第16話 再びダンジョンへ

街に戻ってきた俺達は入り口で少しだけ話していた。

無事に帰ってきたことを喜びつつ、、、


・クラス

「チェルシーさん、無事でよかったね。

助け出せれてよかった。」


・「そうだね、クラスの魔法のおかげだ。

いつもありがとう」


俺がお礼を言うと嬉しそうに笑顔になるクラス。

やっぱりクラスは可愛いな。


・クラス

「私はそろそろ屋敷に戻る事にする。

イトちゃんにお兄ちゃんの武勇伝を話しちゃおうかな。

ニュートも一緒に帰る?」


イトか、確かに母さんやイトに会いたい。

でも俺にはまだやることがある。


・「会いたいんだけど、俺はこれから師匠と修行がね。

屋敷まで送っていくよ。」


そう言って食事の件は断った。

二人は屋敷まで一緒に歩く、最近の出来事を話しながら。

キロスも元気にやっているらしい。

ここでクラスに『万能薬』の使い道を話してみた。

彼女は快く快諾してくれた。

そしてクラスを送った後は、、、


・ナナ

「おかえりニュート、待っていたぞ。

さぁ、飯の前に一戦交えるぞ!」


嬉しそうな師匠が俺の帰りを待っていた。

あ、、、これまた晩飯抜きのパターンかな?

先に渡しておこう。


・「師匠、戦う前に渡したいものが。」


・ナナ

「渡したいもの?なんだ言ってみろ。」


・「実は、『砂漠の花』が必要だってメイドさんが言ってたんです。

でも今日は取れなかったので、代わりに『万能薬』を渡しておいて欲しいと思いまして。

『砂漠の花』は何かの病気の特効薬と言ってた気がしましたので、これで代用できないでしょうか?」


・ナナ

「『万能薬』ってお前、かなりのレアアイテムだぞ?

渡して大丈夫か?」


・「良いですよ、持っていても今は使わないですし。

必要としている人に使ってもらった方が良い気がしますしね。」



・ナナ

「ますます気に入った。

よし、今日は先に飯を食おう。

その時に渡してやりな。

それに考えてみればお前と晩飯食ってないしな。

たまには一緒に食うのもいいだろう。」


『万能薬』のおかげで晩飯にありつけた。

予想外にラッキーな展開だ。

俺と師匠は食堂へと向かう。


・メイド

「今日は夕食が無駄にならずに済みそうですね。

直ぐに支度しますので少々お待ちください。」


チクッと棘を飛ばしてくるメイドさん。

おかげで渡しそびれた、、、


・ナナ

「まぁ、飯の時にでもアタシが話を振ってやる。

とりあえず飯が来るまで今日の出来事でも話してくれよ。」


暇つぶしに今日の出来事を話す。

オーワームの巣での出来事、ヒューイの事。

チェルシーの事も話し、みんな無事で帰ってこれた事を話す。


・ナナ

「無事に帰ってこれたのは幸運だったな。

ワームクイーンが出て来ていたら全滅だったかもな。

あれの討伐には対策が必要なんだ。

しかし、日没までに行動したのは正解だな。

増援を呼びに行ってたらチェルシーって女は死んでいた。

クイーンは夜にしか出ねぇし夜のワームは面戸くせぇ。

時間を削って走っていったのは良い判断だった。」


師匠に褒められた、めっちゃうれしい。

そして夕飯が来た。

おいしい夕食を堪能して食後のお茶を飲んでいると。


・ナナ

「おい、リム。

ニュートが話があるんだとよ。」


師匠がメイドさんに声を掛けてくれた。

リムさんって言うんだ。


・リム

「何か御用でしょうか?」


・「あ、うん。『砂漠の花』なんだけどさ。

ごめんね取れなかった。」


・リム

「ニュート様が無事なら何よりです。

それに『砂漠の花』は入手がとても困難ですので。」


そう言って来るリムさん。

俺は手を強く握りしめているのを見落とさなかった。


・「代わりと言っては何ですがこれを受け取ってください。」


そう言って小包を渡した。


・リム

「これは、、、?」


・「『万能薬』ってアイテムです。

もしも必要としているのなら使ってください。」


・リム

「そ、その様な高価なものは受け取れません。」


・ナナ

「貰ってやりな、リム。

こいつは無欲の塊だぜ?

必要としている人が使えば良いとかぬかしやがる。

面白れぇじゃねぇか、本当かどうか確かめてみな」


ニヤニヤしながらリムさんを説得する師匠。

リムさんは迷いっている様子だ。


・「俺の憧れてる人が俺に同じ様な事をしてくれたんです。

困ってた俺を無償で助けてくれた、、、

俺もあの人の様になりたい。

少しでもあの人に近づくために、貰ってください。」


ライ兄に近づくために、多くの人を助けたいんだ。

いろんな人を笑顔にしたい、、、

それが、俺の目指す冒険者像だから。


・リム

「ニュート様、、、」


暫く考えた後、リムは大事そうに万能薬を抱えた。


・リム

「ありがとうございます。

このご恩は一生忘れません。」


大きく頭を下げたリム。

その眼には涙があふれていた。


・ナナ

「いい弟子を持った。」


ナナさんは嬉しそうにお茶を飲んでいた。

これでよかったんだよね、ライ兄。

俺は憧れの人に問い掛けた、、、


・ナナ

「さて、またビシビシ鍛えていくぞ。」


やたらと気合の入るナナ師匠。

嬉しいような、恐ろしいような、、、

そしていつも通りの特訓が始まる。

今日の師匠はとても気合が入っていた。

数時間後、、、

ボロボロになった俺は屋敷に戻って休んでる。

意識が飛ばなかっただけでも良しとしよう。


・「しかし、相変わらず師匠に一撃も入れれないな。

攻撃が読まれてるのかな?」


ベットに沈むながら考える。

そのままウトウトしていた時、ライオットの夢を見た。

決闘のシーンだ。

懐かしい感覚を思い出しながら眠る。


・リム

「お食事の時間です。」


・「はいぃぃ!」


突然のリムさんの声に起こされた。

そのまま眠っていたようだ、、、

次の日の朝になっていた。


・リム

「そ、そんなに大きな声でした?」


申し訳なさそうに謝るリムさん。

何だかこっちの方が申し訳ない。


・「ビックリしちゃってすいません。

何だか懐かしい夢を見てまして、、、。」


・リム

「そうなんですね。

お食事の方は如何いたしますか?」


・「いただきます。」


・リム

「では、食堂の方にいらしてください。」


そう言って出て行こうとするリムさんに忘れていたものを返そうと思い声を掛ける。


・「リムさん、そう言えばこの鞄を返し忘れてました。」


魔法石がたくさん入った袋だ。

『ハミラ高原』に行く際に渡された鞄。


・リム

「差し上げますよ。

私にはもう無用なものですし。

今後、ワームと遭遇する時があればご使用ください。」


リムさんは頭を下げ、退出した。


・「ワームとの遭遇で使用する?

どういう事だろう?

聞くタイミングを逃してしまった、、、

まぁいいか、今度ギルドで聞いてみよう。」


その日は朝から晩まで特訓を行った。

その次の日も、、、次の日も


数日後、久しぶりの休みが取れる事となった。

休みとなる日の前日、余り深く考えず食堂に向かった。

食堂には既にナナ師匠が食事を開始している。


・ナナ

「そうそう、明日だが。

朝から野暮用で居ないんだわ。

だから好きに行動してくれ。」


お、久しぶりにLV上げに行こうかな。


・「では、明日はLV上げにでも行ってきます。

ついでに、前に打破した『ウルフゲート』ダンジョンの様子を見てきますよ。」


・ナナ

「『メダリオン』を入手した場所だったっけ?

一応、行く前にギルドに報告しておけよ?

ダンジョンならギルドか国が管理しているはずだ。

無断で入るのは犯罪になっちまうからな。」


・「そうなんですね、知らなかった。」


ダンジョンとして正式に登録されたんだっけ?

普通の洞窟だと思っていた時は許可は必要なかった。

これも冒険者の安全の為なのかな?


・リム

「では、クラスお嬢様にその旨を伝えてまいります。」


そう言ってリムさんは食堂を出ていく。

すると他のメイドさんが直ぐに現れる。

さすが五貴族、、、


クラスか、確かに来てくれるなら助かるな。

でも急なのに来てくれるかな?


・ナナ

「聞きたかったんだが。

お前はクラスの事をどう思ってるんだ?」


・「大切な仲間ですね!」


俺は自信満々で即答する。

余りの素直な返答に対し、一瞬硬直するナナ。


・ナナ

「そ、、、そうか。

大事にしてやりなよ。」


何となく反応がおかしい師匠。

応え方間違えたかな?

変な空気の中、俺は食事を終わらせて部屋に戻った。


・ナナ

「あいつ、恋愛とかに対しては鈍感っぽいな。

クラスも苦労するだろうなぁ~」


食後のお茶をすすりながらナナは呟いた。



~次の日~


俺は一人朝食頂いていた。

考えてみればすごい事だよな、、、

貧民街出身の俺が、こうして貴族の屋敷で朝食なんて。

初めの方は毎回意識を飛ばすぐらいに必死だったから気付かなかったけど、改めて考えると凄いよな。


・リム

「ニュート様、クラス様がご到着いたしました。」


クラスが食堂に現れる。


・クラス

「おはよう、ニュート。」


・「おはよう、今日は急にごめんね。

何か用事があるならそっちを優先しても良いよ?

俺に出来る事なら付き合うし。」


・クラス

「大丈夫、私も強くなりたいし。

一緒にLV上げしに行こう。」


優しい笑顔で答えてくれるクラス。

いい仲間に巡り合えたなぁ~。

俺は急いで飯を食べ終える。

そして準備をして屋敷を出た。


今日もいい天気だ!


・クラス

「どうするの?このままダンジョンに行く?」


・「ん~、ギルドの許可が必要らしい。

とりあえずギルドに寄って行こうかと思ってる。」


ワームと魔石の事も聞きたいしね。


・クラス

「許可なら既に取ってあるよ。

ダンジョンの許可証もお父様に提出済みです。

ただ、そのお陰で二人だけではいけなくなりました。」


ちょっと残念そうに答えるクラス。

そういえば防犯対策のトップがカーティス家だった。

ダンジョン管理もお仕事の内なのかな?

じゃあ後はワームと魔石の事が解ればギルドに向かう必要は無くなるかな。


・「クラスは魔石とワームの関係ってわかる?」


とりあえず聞いてみる。


・クラス

「ワームと魔石ですか?

何でしょう、ワーム系の魔物が魔石に含まれる魔力に引き寄せられる性質の事でしょうか?」


そんな性質があったのか、、、

という事はリムさんが魔石を渡してくれたのって、その性質を利用してワームクイーンを呼び寄せて欲しいって事だったのかな?

師匠が言ってた対策って魔石の事?

リムさんから見れば、魔石をうまく使えば勝機があるかもしれないと思ったのかも。ひょっとしたら俺の知らない魔石の使い方が他にあるのか?

リムさんも『砂漠の花』を入手するために必死だったんだな。


・クラス

「ニュート?大丈夫?」


・「っは、ごめん考え事してた。

ワームにそんな性質があったんだね。

ありがとう、これで問題解決だ。」


とりあえず魔石の事は置いておこう。

これですぐにでもダンジョンに向かえるな。


俺とクラスは門の所までやってくる。

するとかなり目立つ馬車があった。

クラスは馬車に近づいていく。


・クラス

「ご苦労様です。」


馬車の前に居る兵士に挨拶をするクラス。

すると馬車の奥から知っている人物が現れた。

まさか、、、


・セント

「待っていたぞニュート君。

今日は私も参加するからな。

安心してダンジョン探索を進めたまえ!」


まさかの親同伴だった、、、

よほどクラスの事が心配なんですね。


・クラス

「もう、私とニュートだけで良いって言ったのに。

無理やりにでも付いて行くって聞かないんですもの。」


・セント

「何、私も皆の安全のためにダンジョンを見たくてな。

邪魔しないから大丈夫だ!

後ろから付いて行くだけだ。」


・クラス

「それが邪魔ですの、、、」


スパっと斬り裂くクラスの一言。

セントさんは苦しそうだ。

そんな親子のやり取りを見ながらダンジョンへと向かう。


ダンジョンは2種類ある。

・攻略すると消滅するタイプ

・敵が強くなり難易度が上昇するタイプ


今回のダンジョンは難易度が上昇するタイプだ。

前にそんなアナウンスを聞いた覚えがある。

実はずっと気になってたんだよね。


馬車は傾聴に進み、もうダンジョンの目の前だ。

どんな敵がいるのか楽しみになって来た。

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