代償
@yokuwakaran
第1話
『基本無料』スマホゲームを始める。
「無料でここまで遊べちゃうの!?。」
最初は楽勝だ。
だんだん厳しくなる。
ゲームオーバーになる回数もだんだん増えてくる。
気付くと同じステージを何回もプレイしている。
おかしい。
あんなに余裕だったのに。
その時に画面端にある『課金コンテンツ』に気付く。
藁にもすがる想いで『一回だけ』課金する。
『一回だけ』しか課金しないつもりだった。
でも心のどこかに『本当は一度も課金しないつもりだったんだろ?。
一度課金したんだから何回課金しても同じだろ?』という弱い心がある。
・・・気付けば課金廃人の出来上がり。
これは悲劇的な事故ではない。
スマホゲームメーカーの『思う壺』だ。
これは別にソシャゲ、スマホゲー、PCゲーに限った話ではない。
古来から『好奇心、猫を殺す』という諺もある。
好奇心から「ちょっとだけやってみようかな?」と手を出したのが運の尽き・・・などという話はいくらでもあるのだ。
俺「俺は死んだのか?」
?「いいえ、仮死状態です。
車に跳ねられましたが、間もなく目を覚まします。」
俺「そうか、一瞬焦ったよ。」
?「・・・で、ものは相談なんですが。
『異世界転移』ってヤツをしてみませんか?。」
俺「トラックに跳ねられて死んだんだったら異世界に転生するのもわかるんだけど。
俺、生きてるんだよねぇ?。」
?「生きています。
だから『転生』じゃなくて『転移』です。
どうでしょう?。
貴方が異世界に転移するのは『行こう』と決めた時だけです。
元の世界に帰って来るのも『気分が乗らないから今日は行かない』というのも自由です。」
俺「好きな時に行けるって言ったって、ノルマみたいなモンはあるんでしょ?。」
?「全知全能の神が中間管理職の女神である私に課したノルマはあります。
しかし、それは貴方に対するノルマではありません。
貴方は行きたい時に異世界に行き、帰りたい時に日本へ帰ってくれば良いのです。
日本から異世界へ転移者、転生者を多く連れていくノルマを背負っているのは私です。
貴方が少しでも異世界ですごし、異世界で救世主っぽい事をしてくれれば、私のノルマは少し軽くなります。
ですが貴方は好きにすれば良いのです。」
俺「どうしよっかな?。」
?「悩んでるんなら、一度お試しで転移してみたらどうですか?。
ぶっちゃけそれでも少しは私のノルマポイントにはなります。
嫌だったら、もう二度と異世界転移しなければ良いだけの事です。」
俺「嘘じゃないよね?。
異世界に行ったらもう二度と戻って来れない・・・なんて事はないよね?。」
?「ありません。
私は女神です。
嘘はつけません。」
俺「『女神は嘘をつけない。』『私は女神だ。』というところから本当かどうかわからないんで、何の証明にも保証にもなってないんだけど・・・。
『異世界転移』に興味がない訳じゃないんだよね。
すぐ戻って来れるなら、ちょっとだけ異世界に行ってみようかな?。」
?「ありがとうございます!。
では、『異世界に行く方法』『異世界から帰って来る方法』の説明をします。
まず『異世界に行く方法』ですが一つ決まりがあります。
その『決まり』とは『異世界転移の存在を他の人に知られてはいけない』と言うものです。
それはこちらの人間に対しても、異世界の人間に対しても同様です。
異世界の人に『日本から来た』と言うのがそこまで問題になることはないでしょう。
でも逆はいけません。
日本の人に『異世界に行った事がある』とは言わないでください。
その事も踏まえて『異世界への移動手段』についてお話します。
貴方が異世界へ行く姿は見られないで下さい。
貴方は貴方の部屋のクローゼットの中のゲートから異世界へ転移出来ます。
このゲートは貴方にしか見えません。
見えませんが、貴方が異世界転移するところを誰かに見られたら『突然、貴方が消えた』状態に見えます。」
俺「突然、俺が消えたら大騒ぎ・・・って訳だな。」
?「そういう事です。
帰ってくる時も同じです。
ゲートを通じてクローゼットに戻ってきます。」
俺「異世界のゲートはどこにあるの?。」
?「場所は決まっていません。
貴方が『ゲート開け』と念じれば、ゲートは現れます。
こちらの世界でもそうなんですが、人がいないところでしか使って欲しくないんです。
異世界は魔法やファンタジーの世界なので、人が突然消えてもいくらでも言い訳は出来るんです。
でも、出来るだけ人のいないところでゲートを使って欲しいですけどね。」
俺「なるほど。
つまり異世界では帰ろうと思えばどこでも帰って来れる訳だな。」
?「でも気をつけて下さい。
貴方が異世界から戻って来た時に、こちらに誰かがいる可能性があります。
そういった場合を見越して、慎重に行動してください。」
俺「わかったよ。」
?「そんな事を言っていたら貴方は意識を取り戻しそうです。」
俺はゆっくりと病院のベッドで覚醒していく。
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