第17話幕間5
皇室の本心が分からない、バルド様をどうする心算なのだ?!
ここまで目をつけられてしまうと、今更逃がす事もできない。
全ては俺の油断が原因だが、このまま泣き言を言っていても始まらない。
テオドシウス王家の傍流を裏社会に隠すと同時に、バルド様と本家を護る算段をする必要がある。
シュレースヴィヒ伯爵と刺し違えても、バルド様を護る覚悟を固めていたら、シュレースヴィヒ伯爵が極秘出会いたいと言ってきた。
差し違えるのには最大の機会だし、相手の本心を探るには絶好の機会だったので、恐れることなく会うことにした。
勿論バルド様と本家を護る手段を、アーダに授けた上でだ。
「よく来てくれた、今回は腹を割って話したい。
率直に話すが、余はバルド殿の種が欲しいのだ。
余の隠し子、エルザにバルド殿の種をもらい、テオドシウス王家にシュレースヴィヒ家の血を入れたい、それが望みなのだ」
まあ、俺の予想していた範囲の事なので、それほど驚きはしなかった。
家名と血統を残したいというのは、貴族士族の本能といっていい。
だからこそ、どの貴族士族もできるだけ多くの子供を作り、他家に嫁がせる。
だが、それが本心なら、シュレースヴィヒ伯爵は自分の娘や孫を皇室に嫁がせようとするはずなのだ。
「ひとつだけ確認しておきたい。
何故皇室に娘や孫を嫁がせようとしない。
シュレースヴィヒ伯爵が現皇帝から得ている信用なら、それが可能ではないのか」
「では余から聞くが、フォレストは、いや、本当のアルベルト家は、自分の血をテオドシウス王家に入れようと考えたか」
逆にそう言われれば、シュレースヴィヒ伯爵の気持ちは分かる。
忠誠を誓って仕えているからこそ、子孫が堕落して不正を行ったり、叛意を抱かないように、娘や孫を主家に嫁がせようとは思わない。
家臣の分を弁えて、忠義を尽くすことが、名誉を護る事につながるのだ。
シュレースヴィヒ伯爵も同じなのだろう。
下級士族から取立ててもらい、権力の最高位である大臣筆頭にまでしてもらったのだ、忠誠を尽くしたいと思うだろう。
いや、単なる宮廷貴族の宮中伯にとどめず、領地持ち貴族の伯爵にまでしてもらったのだ、皇室に血を入れようとしてしまったら、後世で謗りを受けることになる。
名を残す、それにこだわるからこそ、外戚にはならないと誓っているのだろう。
だが、欲が全くないわけではなかったのだ。
皇室に匹敵するほどの仁愛の名君として語られるテオドシウス王家に、自分の血を入れたい欲望には忠実なのだ。
「同じ考えを持っているのは余だけではないぞ、イェシュケ宮中子も同じ考えだ。
永遠に続く国家などない。
余もイェシュケ宮中子も全力で皇国を支えるから、あと五十年は皇室による平和が続くだろうが、その後の事は分からない。
百年後にはまた戦乱の世になっているかもしれない。
その時のために、テオドシウス王家に我が家の血を入れたい。
エルザにバルド殿の種をくれ、それが余の望みだ」
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