第10話 九十九教会

大和・有方港ありかたこうから大陸東海岸・九十九港つくもこうまで

12時間の船旅が、やっと終わった。

時刻は、11月30日A.M.01:30


九十九港は、国家間の大型旅客船が出入りする港だけあって、とても広くて大きい。

さらに、華美かびな大型旅客船かられる光が、港をライトアップしていて、辺りは、深夜であることが嘘かのように明るかった。


私は、下船客と乗船客でいっぱいになっているターミナルを足早に去った。

この時間に私ひとりでは、さすがに怪しまれるだろう。


私は人混みを抜け、小高い丘から旅客船を横目に、九十九教会を目指す。


私が、あの船に乗ったのは三回目。


一回目は、大陸への家族旅行。

両親と、私が6歳、イマリは4歳の頃の年末だった。


二回目は、その帰り。

大和行きの旅客船に、両親は居なかった。

代わりに親戚のおじさんがいた。

…つらい思い出。

それから私とイマリは親戚の家を転々とし、最後は黒髪山くろかみやまの里にいた。

イマリは当時のこと、覚えているかな…?


九十九市街を南の山道から大きく回り込んだ私は、西口から再び、九十九市街に入る。



―― 11月30日A.M.04:10


街が寝静まる中、ステンドグラスを抜けるわずかなあかりが、九十九教会にはともっていた。


辺りの大通り、建物、死角などは地理情報通り。

私は足音を消し、九十九教会の外観を確認しながら、侵入出来そうな場所を探す。


九十九教会は教団の建物の中では、大きい部類らしい。

幅41m、奥行88m、高さ40mの建て物があり、その周りに砂利道と石像。そして、敷地全体を背の高い植物が囲っている。


教会を一周したあと私は、ステンドグラスが途切れた白い壁の上部…高さ20mほどだろうか。


そこにある、換気口を見上げた。

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