第8話
良く考えりゃ、大したモンスターが出る訳ないんだ。
俺がいなきゃ、農夫が普通に倒すしかないし。
一人で畑仕事してるっていう事は一人でモンスター倒してるって事だ。
農夫「助かったよ。
最近、害獣増えてきちゃってさ。
冒険者ギルドに駆除の依頼、出そうと思ってたんだよ。」
その畑で顔ほどの大きさの殿様バッタを見る。
そういえば俺、ゴキブリとか虫、苦手だったんだ。
取り敢えず畑の中を見る。
ウジャウジャバッタがいる。
農夫「バッタは葉っぱばかり食べるからね。
身は食べないから放っておいてるんだよ。」
ゆーても、オメー放っておきすぎだろ。
農夫「いや、バッタは攻撃すると反撃してくるからね。
しかも仲間を呼んで集団攻撃してくるからね。
手を出せなかったんだ。」
待てよ?。
俺がここで一匹のバッタに攻撃したら、同時に数千っていうバッタを相手にしなきゃいけないんだろうか?。
勝てると思えない。
というか一匹に勝てる自信がない。
今日は正直に『ごめんなさい』して帰ろう。
農夫「じゃあ、よろしくお願いします!。」
農夫が俺にバッタをけしかける。
この野郎、シャレになんねー事をしやがる!。
バッタは飛ぶ。
飛んで俺を追い掛ける。
逃げたところにもバッタはいる。
そこで更に俺を追い掛けるバッタは増える。
逃げる度に勝ち目が消えていってる。
それは俺にもわかっている。
数が少なければバッタにだったら勝てるかも知れない。
なのに逃げる度に数が増えている。
ここら辺で度胸を決めよう。
いつもでも逃げてばかりでいると思うなよ!。
『ヒット&アウェイ』だ!。
「結局逃げるのかよ!」とか言うんだったら、正面から飛んでくるバッタ待ち構えてみろよ!。
小便ちびるから!。
俺はある程度逃げると左右のパンチを二発繰り出し、バッタを殴った。
一発は空振りだったが、一発はクリーンヒットした。
俺はレベルアップした。
ウソ?一匹殴っただけだよ?。
空中に浮かぶステータスウインドウには『異世界転移者の経験値は4倍されます』と書かれている。
『ネカフェでプレイするとラグナログオンラインの経験値は4倍されます』ってアレと一緒か。
「それってズルくない?」って思った事もありました。
でも自分が得する立場だと「負け惜しみは聞こえんな」って感じなのね。
自分のステータスを確認する。
HP:18/18
レベルアップの度にHPがMAXになるらしい。
つまり体力を節約するより、どれだけダメージを受けても、次にレベルアップした時にHPがMAXになるから、レベルアップを目指した方が逃げ回るより生き残れる可能性は高い、という事だ。
逃げ回るのを止めて、追いかけてくる何百匹というバッタと相対する。
怖えー!。
あり得ないって。
イナゴだって怖いだろうに、イナゴより何十倍もデカい。
覚悟を決めてバッタの群れに飛び込む。
イテーって!
こんなジャージボロボロにして体育の授業の時、どうすんだよ!?。
噛みまくりやがって・・・しかし五匹バッタを殺したあたりでまた体力が全快してレベルアップした。
油断する訳じゃない。
でも・・・もしかして・・・これ楽勝じゃない!?。
倒せば倒すほど身体能力上がって、ダメージ受けなくなって、バッタを倒すのが楽勝になって、バッタを倒すと更に身体能力が上がって、ダメージを更に受けなくなる。
これ既にパターンに入ってる。
一つだけ問題があるとするなら、ジャージがバッタに噛まれて既にボロボロな事だ。
替えのジャージあるからもう一着あれば良いけど、あんまり金使うのはヤバいな。
ただでさえ最近物入りだし。
取り敢えず、畑にいた数千匹のバッタを残らず殲滅した。
今の時間がわからない。
腕時計をする習慣はないし、スマホで時間を確認していたんだ。
スマホを持っていない今、どれだけ時間が経ったのかわからない。
わからないが、今の俺はバッタの体液だらけの汗まみれである。
帰ってシャワーを浴びる時間くらいは欲しい。
俺「バッタは残らず退治したと思う。
死体の片付けをしている時間がないのは申し訳ない。
ただ、今は時間がないんだ。
本当に申し訳ない!。」そう農夫に告げると一目散に街に戻った。
門番の衛兵は凌辱されたような俺の姿を見て「まあ、モンスターに負ける事もあるさ!」と謎の激励をした。
そんな事は言ってられない。
学校に行く準備をしなくちゃいけない。
その前にシャワーを浴びなきゃいけない。
俺は小屋に飛び込むと、そのままゲートをくぐり、日本の自分の部屋に戻って来た。
時間を確認する。
7:30
8:00には家を出ないと。
シャワーを浴びて、ご飯を食べてたらギリのギリギリだ。
俺は息つく暇もなくシャワー室に飛び込んだ。
そういえばスマホが異世界の小屋に置きっぱなしだ。
電池も切れてるし、今取りに行ってる時間もないし・・・まぁいいか。
最近最終兵器の扱いがおざなりな気がする。
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