここで変な戦いをしたら特訓やり直しだ。

もっとしごいてやるから覚悟しとけ。」


手を抜けなくなりました、、、


俺とベルガルは庭の中心に移動する。

見守るのはセントさん一家。

セントさんの使用人たち。

そしてナナ師匠とリムさんだ。


・ベルガル

「ニュート、悪いが手を抜けなくなった。

旦那様に気の抜けた戦いは見せられん。」


・「俺も手が抜けなくなった。

師匠に殺される、、、、」


お互いに手を抜けなくなった状況。

仕方がない、全力で行くか。


・「全力で言っても良いか?

変化とか解けないよね?」


・ベルガル

「問題ない、気を失ってもこのままだ。

まぁ、気を失うのはニュートだがな。」


・「言うね、その言葉そっくり返すよ。」


二人もヤル気スイッチが入る。


・セント

「お互いに悔いのない様にな。

存分に戦ってくれ、、、では、はじめ!」


セントさんの合図で同時に動く。


・「『闘魔術』全開!」


全ての魔力を込める。

ベルガルとの死闘で会得したのだ。


・「感謝するよ、ベルガル」


一方でベルガル。


・ベルガル

「『術式魔法衣』!」


ベルガルも魔力を纏う。

名前は違えど似たような技だ。


・ナナ

「ほう、、、こりゃ面白くなりそうだ。」


拳聖の顔がニヤけ出す。


・セント

「さて、ゾート君の実力は如何程かな?

一般兵士以上の強さがあると嬉しいのだが。」


セントはベルガルの強さは知らない。

逆にニュートの実力は知っている。

一緒にダンジョンに入った事もある。

出来るだけニュートに食らいついてほしい。

そう願いつつ戦いを見守る

セントの想像を遥かに超えた戦いが始まった。

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